冬から春、そして初夏にかけてはそれぞれ新しい分野のものをいろいろ学び始めたということもあり、本の購入量は激増しました。
今期は、小説や漫画や詩集などのフィクションよりも、ビジネス書や実用書や学術書やドキュメンタリーなどの、広義の「ノンフィクション寄り」のほうをたくさん読んでいたということもあり、順位付けにちょっと苦戦しました。
前回の記事からはすこしあいてしまいましたが、「ノンフィクション編」も発表していきたいと思います!
15位 無理しない働き方
じぶんの働き方や生き方について見直したいと思っていた矢先に書店で見つけ、コンセプトが気になっていたので購入。
仕事の職種について「営業系」「事務系」「作業系」の3種類に分けて説明しているのが特に良いと思いました。それぞれに想定される働きづらさや上司への伝え方など丁寧に書かれており、発達障害ではなくても、働きづらさを抱える人にとって参考になりそうだと感じました。
14位 誰かに教えたくなる道路のはなし
電子書籍セールで気になり購入した1冊。車は運転しないので、道路をそんなに意識したことはありませんでしたが、元転勤族で地理学専攻出身者としてはそれでも充分楽しめました。道路の素材などの技術的な話から文化や歴史の話まで網羅されており、ひととの話のネタになりそうな内容もたくさん。
長野県の生まれで塩尻にも何回か訪れていた私としては、塩のエピソードが特に印象的。また、樹木にも興味があるので、並木のくだりも面白く読めました。海ほたるや熊野古道にも行ってみたい気持ちが高まります。
この本を読了したのは今年の1月でしたが、私はこの夏から土木関係の仕事に関わっているので、道路工事や地下の共同溝についてのくだりも、今読み返してみるととても興味深いです。解像度が上がった状態で読み返すと、気になる点も変わってきますね。
13位 サクッとわかる ビジネス教養 行動経済学
書店で見かけ、立ち読みしたら面白かったので購入。カラーイラストたっぷりでとてもスラスラ読めます。
コロナ禍の今、感染症対策やワクチン接種などに関してもさまざまな情報が飛び交い、みなさんそれぞれの判断をして生活しているかと思いますが「人間の心理として起こりがちなこと」を知るのは、マーケティングなどだけでなく、情報リテラシーを高める上でも参考になるのではないかと思います。
分かりやすい内容の本なので、小学生以上のお子さんでも読みやすいかも。
12位 オトナ女子の気くばり帳
「コミュニケーション力を高めたい」と思っていた矢先、書店で見つけて良さそうだったので買った本。ちょっとした言葉遣いから手みやげのワンポイントまで扱われていて、なかなか役立ちそうな1冊。
「これができないとマイナス」ではなく、あくまでも「これができるとプラス」という視点からの内容が多く、押し付けがましさもないため、いわゆる「マナー本」とは違った良さを感じました。
Amazonの上位レビューにもありましたが、発達障害などでコミュニケーションが上手く取れない人にとっても使いやすい本だと思います。コミュニケーション・プロトコルを見直す上で役立ちそう。『発達障害の僕が「食える人」に変わった すごい仕事術』などの本と併せて読んでみてもいいかもしれません。
11位 風俗起業マニュアル
昨年末から、男性向けマッサージ店の受付スタッフとして働き始めた私。非風俗店ではあるものの、色っぽさを売りにしているお店という点では同じなのでとても面白く読めました。女の子との面接のくだりや店舗運営については私が働くお店とも通じる部分があるので「やっぱりそうか」と思ったところも。
男性読者を想定していると思われる記述が多いものの、この著者が経営するチェーンでは女性オーナーの店もあるようです。ぽちゃデリならではの、女の子の自己肯定感についての記述もあったのも良かった。
一方で、女の子の叱り方についてはうーん……と思ってしまったり。コミュニケーションやマネジメントには正解はないし、なかなか難しいなぁ……と感じたりもしました。
