これからも君と話をしよう

一度はここから離れたけれど、やっぱりいろんな話がしたい。

長崎同窓会事件(後編)

(※前回の記事はコチラ

帰り道と、同窓会のいろいろな回想

 三次会会場からひとり離れてホテルに戻る道を歩きはじめると、ポツポツと小雨が降り始めた。私は折りたたみ傘を開く。なんだか今夜、私が外に出たタイミングでやたらと雨が降るなぁ。外に出たから雨に気づいただけかもしれないけど。

 

 ────雨女、といえば。

 二次会会場の焼き鳥屋でも、そうだった。

 一番仲が良かったRちゃんは、息子くんを迎えにいくため、一時的に店を抜けた。本当は迎えに行ったあと二次会に戻るつもりのようだったけど、やがて、戻る余裕がなさそうだ、と**ちゃんに電話していたようだった。

 Rちゃんは焼き鳥屋に、カーディガンとポーチを置きっぱなしにしていた。近くの駐車場に車を停めているとのことだったので、そこまで届けに行くことになった。

 **ちゃんが、明るい茶髪を揺らしながら「うづきちゃん、Rちゃんのカーディガンとポーチ、一緒に届けに行こう」と声を掛けてくれた。私がRちゃんと仲良いこと、覚えてくれてたんだなと嬉しくなる。そして外に出たあと、**ちゃんは私の腕に自分の腕を絡めてきた。やんちゃ系な華やかな女子って距離が近いことが多いけど、その距離の近さは嫌いじゃない。女子とこんなスキンシップをしたことはなかったので、ちょっとドキドキした。

「わ、雨降りはじめた!」「急ごっか」などと言葉を交わす。「うづきちゃん、雨女でしょ」と言われた。そうだと思う。たとえば私は転校時期の関係で、長崎の中学と佐賀の中学、どちらでも修学旅行に行ってるんだけど、季節も違うのにどちらも雨だったっけ。

 

 ────そんなことを思い出しながら歩いていると、道の角に猫がいるのが見えたので近づいてみた。

 手を伸ばしても猫は逃げず、触ることができた。耳に切り込みが入っている「さくら猫」だ。この地域でお世話されているんだろう。思えば長崎では猫を見かけることが多い。通っていたバイオリン教室に行く途中には、猫がたくさんいる場所もあったなぁ。

 

 中学の同級生と先生たちと別れたあと、雨の中、傘を差しながら猫をモフモフ……って、なんだか漫画にある「不良が捨て猫を拾う」シーンみたいだな。私は不良じゃないけど、まぁ、ある意味では問題児だったかもな……。

 

 ────不良までいかないけど。やんちゃ系の男子も今回、そういえばなかなかに距離が近かった。

 今回の同窓会の、一次会会場のホテルから二次会会場の焼き鳥屋に移動する際も、貸切バスが使われた。私は早々と後ろのほうの一人席に座っていたら、続々と座席が埋まり、やがて「隣いい? 俺でゴメンね」と言いながら、やんちゃ系の男子が補助席を開いて座ってきた。バスは狭く、私とは膝同士がくっつくカタチとなった。まあ、仕方ない。

 やんちゃ系男子は、スマホ画面をスワイプしながら、いろんな写真を見せてきた。ほかの男子たちも横から「こいつの嫁ってさ、元々は俺の友達で」「結婚式ではこんなことがあって」とか、いろんな話をしてくれた。やがて、やんちゃ系の男子は、女性と写った写真を見せてきた。

男「これ、俺の浮気相手その1」

私「……(おっ、おう)」

男「こっちは、浮気相手その2」

私「……(おっ、おう)」

男「海でさ、あいつら(同級生男子)と裸で撮った写真もあるんだけど、見る?」

私「裸の写真は見ない」

男「下半身はティッシュとラップで隠してるから」

私「(どんな状況だよ)それなら見てもいい」

 膝をくっつけながらそんな写真を見せられているのは、なかなかシュールではあった。私も浮気相手の候補として狙われてるのか? と一瞬思ったものの、その後の言動でも特にそんなことはなさそうだった。まぁ、やんちゃ系の男子たちはみんな顔も整ってるし、美形が多い長崎の人が、都内に住む陰キャの私をわざわざ狙わないだろうな。

