これからも君と話をしよう

一度はここから離れたけれど、やっぱりいろんな話がしたい。

谷川俊太郎展はいろんな楽しみ方ができる

 思春期の頃に比べると読むほうからも書くほうからもやや遠ざかってしまいましたが、それでも詩は好きです。

 そして、合唱曲はもっと大好き。Nコン合唱部門の課題曲を作ることは中学時代からの夢です。そんな私です。

 

 3月10日土曜日、初台のオペラシティで開催されている谷川俊太郎展」に行ってきました!

谷川俊太郎展|東京オペラシティアートギャラリー 

 

2018年3月25日(日)までなので、興味ある方はお早めに!

 

 この展覧会は、日本でもっとも有名な詩人・谷川俊太郎さんの仕事をさまざまな形式で展示したもの。 

 教科書や絵本などでその名前・作品は子どものころから知っていましたが、私がより興味を持つようになったのは中学時代。合唱曲にドはまりしていた時期があり、そのときに谷川さん作詞の合唱曲もよく聴いていました。「春に」「信じる」「二十億光年の孤独」「サッカーによせて」「生きる」あたりが有名かと思います(私は「じゃあね」が好き)。

 また、家族が薦めてくれたので読んだ谷川俊太郎質問箱』という本も大好きで、2008年、2012年、2014年に繰り返し読んでいます。(続編もあるようですがそちらは未読……!)

谷川俊太郎質問箱 (Hobonichi books)

谷川俊太郎質問箱 (Hobonichi books)

 

 2014年に、愛知県春日井市で「谷川俊太郎 ことばとアート」展というものが行われていたこともあるのですが、私はこちらにも行ったことがあります。めちゃめちゃ楽しかった……! 近所の喫茶店とのタイアップ企画があったりしたのも良かった。2014年に行った展覧会の中では2番目に良かったです(1番は岡崎市での葉祥明展)。というか私の中では2014年は展覧会・アートプロジェクトの当たり年で、ヤンキー人類学(広島県福山市)、これからの写真(愛知県名古屋市)、BIWAKOビエンナーレ滋賀県近江八幡市)など、どれもすっごく面白かった……!

谷川俊太郎 ことばとアート|公益財団法人 かすがい市民文化財団

 

 さて、今回の「谷川俊太郎展」ですが。

 結論から言うと、正直、4年前の「ことばとアート展」のほうがカラフルで、言葉のうまみをたっぷり味わえて、琴線揺さぶられて面白かったです。ことばや詩、表現など全力で楽しんでいる感じがあったというか。今回は、「谷川俊太郎の仕事」に目を向けた展示だったなぁという感じです。

  

 入館すると、まず、やや暗めの展示室に入ります。音声と映像のインスタレーション

 立ち止まって動かずにいるひとが多く、「え、今ってもしかしてなにかのワークショップの最中? 動いちゃだめな感じ?」と、やや焦りました。

 

 しばらく歩くと、広めの展示室に辿りつきます。ここがいちばんのメイン会場かな。

 谷川さんが作詞を担当した「鉄腕アトム」の曲が流れていたりも。順路はなく縦横無尽に動いて鑑賞できるエリアです。

 詩を書く際に使っていたワープロやパソコンなどの仕事道具、工具類、代表作、愛用のTシャツ、食事風景、家族との写真、本棚などなど、谷川さんに関するさまざまなものが展示されています。壁に、手書きのつぶやきが貼ってあったりも。

  

  

 洗いざらしのTシャツ。この日の気温も相まって、詩は天気のいい休日と相性がいいなぁ、なんてことを思ったり。

 谷川さんの言葉の選び方はやっぱりいいなぁ……。はじまりたての思春期のころを思い出すというか。教育現場でよく引用されるのもわかる気がする。そんなことを考えながら鑑賞しました。死生観についての詩には目頭が熱くなったりも。

 

 この展示室を抜けると、書き下ろしの新作の詩が一篇。

 

 そして出口のそばには、「3.3の質問」と題された映像作品。谷川さんだけでなく、さまざまな分野で活躍されている方の「3.3つ」の質問とその回答が映像として流れています。

 私にとってもっとも印象的だった質問は、「もし人を殺すとしたら、どんな手段を選びますか?」という問い、そしてそれに対する、とある回答。「この人(?)にその問いを投げかけるとは。なるほど。その質問をしてみること自体がある種の面白い試みだなぁ……」と思いました(誰の回答なのかはここでは伏せます。展示をご覧になっていただければ分かると思います)。