キャストのセカンドキャリア支援を行うNPOの著者が書いた『風俗嬢の見えない孤立』という本では、性風俗業は「セーフティネットとは呼べない」と書かれていたものの、こちらでは「セーフティネットになりうる」という主張がなされていたのも印象的です。
10位 世界一やさしい「やりたいこと」の見つけ方
改めて、じぶんの「やりたいこと」について考え直したいと思っていた矢先に書店で見つけて購入。この著者のことは数年前に「ブロガー」として認知していたので、こういった「自己理解」の本を出していることは少々意外にも思えました。
前書きに、アルバイトをすぐ辞めた経験や、ブロガーとして人気になってから「お金を生み出すマシーンとしてキーボードを叩いているのは辛かった」「軽度の鬱状態になっていた」といったエピソードも書かれており、「そうだったのか……」と感じたところも。
自分自身について掘り下げていくワークがたくさん詰まった一冊で、やり通すとなるとすこし体力がいるかも。でも、なかなか楽しい作業ではありました。
「野球が好き」だからといって、スポーツ用品店の販売員の仕事が合うとは限らない。「野球の能力を磨くことが好き」なのか「戦略を考えることが好き」なのか「チームプレイが好き」なのかによっても変わってくる。「好きな分野」だけでなく「どんなところが楽しいのか」もセットで考えてみることも大切、というくだりが個人的にはいちばん印象に残りました。私自身も、歌が好きだからといってカラオケ店のアルバイトをしたときはしんどかったものなぁ……。
ところで私は、今年の3〜5月にはキャリア相談員養成の職業訓練校に通っていて、個人的にも、友人が主催する「やりたいことを見つけるためのワークショップ」などにも参加したのですが、こういった自己分析や職業分析に関するワークをいろいろやってみると、一定の法則が少しずつ見えてくるような気もします。
9位 10代から知っておきたい あなたを閉じ込める「ずるい」言葉
正直、ここまで「期待外れ」だった本は珍しいかもしれない。そんなふうに思ってしまった一冊でした。
周囲の評判がとても良く、著者を招いた読書会も開催されることになり、しかも著者は社会学者としてLGBT関連の本を出しているだけでなく合唱曲の作曲家でもある(どうりで名前を聞いたことがあるわけだ)なんて憧れる経歴の方だなぁ……と思っていたものの、いざ本を読んでみたら、少なくともこの本に関しては私には「合わない」と感じました。
内容がおかしいということではないです。むしろ、「正しすぎる」ことが受け付けられなかった、と感じました。
ただ、だからといって「読む価値のない本」だとは思っていないです。むしろ、この本を読んだ友人知人がどういう感想を持つかはとても気になります。とても意見が分かれそうな本なので、この本をきっかけにいろいろ意見交換をしてみたい感じはします。
なんていうかなぁ。この本、書かれていることはとても「もっとも」ではあるけれど、ただ「正しい」だけで、現実での落としどころを考える上では役に立たないというか、もう一歩踏み込んでほしい、と思ってしまったんですよね。そういう感想を持ってしまったのは、コミュニケーションについての本を同時期に読んでいたことの影響もあるかもしれません。
10代向けには、教育面での理想としてはこれでいいとも思うけれど、これを大人が読むのはなかなかキツい……というのが正直な気持ちです。
たとえば私は、当人不在の場での発言と当人に直接向けられる言葉ではその是非にはグラデーションがあるべきと思う立場なんですが(陰口と、直接相手に悪口を言うことの違い)、その違いも考慮されず「正しさ」ばかり出ていたのも違和感がありました。
この本に出てくる「ずるい言葉」の中には、自分が言われたことのあるものもあったりしますが、じゃあこの本で「ずるい言葉だ」という指摘を読んだところで溜飲が下がるかというとそんなことはなく、他者の過去の言動を現在の立場から批判するのもずるいな……という気持ちに私はなってしまいました。そういう意味でも感情の持って行き場に困る本でもありました。ただ、この本で救われるひとは救われるのかもしれません。
