9月下旬のある日のこと。家に帰ると、一通の封筒が届いていました。最近、出産したばかりの友人からのお手紙です。
この友人と知り合ったのは、7月に開催されたとあるイベント。そのときのことを書きたいと思います。
***
7月も終わりに近づくある日のこと。なにげなくFacebookを眺めていたら、とあるイベントの広告が流れてきました。
そして、7月26日水曜日。仕事終わりに、男友達と一緒に行ってきました。
展示期間中は、トークイベントも行われているようでした。
私と男友達、両方の都合がついたこの日は、トークショー「結婚のようなもの、家族のようなもの」が行われていたので、それに合わせて行ってきました。
「家族と性愛」が専門のライターの、佐々木ののかさん。
「積極的非婚出産」をする、櫨畑(はじはた)敦子さん。
「劇団劇作家」所属の劇作家、モスクワカヌさん。
この4人の女性が登壇していました。
4人はみな、それぞれに既存の結婚制度に抵抗があったり、疑問を持つひとたち。どんな話が出たのか、一部紹介します。
・「結婚」は、どうしても抵抗があったのでしたくなかったけれど、「結婚のようなもの」ならしてもいいと思って、パートナーと「結婚のようなもの」をしてみた人。
・「冠婚葬祭という名目だと路上パフォーマンスの許可が下りやすい」ということを利用して、「反婚パレード」も行った。
・そしたら、結婚だと思われてご祝儀やお酒をいただいたりもした!
・「結婚のようなもの」という言い方だと柔らかいけれど、「MARRIAGE IS OVER」「不入籍」「反婚」と書いたプラカードを掲げたりして、実際はデモみたいでロックな感じ。
・「結婚」に抵抗があったけれど、結婚の何がそんなに抵抗があるのか自分でもよくわからない……という人。
・だから「1年だけ結婚してみよう、そしたら何が嫌だったのか見えてくるかも」と思って、1年だけとりあえず結婚してみることにした。
・4回くらい披露宴した!
・同居の義務なし、扶養の義務なし、子どもができるまではほかの異性と性行為をしない……などと取り決めた「だいたい結婚」をしてみたけれど、やがて、相手の男性のほうが「普通の結婚」を求めるようになってきてしまった。
・大阪で、同性カップルが里親になったニュースを知った人。
・「子どもは産みたくないし結婚もしたくないけど、家族を持つことには興味があった」ので、女友達に「同性パートナーとして一緒に子どもを育てない?」と提案。
・「これってプロポーズ?(笑)」「性愛由来じゃないけどね」「それでいいと思う。愛や恋は脆く崩れやすいし」
・ふたりで住む家を探すときも、「家を探す」という発想ではなく、「劇作家に住んでもらいたい家を募集!」と言ってSNSで募集をかけてみた。
・大阪や長野など、いろんな家を紹介してもらえた。結局、横浜の家に住むことに。
・同じく「家族になろう!」と言って女友達と一緒に住んでみたけど、一ヶ月半でダメになってしまったという人も。
・“シェアメイト”だと「しょうがないか」って思えることでも、“結婚相手、家族”だと思うとハードルが上がってしまう。
・「結婚」という枠にガチッとはめられるのが苦しい。あくまでも「生活ユニット」でいたい。
・男友達と「セクシャルなことはしない」という約束で暮らし始めたはずなのに、「でも○○ちゃんは俺のこと好きだよね?」と言われて迫られるのが嫌だった。
・1回寝ただけ、キスしただけなのに「付き合ってる」「俺のもの」と思われたりするのも嫌。その時点で生理的に無理になる。
・「私は、自分の好きな人には死んでいてもらいたい」という人。
・生きていると、別れたり去ったりする。でも死んでいればそれはない。恋愛では「安心できること」が最上位だけど、生きていたら安心できない。
・アメリカのシリアルキラーにも、「好きな人を殺して一緒に過ごして、腐ったら捨てて、また新しい人を殺して一緒に暮らす」という人がいた。
・世間一般の「恋愛」、していないかも。
・「付き合う」の定義も、ひとによって違うよね。
・スタンダードなプランにみんな一度は乗ろうとするよね。
・家族の作り方もいろいろあるけど、みんなしようとしないよね。
・「○○(結婚、出産など)しなさい」っていうひとはあまりいないけど、圧力は感じる。
・「子どもを産みたい」「家族を持ちたい」と思うことについても、やっぱり、年齢による焦りは大きいと思う。
・ゼクシィ見るとその金額にも焦らされる。
・一ヶ月一万円生活をしたり、「家がなくてもやっていける」みたいに思えると楽かも。
etc……。
***
これらのお話を聴いてみての感想などを何点か。
・「法律婚にどうしても抵抗があった」「なんとなく嫌」みたいな、抽象的な理由での拒否反応をしていたひとが多かったのが印象的。
・法制度を利用しないことによるメリット、デメリットなんかの話も聞きたかった。
・事実婚や選択的非婚出産を「これからしていく人」の話もいいけど、それらを実践してからある程度年月が経っているひとの事例も聞いてみたかったかも。
・選択的非婚出産、もっとしやすくなって欲しいとも思うけれど、うまくやらないと、父親から子どもを取り上げることになってしまったり、養育費未払いのトラブルに拍車を掛けたり、社会保障費の増大に繋がってしまいそう。
・「彼氏がなかなか結婚に踏み切ってくれない」という女性の悩みはよく目にするけど、今回登壇していたひとたちは逆だったのが興味深かった。男性のほうが「普通の結婚」を求めて、女性が「どうしても結婚に抵抗がある」という……。
・今回の登壇者に限らず、男性のほうから、「オルタナティブな結婚」の提案を持ちかけているケースはあまり見かけない気がする。
・男性のほうが保守的なひとが多いのかな。あるいは、男性側から提案すると「都合の良い関係を求めている」ように思われそうだからなのか。「弱者男性の生きづらさ、キモくてカネのないオッサン」の話とも通じる?