 

 今回の展示は、特定の作品をクローズアップしない範囲での写真撮影はOKでした。

 今回、思っていたよりボリューム少なめの展示だったので、入館してひと通り写真を撮りながら観たあと、図録を買って再び入り直す(当日のみ再入場可なので)……という鑑賞スタイルを取りました。

 一度目に入ったときは、音声と映像の部屋からは早めに立ち去ってしまっていたのですが、二度目のときは、じっくり鑑賞してみることに。

 詩の朗読と文字が流れる映像だけでなく、背後に流れる音楽がなかなか心地よいことに気づきました。

 そしてこのときは、歩きまわっているひとは少なかったです。さっき入ったときは私はあまりじっくり鑑賞しないまま歩いていたので、同じように歩くひともちらほら見受けられましたが、今回はあまりいない。立ち止まっているひとが多いとほかのひとも立ち止まるということが、少し面白かったです。

 

 続いて、展示のコーナー。二回目に入ったときはあまり写真は撮りませんでした。さっき入ったときは、私があちこちにカメラをかざしながら歩いていたのもあってか、スマホを掲げているひとやシャッター音も目立っていたのですが、このときはそうでもなかった。

 歩くこと。写真を撮ること。スマホを出すこと。周囲の振る舞いや鑑賞行動が良くも悪くも他者に影響を与えることについて、すこし思いを馳せてみたりしました。

 

 展示されているTシャツを触ってしまい、警備員から注意されているひとがいたことも印象に残りました。

 絵画は触ることを前提とした作りにはなっていないし、触って楽しむ習慣もないため、そういったトラブルは起こりにくいと思うのですが、「服が飾られている」シチュエーションはアパレルショップなどで日常的に見掛けるために、それらと混同して「触ってしまう」ことが起こりやすいのかもしれません。

 

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 谷川俊太郎展のチケットの半券で、同時開催のほかのふたつの展示も観ることができました。

www.operacity.jp

www.operacity.jp

 宮本穂曇展は、こういった場で鑑賞するものとしてはあまり私好みではなかったです(もっと現代アートっぽい場とか、ネットなどで見る分には絵が映えて面白い)。

「なつかしき」は、日本の風景画と、白黒の住宅写真が中心。こちらは面白かったです。まるで旅をしているような気分になって、ふたつの意味で「旅の面白さ」を感じた気がします。

 ひとつは、「いろんな風景を観ることの楽しさを再確認できた」ということ。

 もうひとつは、「行ったことのある場所の思い出と、そこの風景画を重ねられるのって面白いな」ということ。

 もちろん、図録や写真集、ポストカードやウェブサイトでも風景を楽しむことはできますが、歩きながら楽しんだり、目線の位置を意識したり、そういうことは美術展ならではの風景の楽しみ方だなぁと。

 日本の民俗学とか歴史や文化に詳しかったら、白黒の住宅写真のほうももっと楽しめたかも。そんな展示でした。

 

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 今回の「谷川俊太郎展」は、4年前の「ことばとアート展」ほど好みではなかったことのひとつに、映像作品が多かったことがあります。

 展示を眺めたり、本を読むのはじぶんのペースで楽しめますが、映像ってじぶんのペースで楽しみにくいので、展覧会の文脈の中で鑑賞するにはどうにも苦手で……。そこがやや惜しかった。 

 ただ、人間性に触れる展示物が多く、谷川俊太郎さんにいつかお会いしたい気持ちはますます強くなりました。

 展覧会での、作家の在廊日やイベントがある日の情報って見落としてしまうことも多いのですが、今後は次のイベントを見逃さないように、Googleアラートに「谷川俊太郎」をしっかり登録しましたよ……! 

  谷川さんは、2018年現在86歳。現在も新作を読めることの喜びをひしひしと感じます……!

 

 今回の展示の図録というか関連書籍の『こんにちは』は、一般の書籍として発売されているため、書店や通販でも買えるようですが、オペラシティのギャラリーショップで買うことをおすすめします。表紙の色も3種類から選べますし、レシートに、谷川さんの遊び心あるメッセージが記載されているので……!

こんにちは

こんにちは