8位 愛と家族を探して
「家族と性愛」を軸に活動する文筆家・佐々木ののかさんの著書。去年発売されてすぐに買っていたものの、連載を中心にまとめた本ということですでに読んでいた内容も多く通読はしていませんでした。
今年2月、この本を読書会で扱うことが決まった際に、最初からじっくり読みました。
この本は、契約結婚、精子バンク、共同保育、児童養護施設などさまざまなカタチの「家族」を取材した本。著者の佐々木さんの「家族、性愛」についての考え方の揺らぎも垣間見れ、とても濃厚な読書体験ができます。刺激と癒やしを感じる一冊でした。
「こういうカタチがあっていいんだ」「この気持ち、私にもあるかもしれない」「なるほど、こういう考え方をする人もいるんだね」と自分自身の中でもさまざまな感情が湧いてきて、世界の広さや自分の度量などいろいろなものを見せつけられてしまう一冊、という側面もあるかもしれません。
特に印象的だったのは、女性ペアで家族として暮らしている人たちの「一緒に暮らす際のルール」について。
「気づいたことがあっても、一日一個までにする」「何かを指摘するときは、心理状態は大丈夫かのワンクッションをとってから伝えるようにしている」というのは、いいなと思いました。そうすると、相手に言いすぎてしまったり、「言ったのに変えてくれない!」という不満も抱きにくいから……だそうです。
このように「異なるバックボーンを持つ相手と暮らす際のコミュニケーション」という面からも、興味深く読めるところもありました。
7位 10%HAPPIER
ひとから貸してもらった本。じぶんの内面の掘り下げ方や自己分析などについて関心が高まっていたタイミングで読みました。
アメリカでキャスターとして活躍していた著者がうつ病になってしまい、試行錯誤の末に「マインドフルネス(瞑想)」と出会い変わっていく姿を描いたノンフィクション。
「瞑想は脳のエクササイズ。暴走する思考を制御するためのもの」というくだりが特に印象に残りました。
普段は翻訳された本は(訳が馴染まないと感じることが多いので)あまり読まないんですが、この本はエッセイとしてとても読みやすかったです。
特に、著者が瞑想に入るシーンは改行も多く、心理描写多めの小説を読んでいるかのような趣きがありました。
この本の(日本語訳の)副題は、”人気ニュースキャスターが 「頭の中のおしゃべり」を黙らせる方法を求めて 精神世界を探求する物語”。
まさに、著者の成長物語としても面白い一冊であり、「頭の中のおしゃべり」に悩まされているひとに、考え方のヒントを教えてくれる一冊でもありました。
6位 在宅ひとり死のススメ
「老後のことなんて、30代の私にはまだまだ縁遠いなぁ。でも、読書会の課題図書になったし読んでみるか」と思って手に取ったら、思いのほか面白かったです。
「自己決定権」についてや、「介護サービス業従事者も、教員と同じように公務員採用すべきでは」という視点には納得。辛口だけど随所で笑えるような描写も多く、楽しく読めました。
読書会では「そもそもお金がなければこの死に方はできないのでは?」という意見もありましたが、お金の専門家の方からすると、お金の問題ではなく人手不足のために、若い世代がこの本で出てくる「死に方」を実現するのは難しいとのこと……。(上野さんの年齢ならギリギリ大丈夫みたいです)
そういった、「未来」を意識させられる本でもありました。
5位 縁のつかみ方
コロナ禍で占いにも興味を持った私。ゲッターズ飯田さんの考え方は割と好きなので著書も読んでみました。
この本は、占い師の人が書いた本といってもスピリチュアルな内容ではなく、人との縁の紡ぎ方、コミュニケーションに関する本でした。
カラーページも多く贅沢さもあり、薄めの本なのでさらりと読めるけれど内容は奥深い。ほどよく抽象的なぶん、ここに書かれている考え方はさまざまなことに応用が効きそう、という印象を持ちました。
芸能界でも活躍する著者ならではの「生き残り方」のエピソードも興味深く読めました。愛されることやコミュニケーションが仕事と直結する人の言葉は重みが違うな、と感じます。
