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制服リサイクルポーチは悪いこと? おもしろグッズか、性犯罪か

制服リサイクルのプロダクトが批判を浴びる

 先日、こんなクラウドファンディングが一部で物議を醸していたようだ。

(追記:11/15にプロジェクトは掲載中止となった模様)

www.makuake.com

 

 どういうものかというと。石川県の制服のリユースショップが出している、制服のスカートをリサイクルしたポーチが「痴漢を連想させる」「スカートめくりは性暴力」「性犯罪を肯定するのか」などの視点から批判を受けているようだ。

 

 正確にはクラファンそのものというよりも、クラファンを宣伝した際のツイートが批判を浴びたようだ。(当該ツイートは削除された模様)

 

 これに関して、私の考え方をまとめてみたいと思う。

似た商品を買った思い出

 結論からいうと、私はこのプロダクトそのものについて「良いんじゃないの」という立場である。

 デザインも可愛いし、他にはないデザインで面白いし、エコを意識するきっかけにもなる。個人的にはとても好みの商品だ。

 

 そして、この商品を見て思い出した。

 私自身も昔、「パンツ型のポーチ」を買ったことがある。

 

 買った商品そのものの写真は見当たらなかったが、イメージとしてはこのようなものに近い。

tunic-labo.stores.jp

 このポーチに何を入れていたは忘れたが、「その水玉ポーチ、かわいいね」「実はこれ、パンツの形なの」「何それ〜!」と、話のネタになったことがあるのを覚えている。

 

 このポーチは、紐を引っ張ると上部がすぼんで閉じる形になるため、ポーチが閉まっている状態では一見「パンツ型」とは分からなくなっている。

 そういう商品の特徴もあってか、このポーチの利用と「性犯罪」は私の中で結びつくものではなかった。

 

 今回のリユースショップのプロダクトも、このような商品の延長上にあるように私には思えた。

 

このプロダクトの特徴は

 ただ、上記の「パンツ型ポーチ」と今回批判を浴びたプロダクトでは、異なる点もいくつもあるため、単純に「同じようなものだ」とは言うことはできないだろう。

 

特徴1:実際に児童が着用した素材が使われている

 今回、批判を浴びている点の一つとして大きいのはこの点だろう。単にスカートやパンツを模した商品ではなく、「実際にスカートとして使われていた」ものであるというのが危ういという視点だ。

 この点はもっともだと思うが、子どもが着用した商品を使った製品のリメイクがただちに不適切かというと、そのようなことにはならないだろう。

 個人的には「制服スカートのリメイク製品は、性犯罪を連想させるので作らない」という考え方のほうが(その慎重さもそれはそれで大事とはいえ)「制服スカート=性犯罪なのか……」と残念な気持ちになってしまうかもしれない。

 

特徴2:「めくる」ことがメインの形状となっている

 この点も、今回の批判を浴びた要素としては大きいと思っている。先に紹介したパンツ型ポーチは、使用時はパンツには見えない形状となっているが、このプロダクトは使用時もスカートの形状が保たれている状態となっている。上からものが出し入れできるポーチとしての役割のほか、「スカート風の部分をめくれる」ようになっていることも特徴として大きい。その点は無視できない、という批判はもっともだと思う。

 

スカートをめくるのはどんなとき?

 そもそもの話として「スカートをめくる」ことは、どのような状況で行うことかをもう一度考えてみたい。

 

 自分でめくる場合……「トイレ、排泄」「着替え」「自慰行為」「自傷行為」「性行為」「ケガの手当て」「スカートの広がり具合を楽しむ」「暑い日に扇ぐ」など

 他人にめくられる場合……「性犯罪(いたずらとしてのスカートめくり、強制わいせつ、強制性交等含む)」「性行為」「トイレ、着替えの介助」「ケガの手当て」など

 

 こういった内容も踏まえると、私は必ずしも「スカートをめくる行為=性犯罪を連想」とは言えないのではないかと考えている。

 スカート型ポーチを「自分の分身」として考えてめくる場合と、「他人を模したもの」としてめくる場合では、意味合いが変わってくる部分もあるかもしれない。ひとによってそのあたりの想定シチュエーションが違うことも、このプロダクトが物議を醸した要因の一つなのではないかと思う。

 

 もちろん、合意のない「スカートめくり」が「子どものイタズラ」として矮小化されやすい現状は問題視されるべきだと思う。

 しかし、この商品は子どもをターゲットにした製品というわけでもなく、もちろんアダルトグッズフェティシズム関連製品としての販売でもない。クラファンのページを見ても、制服スカートを「性的対象物」として扱っているようにはほとんど感じられず、そのフラットな感じは私の中で印象が良かった。

「スカートをめくる状況」は色々と想定される中、このプロダクトと「性犯罪を矮小化すること」は、まったく無関係とは言わないが、少し距離があることのように私には思えた。

 

 

 先ほど「性的対象物として扱っているようにはほとんど感じられない」と書いたが、一点だけ気になった箇所があった。

 クラファンページにある、こちらのイラストだ。

f:id:wuzuki:20211115083723j:image

 こちらに関して、「おじさんが女性を侍らせてお酒を楽しむ場所で、女子学生服を使った商品を肴にするなんて」という批判もあるようだが、私はむしろ、「色気や性を売りにしているキャバクラならではの使い方で、良いのではないか」と思った。

 パンツが見えそうなミニスカートを模したポーチは、状況によっては目のやり場に困ることもあるかもしれない。一般企業や友人たちとの交流の場では、このポーチに下手に言及するとセクハラになり得ることもあるだろう。無論、性や色を売りにする場ならどのような性的言動も構わないというわけではないが、イラストに出てくるキャバクラのような場では、性に触れる話題が出たとしても比較的容認されやすいシチュエーションと言えるのではないだろうか。

どういうものが不適切?

