「ルール?展」、面白そう!
10月30日(土)、友人たちと「ルール?」展に行ってきました。
この企画展、何をきっかけに知ったのかは忘れてしまいましたが、
「ルール」と向き合うことがテーマになっている、ということ、
田中功起さんや遠藤麻衣さんなど、気になっていた作家さんが参加されているということ、
そしてディレクターとして、映像作家で研究者の菅俊一さんが携わっていらっしゃるということで興味を持ちました。
菅さんの著書『観察の練習』、以前このブログでも紹介したこともありますが、お気に入りの一冊です。
結論から言うと、この「ルール?」展、とても面白かったです!
ただ、閉館1時間前の17時に入館したため、じっくり鑑賞できなかった作品がいくつもあったのが少し心残り。
現在、新型コロナウイルス対策として予約制になっていますが、じっくり観たい人は17時よりも前の時間に予約することをオススメします。(公式サイトから予約できます)
パンフレットも充実の内容!
入館して配られるパンフレット、これがまず面白かったです。
すでに入館シールとスタンプを押してしまっているので分かりづらいですが、入館時にもらう時点ではこれらは押されていません。標識を模したスタンプがいくつも置いてあるので、その中からスタンプを選んで押すことになります。
押したあと、一緒にきたメンバーで「押したスタンプ、どんなのだった?」と盛り上がりました。
そしてこのパンフレット、中身も充実。この展覧会の「参考文献」的な感じになってます。いろいろなグラフやデータが出ていて、これだけでも読み応えありそうなくらい。(ただ、展示そのものはこのパンフレットを開かなくても十分楽しめるというか、開くほどじっくり鑑賞する余裕はありませんでした……)
写真あれこれ
館内の展示の撮影は、原則として自由でした。(動画は一部で禁止されていました)
今回来れなかった友人もいたので、彼に見せるための写真をみんなで手分けして(?)撮影したりも。
こんなものも作品になってた
この展示への「意見募集」の内容も作品のひとつになっていました。
会期が長い展覧会ならではの企画ですね。
個人的にまず面白いなと思ったのは、この「意見募集」の張り紙の文字がわざわざ手書きで書かれていたこと、そして、寄せられた「意見」のほうがパソコンの文字で書かれていたということ。
これにはどういう意図があるのだろうか……と考えてみました。
既存のご意見箱的を「反転」させたものとしたかったのかもしれないな、と思いました。
そして、Twitterで少し話題になっていた、こちらの投稿の実物も観てきました。
街歩きオタクが好きそうなやつ!#ルール展 pic.twitter.com/KkVCvZTHWm
— 城井ふとん (@futon345) 2021年10月22日
そのほか、私にとって印象的だったものや、もっと観てみたかったものなどいくつか紹介したいと思います。
NPO法人スウィング「京都人力案内『アナタの行き先、教えます。』」
この二人は、京都の市バス路線を丸暗記し、観光客や困っている人たちに自主的に案内を行っているとのこと。
対価を要求しないこの交通案内は、ボランティアとも仕事とも言い難く、客引き行為とも異なる、さまざまなルールの合間を縫って成立している……とのことで、とても「ルール」を感じさせられました。
そして、大学時代に京都に住んでいた私にとっては、あのバス路線のわかりづらさはすごく「わかる……!」と思えるものだったので、そこに懐かしさと共感を覚えました。
石川将也+nomena+中路景暁「四角が行く」「ルールが見えない四角が行く」
撮った写真がブレていたのでこれしかなかった……。
どんな展示かといいますと、四角いオブジェが、流れてくるトンネルの形に合わせてズレていき、形を変えていくというもの。わかりづらい説明でスミマセン。
これは「ルールに従う人々」を模したもののようです。
当初は、少し地味な展示だと思ってなんとなくスルーしてしまったのですが、じっくり観てみると批評としても面白かったのと、ロボットというかコンピュータというか、この、オブジェがパタンパタンと動いて形を変えていく動きの仕組みも興味深いと思い、見入ってしまいました。なんだか、数学の展開図の問題を思い出します(?)。
Whatever Inc.「D.E.A.D. Digital Employment After Death」
死者の再現や死者のプライバシーなど「死後のルールメイキング」についての展示です。こういう生命倫理に関する話題には割と関心があるので、見入ってしまいました。
娘を幼くして亡くした母親が、VRで娘さんと再会した映像とかは泣けた。
映像の横には、死後の権利の表明書の記入ブースみたいなものもありました。混んでいたのでどんな感じだったかは見れなかった。
遠藤麻衣「アイ・アム・ノット・フェミニスト」
これ、写真撮りそびれてしまったのでパンフレットを引用します。
こういう、オルタナティブな「結婚」とか、家族制度を見直すような動きって興味あるんですよね。
2018年に開催した(私も運営のお手伝いしていた)「かぞくって、なんだろう?展」を思い出しました。
一般社団法人コード・フォー・ジャパン「のびしろ、おもしろっ。シビックテック」
これもササッと観てしまったので悔やまれます。Code for Japanの活動に関わっている友人は何人もいるので、もっときちんと鑑賞すればよかった……。
一番良かったのは、これ!