占いに頼りたくなるときって、対人関係がうまくいっていないときが多いと思うので、そういう意味でも、この本のターゲティングは上手いと思いました。
4位 整える習慣
書店で見かけ、この本の発売記念のトークイベントがあること、そしてそのインタビュアーは私の友人、ということで気になり購入しました。ちょうど、職業訓練校でメンタルヘルスについても学んでいたところだったので、その点からも参考になるところが多くありました。
レジリエンス、コーピング、ライフハックの本として良かったです。著者個人の経験談が多いとはいえ、医師が書いたものということもあり説得力も感じます。
「1日を逆算して食事をすること」や「内容で区切る仕事、時間で区切る仕事」という考え方、怒りとの向き合い方、糖質制限ダイエットの悪影響のくだりが特に良かったです。
中には「これ、習慣についての話じゃないな」というものもありましたが(笑)、全部取り入れなくても、念頭に置いておくだけでも生活は変わりそうだな、と思えることがたくさん書いてありました。文庫本でとても読みやすかったです。
3位 疲れない大百科
地元で医療系の仕事をしている女友達が、Facebookでシェアしていたのを見てこの本を知りました。イラストがとにかく可愛い。女性向けの本のようですが、著者は男性ですし、内容も男女問わず実践できるものばかり。
この本は「疲れない生活」について、「眠り方」「食べ方」「生活習慣」「働き方」「ストレス」の5つの観点からのライフハックをまとめた本。絵柄も可愛いし、こういうライフハック本って好きなんだです。特に「食べ方」については知らない内容も多かったので勉強になりました。いくつか実践してみてます。また、漢方やハーブについても言及があり、それらについてももっと詳しく知ってみたくなりました。
同じシリーズで、新型コロナウイルスやおうち時間、マスク生活を意識した内容の『かからない大百科』という本もありましたが、こちらはやや内容が薄めかも。
2位 老後レス社会
読書会の課題図書になったので読んでみました。正直、30代の私にとっては当初はやや興味の薄いテーマだな……と当初は思ったものの、「キャリアや生き方を考えること」という点ではとても私好みの内容でした。
さまざまな高齢者の生き方や不安が垣間見れ、群像劇のような面白さもありました。
「高齢警備員」は、似たような人を近所で見かけるので親近感があるし、「妖精さん」はかつての私のことだ……と思った部分も。
福島や新潟など、地方に移住した人の話も載っていました。知ってる場所の近くのエピソードが出てきたので興味を引いた部分もありました。
「働き方改革ではなく生き方改革を」という意見にも納得。
1位 マイノリティデザイン
「マイノリティ」にも「デザイン」にも興味があるので、書店で見かけたときから気になっていました。友人がSNSで絶賛していたので興味を持ち、読んでみました。
私も著者と同じく広告業界にいたことがあるので、懐かしさと羨ましさを抱えながら読みました。
この本、どのように読めばいいかなかなかつかめない部分もあり、そういう意味では読むのに時間がかかった部分もありました。
まず、著者について「異国の地で育ち、運動音痴で、結婚後に生まれた子どもも障害者。生きづらさを抱えた人生」という捉え方もできるし、「幼少期から海外経験豊富で、音楽や漫画でプロになり、大手広告代理店に就職後は次々と大きな仕事を手掛けていく、リア充なイケてる人生」としても読め、どういう感情を抱けばいいのか分からないような感覚を味わいました。
そんな「才能豊かで海外経験も豊富な、華やかなイケてる広告マン」にも思えてしまう著者には嫉妬してしまいそうにもなりますが、彼はその才能を余すことなく社会へ還元しており、そこは素直に「素敵だ」と思えました。
障害やマイノリティの本、というより「広告業界」の本としてとても面白く、終盤は泣きながら読みました。言葉選びもさすがプロという上手さ。できることなら新卒だったときの私に読ませたい、そんな一冊でした。