 ところで、コンテンツそのものが「犯罪を連想させる」として批判を浴びたものはこれまでもいくつかあった。

 2018年に、ドラマ「幸色のワンルーム」が「実際の誘拐事件を彷彿とさせる」と批判を浴びた件や、2020年に発売されたゲーム「縦笛なめなめVR」が「気持ち悪い。性犯罪を肯定しているのでは」と評された件などが記憶に新しい人もいるだろう。

「幸色のワンルーム」のドラマは放映中止となったが、「縦笛なめなめVR」は販売されているようだ。

 

 個人的にはどちらも放送・発売は基本的には構わないのではと思う立場だが、テレビドラマに関しては、見たくない人がうっかり見てしまうことも想定されるので、放映中止が「やりすぎ」だとも思わない。ゲームに関しては、適切なレーティングなり「ゲーム内のキャラは合意の上でやっている」という設定があるのならば、そのゲームをやりたい人がお金を払って遊ぶものであれば別に構わないのではないかと考えている。

 

 今回のスカートのポーチに関しても、「欲しい人がお金を払って買うもの」であり、「かわいく、おもしろく、エコ」であることを売りにしていて、フェティシズムを満たす目的の人向けに売っているわけではない、という点は大きいのではないだろうか。

 

ブルセラ的な購入者をどう防ぐか

 この商品に関しては、ブルセラショップのような、性的フェティシズムを満たすために購入する人に対して危惧する意見も見受けられた。

 

 少し調べた限りだと、この商品を作っている実店舗では、「そういった趣味の人には売らないようにしている」ようだ。

blog.recle.boy.jp

「そうはいっても、完全には防ぎきれないのでは?」「店主の人の勘にすぎないのでは?」といった意見もあったが、もちろん100%防ぐということはできないかもしれない。そもそも、制服を必要とする保護者や生徒自身が、購入した学生服を使って性的欲求を満たすことだって想定される。ここでキモなのはブルセラショップ目的で来るお客様には、売らないようにしています」という姿勢を見せること自体なのではないだろうか。

 

「なぜ制服の販売では徹底するのに、このポーチは普通に売ってしまうのか」という意見もあったが、これはおそらく「加工された商品は、『そういう趣味の人』からは需要が低いこと」「まだ着れる制服が『趣味の人』にまわってしまい学生に行き渡らなくなるのは問題だが、バッグやポーチに加工する制服はそもそも傷んでいるので、売る相手を制限する必要がないこと」などの理由があるのではないだろうか。

 いずれにせよ、商業活動の自由の範疇と言えるのではないかと思う。

 

ここに改善の余地がある

 とはいえ、この商品を発表するにあたり、届けたい人に届けるためにはもう少し工夫の余地はあったのではないかと私は考えている。

 

1.ネーミングが良くなかった

 この制服スカートポーチは「めくりん」という商品名のようだ。この店ではほかにも、セーラー服をリメイクした「せえらん」、学ランをリメイクした「がくらん」が売られている。

 それらと響きを揃えるために、スカート型ポーチは「めくりん」にしたのだと思うが、「スカートめくり」を連想させてしまう名称にしたのは良くなかったと思う。ミニスカートだから「ミニりん」とか、裾がひらひらなびくのでひらりんとか、そのような名称だったらまた印象も違っていたのではないかと思う。

 

2.ツイートが良くなかった

 すでにツイートは消されてしまっているようではあるが、「めくって遊んでみて」というアピールも上記と同様の理由で、良くなかったと思う。もちろん、親しい関係の相手のスカートをめくってじゃれ合うシチュエーションもあり得るが、「スカートめくり」という「犯罪」が「遊び」と矮小化されることが問題視されている中では、「スカートをめくること」と「遊び」が繋げられているツイートに不愉快な思いをする人も多かったと思う。「裏側はフルーツ柄になってます」などの、商品の内容紹介に留めておいたほうが良かったのではないだろうか。

 

結論

 私の結論としては、「プロダクトとしては面白いと思うので、売り方にもう少し配慮したほうが良かったのでは」ということに尽きる。

 そして、どのようなものを愉快に思い、どのようなものを不快に思うかは人それぞれなので「性加害を連想させ得るものは、販売を止めるべき」ではなく「どのような売り方やアピールをすれば、より適切に商品を届けられるか」の方向から考えていけるようでありたいな、と今回の騒動を通じて思った。

 

 

 ……それにしても、自分が開発やプロモーションに関わった製品というわけでもなく、批判を読んでから後出しジャンケンで「ああすればよかった、こうすればよかった」という記事を書くことにはどこか居心地の悪さもある。「偉そう」にならない立場からできることも自分なりに模索したい。