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容姿批判は悪いこと? 社会的合意の今後について

 はてなブックマークにて、こんなTogetterまとめが話題になっていた。

togetter.com

  

「容姿は好みの問題もあるし、本人の努力ではどうしようもない部分も大きいんだから、そこを悪く言うのは良くない」

「ブスだった、おばさんだった……程度ならともかく、存在そのものが邪悪なキャラクターに例えるのは悪質

「サービスについて批判をする権利はあるけれど、言葉を選ばないとただの陰口。金を出したら何を言ってもいいというわけではない」

「失礼な内容ということもあるけど、そもそもこんな話題で盛り上がることが下品だし時代遅れ

「こういう話題で盛り上がってもいいけど、インターネットのような公開の場ですることではない

たった1万円しか払っていないのなら、それ相応のサービスになるのは仕方ない」

「風俗嬢が客のことをネットで愚痴ってたりもするけど、それはあくまでも客の言動に対して。不細工というだけでネタにすることはない」

「プロとして問題なく接客しても、容姿が悪いというだけでこんなふうに書かれるなんてかわいそう」

と、このまとめ内容に批判的な意見もあれば、

 

「風俗嬢は、容姿もサービス・商品としての範疇なのだから、そこに不満があるお客から文句が出るのは当然では」

「容姿が能力として評価される職業は当然ある。プラス評価しかすべきでないというのはおかしい

「飲食店の食事がマズかったとか、タクシー運転手が道を知らなかった……という愚痴と同じことでは」

「風俗嬢だって、客のことを #クソ客のいる生活 タグであれこれ言ってるじゃないか」

店や嬢の名前を出しているわけでもないし、キャスト本人に直接言ったわけでもないのなら、別に構わないのでは」

「これだけの情報では名誉毀損になるとは思えないし、表現の自由の範囲かと」

「不愉快だ、下品だというのなら、わざわざそんなまとめを見なければいい

など、肯定的な意見も多かった。

 

 私自身は、この件に関しては肯定的な立場を取りたい。

容姿も含めてサービスなのでは

 性風俗サービスはその性質上、キャストの容姿もサービスとして重要な要素となってくる、ということに一定の社会的合意はあるだろう。そこに対して、満足できなかったという利用客から否定的な意見が出てくることは、当然あり得るのではないだろうか。

 このまとめだけでは、当該キャストの容姿がどのように良くなかったのか(努力で改善可能な範囲かどうか等)は判断できない。

 しかし、そのキャストが身だしなみの手入れを怠っていた場合でも、好みのタイプではなかった場合でも、店が売り出しているコンセプトとかけ離れていた場合でも、お客がサービスの愚痴を言うこと自体は特におかしなことではないと思う。

 

「初対面の者同士で肌や粘膜を密着させる」「限られた時間の中で濃厚なコミュニケーションを取る」というシステムになっている以上、相性が悪かった、不満だった……と感じることは、おそらくそのほかの接客業以上に多いのではないだろうか。

 自由恋愛や、恋愛結婚をしたカップルですら喧嘩をしたり、別れることは多々あるのだから、初対面同士なら当然、不満が出ることも多いだろう。

 

法に触れるのは良くないけれど

 もちろん、店やキャストの名前を名指ししていたり、特定が容易な形で書いていたら話は変わってくる。キャスト本人が見たら、努力での改善が難しいことを面白おかしく嘲笑われたら傷つくこともあるだろう。侮辱罪、名誉毀損罪、営業妨害となる場合もあるかもしれない。

 ただ、このまとめに載っているやりとりでは、どの店のどのキャストのことなのかは特定ができない。特徴が詳細に書かれているわけでもなく、人外のキャラクターに例えられているということもあり、この投稿が営業妨害や侮辱罪等になるとも考え難い。

 

陰口は良くないことか?

「容姿を貶すことは悪いこと」「思っていたとしても、公言するのは良くない」「こんな話題で盛り上がることは下品だ」という意見が散見されたのも気になった。

 賛否あるのかもしれないが、個人的には、陰口の類が特に悪いことだとは思わない。

 まぁ、特段褒められた振る舞いではないにしても、さまざまな事情があってその場では言いづらいネガティブなことを、他者に打ち明けることくらいは誰しもあるだろう。

 陰口を言うことで「本人に直接言えばいいのに」「この人、ネガティブな話ばかりしてるな」と相手から思われることもあるかもしれないが、そのように評価されることも当人が承知の上であるなら、その振る舞いを他者が制限する必要はないだろう。

 過激な言葉遣いで他者を貶すことに慣れてしまうと、どんどんその言動がエスカレートしていき、やがては周囲を傷つけていくことになる……というリスクはあるかもしれない。陰口という形で誤報を広めてしまうことや、名誉毀損に繋がる出来事も起こるかもしれない。だが、それにしても、先回りして制限すべき言動であるとも思わない。

 それらによって他者の権利が侵害されているとも考えにくいため、これは表現の自由の範疇ではないかと思う。

 

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たしかに下品かもしれないが

「下品である」というのは、まぁ、社会通念上そう思われるのは無理ないかなぁ……とは思う。しかし、別にネット上では必ずしも上品な振る舞いをしなければいけないというわけでもないだろう。

 下品である、と批判をするにしても、そのようにネット上で批判をすることもまた「下品だ」と思う人もいるかもしれない。

 法に触れる言動の場合は話が変わってくるが、ヘイトスピーチに該当するわけでも、特定の人物を攻撃する内容というわけでもないのなら、個人の好みの範疇だろう。それこそ、「下品なやり取りを見て不快だった」というのは、「接客してくれたキャストが好みのタイプではなかった」という内容と同じことに思える。

 

 侮辱罪、名誉毀損罪、営業妨害に該当しうる場合なら「嫌なら見るな」という反論は批判としては的外れになるが、このケースは「嫌なら見るな」で済む話ではないだろうか。

 もちろん、ネットに公開されているコンテンツである以上、読者から「つまらない」「不快な内容だ」と批判されることはあるだろう。しかし、あくまでもそれ以上でも以下でもない話に思える。

 

「言動」なら批判していいの?

「おかしな言動の人については批判してもいいけど、容姿についてあれこれ言うのは良くない」というのは、たしかに近年はそういったコンセンサスは取れているのかもしれない、と感じることは多々ある。

(以前書いたブログでも触れたので、割愛)

www.wuzuki.com

 しかし近年、コミュニケーションに支障をきたす先天的な障害の話も、ネットでは定期的に話題になるようになった。

 また、美容整形の施術を受ける社会的ハードルも低くなっている。

 その点を踏まえると、「おかしな挙動をする人は、コミュニケーションスキル改善の努力を怠っているので、面白おかしく書いても良い」「容姿は本人の努力ではどうにもできないので、そこについて言及するのは良くない」という社会通念も、かなり恣意的なものに思えてくる。

 

 では、「容姿に関することも言動に関することも、他者についておおっぴらに言及するのは控えるべき」だと思うかというと、現段階ではそうすべきともあまり思わない。「個人のプライバシーが侵害されない限りは、原則として構わないのではないか」と考えている。

 

 容姿にしても性格にしても、技術の発展により、自分好みなものへのカスタマイズが容易に可能になったらどのように社会通念は変わってくるだろう……と考えることはある。ただそれはあくまでも思考実験であって、今現在の現実の問題を考える上ではあまり意味はないかな、と思ったりもします。

 

 9月中にブログを更新したかったので、ちょっと今回は駆け足で終わるよ。 

 

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