 

 ────そんなことを思い出しながら、宿泊先のホテルに戻った。

 

 ホテルの大浴場で脚を伸ばしながら、今回の同窓会のことをずっと考えていた。

 みんなに再会できて嬉しかった。仲良くなれたひとや、謝ってくれたひともいて嬉しかった。

 そして────医者になった、既婚の同級生男子から、胸や下着を触られてしまった。しかも何度も。

 これが、同窓会での結果、か………。

 

 あの頃の「いじめられてた、キモくてダサかった頃」の私からは抜け出せたと思ったのにな………。

 正直、中学時代に私をいじめていたような男子たちからだったらまだ分かるというか、そういうことをしてきてもあまり意外性はない、気もする。されても構わない、という意味ではない。いやまあそもそも、そういう男子たちだったらコソコソ触ろうとはせず、チャラい感じで堂々と誘ってくるかな。

 

 同窓会を主催したりするような、陽キャ・やんちゃ系な人たちは往々にして距離が近かったけど、腕を組んできた**ちゃんや、バスの中で膝をくっつけてきた男子も、ある種の文脈がある中での距離の近さだった。(人によってはそれすら嫌な人もいるかもしれないけど、私はいずれも不快ではなかった)

 

 でも────医者になった××くんがしていた、酔ったフリをして胸や下着を触ってくるのは、それらとは訳が違う。

 話していて仲良くなった上でのスキンシップとか、たとえば、昔付き合っていて懐かしくなって触れてくるような状況とも違う。

 そういうことができてしまうのも、私がナメられているからだろうな。クラスは一度も一緒になったことがないから、××くんが私をどういうふうに見ていたのか分からないけど、私がいじめられていたことくらいは彼の耳にも届いていただろう。「こいつはいじめられてたんだから、このくらいしても大丈夫だろう」と思われていたんだろうか。あるいは、大人しそうに見えたんだろうか。

 黙っていたくはなかった。でも、あの二次会の場で声を上げて、その場で大きな揉め事になってしまうのも嫌だった。

 もし「そのくらいで騒ぐな」と誰かに言われてしまったらと思うと怖かったし、性的なことをその場でみんなに知られるのも恥ずかしかったし、大ごとにしてしまうことで××くんから恨まれたりもしたくなかった。何より「いじめられていた私」には戻りたくなかった

 そして、ここで私が騒いだらきっと同級生たちのあいだでは「同窓会、二次会が大変だったんだよー。医者になった××っていたじゃん。あいつが、うづきちゃんの胸触ってたらしくて、大騒ぎになってさ〜」とか噂されることになる。そうなってしまうのも嫌だ!!

 胸を揉んだことで揉め事……いや、そんなくだらないことを思いついてる場合じゃない。

 取り戻した尊厳を再び剥奪されたような………そんな感じがしてしまった。

 

翌日、そして……

 翌日はさんざんだった。早起きして佐賀県唐津市まで向かい、お盆ということで親族とお寺に行くはずだったが、起きる時間は遅くなるわ、電車を乗り間違えてしまうわで、お寺のお墓参りには間に合わなかった。田舎は電車の本数が少ない。帰りの飛行機の都合もあるためのんびりもしていられず、途中からはタクシーを使った。なかなかに高額な値段がかかってしまった。

 帰りの飛行機に乗る前に、なんとか祖母の家には行くことができ、父と祖母に久しぶりに会うことができた。同窓会どうだった? と訊かれたけど、まさか、セクハラされたなんて言えない。楽しかったよ、と答えるのが精一杯だった。まぁ、楽しかったのは嘘じゃない。疲れを抱えたまま、福岡空港から羽田空港へと飛んだ。

 

 私は8月中旬は前職の有休消化中だったため、無駄に時間があった。気になって、××くんのことをつい調べてしまった。SNSは見当たらなかった。

 彼の名前と「長崎」で検索すると、数年前の病院だよりのpdfがヒットした。「内科の担当医師が交代します」という内容だ。「長崎出身」という経歴のほか、顔写真も載っており、少し髪が明るくて若い××くんの顔写真があった。しかしこれは随分前のものなので、今いる病院とは違う可能性がある。

 内科ね。わかった。××くんの名前と診療科目を入れて検索すると、ある地域のある病院の「医師一覧」のページがヒットした。

 ここか!