ダニエル・ヴェッツェル(リミニ・プロトコル) 田中みゆき 小林恵吾(NoRA)×植村 遥 萩原俊矢×N sketch Inc.「あなたでなければ、誰が?」
これ、ものすごく好みでした。
これは来場者参加型の企画です。私が来たときには残念ながら定員に達してしまっていたものの、観覧はできるようだったので、何気なく覗いてみたらとても惹き込まれました。
どういう企画かというと。この場に集められた来場者が、スクリーンに表示される質問について「はい」なら右に、「いいえ」なら左に移動する、というカタチで回答していく……というもの。
Yes,Noだけでなく、複数選択肢があるようなものもありました。
そして終盤では、少しセンシティブな質問も。
照明を落として暗くして、回答方法も先程までのものとは異なるカタチをとり、どう答えたか他の人からは分かりにくいように配慮されていたのもドキドキしました。
これ、「ルール」そのものとは直接関わりのない展示のように思えましたが、パンフレットなども読んでみたところによると、ルールを決める方法としての「民主主義」を問い直すことを目的とした企画のようでした。
さらに、こんなものも作品になってた
時間もなくなってきたので、会場を出てミュージアムショップに向かいます。
結局何も買わなかったものの、レジのこれには目が留まりました。
まさかの、レジにも展示作品風のキャプションがつけられているとは……w
みんなの感想、私の感想
一緒に行った友人たちの感想を聞いてみたところ、
「予約制だった割に人が多く入っていて驚いた」
「若い人やカップルが多いのが意外だった。
こういう現代アートって、好きな人は結構限られてると思ってた」
「『ルールを破壊して自由になる』みたいなカウンターカルチャー的な展示ではなく、『より良いルールのために議論しよう』といった感じだった」
「『資本主義ぶっ潰せ』系の展示もあり、ごちゃまぜな感じだと思った。
対話&熟議、アナーキー、ルールの可視化&メタ化、の3種類があったという感じ」
「抽象度が高い展示が多くて、見る人を選ぶのではと思った」
などが挙げられていました。
私の感想としては、みんなとは割と大きく違っていて、
・予約制なだけあり、人数はちょうどいい感じに絞られていて良かった
・客層としては、(やや失礼な表現になるのを承知でいうと、)
「作品のそばで考察を繰り広げているような人たちよりも、いかにもミーハーな感じの人が多いなぁ」という印象。概ね予想通りの雰囲気
・六本木の森美術館にも言えるけど、そういうミーハーな若者への訴求を狙ったような美術展、このへん多いよね……(私そういうの萎えるんだよなぁ)
・思ったよりボリュームが多く、じっくり鑑賞できなかったのが心残り
・たしかに抽象度の高い展示も多いけれど、パンフレットが思考の補助線として使えるので、あまり「人を選ぶ展示」という感じはしなかった
・むしろ、美術ガチ勢もミーハーな初心者も楽しめる、万人におすすめできる展覧会という印象
といったところです。
ちなみに、ほかの友人の感想のnoteはこんな感じでした。
11月28日(日)までやっている展示なので、興味を持った方はぜひ、予約して観に行ってみてくださいね。