これからも君と話をしよう

一度はここから離れたけれど、やっぱりいろんな話がしたい。

被害と加害と、原発と(福島旅行1日目の後半)

 突然ですが、私、合唱曲が大好きなんです。

 今年はコロナで中止になってしまいましたが、小中高の全国規模の合唱コンクールNHK全国学校音楽コンクール」(通称「Nコン」)も大好きで、地方の県大会なども都合がついたら遠征して聴きに行くこともあるくらい。

 

 じつは、今回訪れた福島県「合唱王国」と言われるくらい合唱が盛んなところ。

 特に郡山エリアが強いようです。

 そんな福島では、震災後にこんな合唱曲が作られたりもしていました。

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 これは、南相馬市の中学校の生徒さんたちが作詞し、先生が作曲したという曲。

 原発事故で避難を余儀なくされ、離ればなれになった友人たちへの想いや、故郷での再会の決意が歌われています。

 もともと大好きな曲だけど、福島旅行で聴くとよりいっそう沁みます……!

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伝承館に入ろう

 さて、双葉駅からレンタル自転車に乗り、今年できたばかりの施設「東日本大震災・原子力災害伝承館」に到着した私たち。

 整理券をもらい、YouTubeで音楽を聴きつつ待っていたら入館の順番が回ってきました。

 

 伝承館のスタッフさんのユニフォームは、緑と白を基調としたアロハシャツのようなもの。

 シャツの裾には「Honeys」のロゴが。

「ハニーズってあの、若い女性御用達のプチプラファッションブランド? なぜ?」と思っていましたが、のちに調べたところ、ハニーズの本社はいわき市なので地元企業によるものだったのですね。勉強になりました。

news.yahoo.co.jp

 

 チケットを買って入館すると、まず、短いビデオの上映を観ることになります。

 そしてビデオを終わったあとに、展示がある部屋に移動。螺旋状になったスロープを上っていきます。

「こういう構造になっているのは、原発のメタファーかも」と友人は言います。

 壁には、原発をめぐる年表が掲示されています。

「営業(えいぎょう)」「経済(けいざい)」など、随分簡単な漢字にまでふりがなが振ってあるのが気になりました。子どもや外国人が来ることも想定しているんでしょうね。

 

  館内は撮影禁止なので写真は撮れませんでしたが、映像コンテンツが多く、これらをじっくり観るとなると数時間かかりそうなボリュームでした。

「コンクリートごと流されたポスト」の展示のような、震災や原発事故に直接関連しそうなものもありましたが、そういうものだけではなく「2010年の時刻表」だとか「震災前後のツイートの増加数」なんてものが貼ってあったりも。

 ちなみに震災前は、ツイートは1日あたり1,800万件だったのが、震災当日は3,300万件、そして震災後の1週間は平均2,500万件のツイートがなされていたようです。

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 また、原子力緊急事態宣言とか「防塵マスク」の展示を見るとついコロナ禍の現在と重ね合わせてしまうところもあります。(恥ずかしながら、コロナ以外での「緊急事態宣言」があったことを知らなかったよ)

 また、この伝承館はタッチパネルも多く、タッチパネルに触る際に使うビニール手袋が用意されていたり、あちこちを消毒して回るスタッフの姿も印象的ではありました。

 ただその一方で、放射能の除染という課題を前にしてタッチパネルのビニール手袋やアルコール消毒を気にしているスタッフの様子には、どうにもちぐはぐなものを感じてしまう部分も。うむむ。

 

 個人的にいちばん目を惹かれた展示は、地域の小学校(楢葉北小学校)で合唱の練習に使っていたというCDが展示されていたこと。Nコンの2009年の課題曲でもある「夢の太陽」をダビングしたと思われるCD-Rや、Nコン課題曲のCDが展示してありました。

 皮肉にも、2009年は私にとっても災害のような大きな事件が起こった年で、ふさぎ込んでいるときはNコンの全国大会の演奏を録画したものを部屋で流し続けたりもしていたので「夢の太陽」は私にとっても「回復、励まし」のイメージが強い曲です。

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 また、伝承館の最後のほうの展示パネルには、「子どもに外遊びをさせること」についての意識調査のパネルや、肥満・体力のない子が増えたことについての問題提起のパネルもありました。

 震災から3年目と9年目の調査結果が掲示されていました(なぜこの2種類なんだろう)。詳しいデータまでメモしていなかったのでうろ覚えですが、震災から3年目では外遊びをさせないという親は多かったものの、9年目ではだいぶ減っていました。除染作業が進んだことと放射能汚染への危機感が薄まったこと、きっとどちらもあるんでしょうね。

 ただ違和感があったのは、「子どもを外で遊ばせなくなったことにより、肥満の子・体力のない子が増えた」と言いたげなデータの出し方だったこと。

 そこから「子どもにもっと外遊びをさせよう」という結論を導くことは簡単かもしれませんが、そもそも誰の、何のせいで外遊びを躊躇う人が出てきていると思っているのか……ということを考えると、モヤっとするものがありました。

 

 また、この伝承館では、語り部による講話も直接聴くことができます。

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 ただ、語り部に対し、「国や東電の批判はしないで欲しい」という旨の通達もあったようで、「表現の自由の侵害だ」と批判もされていました。

 実際はどのような感じなんだろう……と思っていたものの、講話については時間が合わず、聴くことはできませんでした。講話を聴きたい場合は時間に気をつけたほうが良いかも。

 

 また、私はあまり意識していませんでしたが、この館内で流されているインタビューの動画については、「話が途中でカットされて繋ぎ合わされているように思えたものも、いくつもあった」という感想も聴きました。

 震災や原発事故の「伝承」を謳っていながらも、都合の悪いことには触れずにいる。そのような印象が拭えない施設ではありました。

 

 伝承館、売店スペースでおみやげも買いました。

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 防災手ぬぐい、クリアファイル、そして双葉郡ゆるキャラのキーホルダーのガチャポンをしました。こういうの好き。

 そんな、伝承館訪問記でした。続きはまた次回。

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