・「オルタナティブな結婚」とは違うかもだけど、えらいてんちょう氏(※後述します)の「雑な結婚」のケースが、身近で知ってる唯一の男性側からの事例かも。
・「シェアハウスでの子育て」を提唱するひとがちらほらいるけど、私は奨励したいと思えない。以前は割と賛成派だったんだけど、『愛着障害』の本を読んで考え方が変わった。
・共同体運営そのものに関しても思うところはあるけど、子の愛着形成の観点から賛同できない。ただ、個別に応援している事例はあるけれど。
・「昔の村社会」を引き合いに出すひとがいるけれど、ムラ社会は良くも悪くも「いつでも投げだせる関係」ではないから成り立ったのでは。
ホリイセンはシェアハウスで家族を育てる論みたいなのを展開しているけど、それは子育てしている人の話を聞けば聞くほど不可能である気がする。もしそれを実現させるとすれば全ての居住者に保育士並の賃金を払うか、宗教団体のように強い繋がりを作る仕組みしか無い。子どもを育てるのは重労働だそうだ
— GGG (@ggggenki) 2017年9月27日
シェアハウスとかグループホームとか、「家族」という小さな単位での結合が崩れた現代における代替の模索の1つではある。ただ「いつでも出て行ける」自由な世界は結合の弱さの表れでもある。そして、そうした自由な世界は「弱い結合に耐えられる強い人」しか生きられないのかもしれない、とも思ったり
— Tuba56@法律の素人 (@Tuba56) 2017年7月27日
・「好きな人には死んでいてほしい」という考え方、二次元キャラクターや人形を愛する人にも通じるところがありそう。
・出産について「年齢による焦りもある」と言っていたの、人間臭さが垣間見れて良かった。そして、それを考えると、20代前半で男友達をスカウトして友情婚したはせ川さん(※後述します)はすごいな。
・「結婚・出産しろという圧力」の話を聞いて思ったけど、登壇者皆さんのそれぞれの出身地や、育った家庭環境がどのような感じだったのかも気になった。
***
展示の写真あれこれ。
***
最後に、「わたし、産みたい!」展まわりのひとが書いた記事や活動に関するサイト、そのほか既存の家族、婚姻制度を考える上で参考になりそうだと思った記事をいくつか紹介します。
(すべて読まなくても、タイトルだけでも流し見してみる価値はあるものばかりだと思いますよ~)
■知人男性をスカウトして友情婚(事実婚、更新制、非恋愛結婚、貞操の義務なし、よそで子ども作ってもOK、財布別、同居)した友人、はせ川さんのブログ記事。
■はせ川さんの夫である有名プログラマー・江添亮さんのブログ記事。
■アンチ恋愛結婚を掲げ、自身を株式会社に見立てて公開婚活をするコラムニスト・高田真奈実さんのサイト。
■「紙出すだけで信用が得られる」ということで「雑な結婚」をした、人気ブロガー・えらいてんちょう氏のブログ記事。
■敦子さんの元夫であり、えらいてんちょう氏の部下でもある菅谷圭祐さんの「だいたい結婚」の記事。
■敦子さんによる「だいたい離婚」の記事。
■かとうちあきさんの「結婚のようなもの」についての記事。
■佐々木ののかさんの、家族と性愛観に関する記事。
■エッセイスト兼モデル・下田美咲さんの記事と、えらいてんちょう氏によるその反論記事。
■コラムニスト・小野美由紀さんの記事。
この考えは、究極の理想としてすごく共感しました。ただ、これって時間、お金、体力、精神、どれにもかなり余裕がないと困難だと思うので、私含め実践できるひとはなかなかいないと思いますけどね(笑)。
■偶然見つけてすごく面白かった記事。
これ、ジェンダー論の観点からも、精神疾患の観点からもとても興味深かったです。
ネットでは「婚外子や複数恋愛が市民権を得ると、強者男性ばかりが女性を手に入れる、事実上の一夫多妻になるのでは」という意見を時折見かけていて、そのたびに納得する気持ちと違和感を半分ずつ抱いていました。
そんなときにこの記事を読み、「なるほどこういう基準で“子どもの父親”を決めるひとがいるのか!」と驚きました。違和感のひとつを発見できたような気がします。
余談ですが先日、少子化ジャーナリストで客員教授の、白河桃子先生のトークイベントで質問をする機会がありました。
「これまでのお話、『パートナーとどう人生設計をしていくか』という“相手ありき”でのお話が中心でしたが、『シングルマザーを積極的に選択して産み育てること』についてはどうお考えですか」と質問しました。
「いい質問ですね。性行為をするかしないかも考えなくてはいけないし、信頼できて、且つ、“子どもの父親になってもいい”というリベラルな男友達を見つけられればいいのだけれど。シングルでも産み育てやすい社会にしていきたいですね」というニュアンスのことをおっしゃっていました。(もっと踏み込んだ質問もしてみたかったのですが、これ以上の内容を質疑応答の場で求めるべきではないと思ったのでここで切り上げましたが)
「産みたい展」に登壇していたような、オルタナティブなことをやっている、実践的なひとたちだけでなく、大学の客員教授でありジャーナリストである白河先生からそのような言葉が聴けたことは、なんだか心強かったです。
性愛、ジェンダー、家族、働き方、コミュニティ、共同体、関係性などについては私も追求していきたいテーマ。
今後、どのような風潮が生まれるのか。どのような制度ができるのか。世の中の動きや揺らめきを、さまざまな角度から見ていけたら、そして私も変革に携わっていけたらなと思っています。