 顔写真も載っており、本人なのは間違いなかった。しかも病院のトップページには、内視鏡を持つ××くんの手がクローズアップされた写真が大きく載っていた。よりによってなんでこいつの(のちに私を触ることになる)手の写真なんだよ!

 ついでに病院のGoogleマップも見る。え、このエリアって、友達がおすすめしてた、外観が異国風な超オシャレなアフタヌーンティーのお店がある地域じゃん! っていうか、うちの妹の転勤先候補の町の一つでもあるし。しかもうちの妹も医療関係の仕事だよ! まさか妹が××くんと同じ病院になるなんてことはないよなぁ。まぁ、妹は私よりスレンダーだから狙われないとは思うけど……。

 Googleマップのレビューも見てみる。病院にありがちなことかもしれないけど、評価は低めだ。「若い男の医師が偉そうにしていた」というものもある。ざっと医師一覧を見たところ、若い医師、あんまりいなさそうだったし、これって××くんのことかな。だとしたら、それもなんだか残念だった。

 小・中学時代は関わりがなかったので、特に好きでも嫌いでもない人だったけど、だからといって残念な人にはなっていて欲しくなかった。そもそも、私に興味が湧いたのなら、せっかくなら同窓会の場で普通に友達になりたかった。話したことないからこそ話してみたかった。まぁ、私の身体以外には興味ないのかもしれないけど……。

 ××くんは私の胸やブラホックを計4回触っていたことになる。「××くんは、尻でも脚でもなく、おっぱい派なんだな」というプライベートな嗜好を知ってしまったことの生々しさにも重たい気持ちになった。

 そもそも、私が××くんについて調べていたのは、仕返しのためではない(その気持ちも少しはあるけど)。「どういう理由で私を触ったのか」が気になったから……というのが大きい。

 そもそも、このような性被害は私の中ではかなりイレギュラーなパターンだ。路上や電車で見知らぬ人から痴漢されることとも違うし、デートした相手から不躾に身体を求められることとも違う。中途半端に存在を知っている相手だからこそ、なぜ私だったのか、どうしてこんなことをしたのかが気になってしまった。

「中学時代から気に食わない存在だった」のだろうか。それとも「同窓会で見かけたら、好みの体つきだったので魔が差した」のだろうか。医師の仕事ってストレス大きそうだし、そのストレスからの行動だったのだろうか。

 同窓会は一日だけだから、そこで再会した人から継続して何かをされ続けるということはまずない。私が三次会まで残り続けたのも、「このサンプルを観察できる時間には限りがあるから、限界まで残ってやる」という気持ちもあった。

 加害を肯定するわけではないんだけど、一夜明けたくらいからは、「私をこんな感情にさせた奴は久しぶりだな、面白い」みたいな感情もどこかにあった。

 

 ────ただ、同窓会からしばらくは、私はとにかく食欲がなかった。同窓会に備えてダイエット薬を飲んでいたから、その薬が残っていたのもあるかもしれないけど、それにしても食が細くなっていた。まったく、内科医のくせに食欲無くすようなことするなっつーの(いや、他の職業ならしていいわけでもないんだけど)。

 あと、気を紛らわすために音楽を聴いて過ごすことが多かった。Ado「心という名の不可解」を、特によく聴いたっけ。

 強気な気持ちもあったけれど、やはり疲れやショックがあったようで、数日間は、同窓会幹事の子たちが送ってくれた写真も開くことができなかった。

 

 同窓会の公式LINEを開き、送られてきた集合写真を見てみて、気づいた。

 私、××くんとめちゃくちゃ距離が近い。まるで密着するかのような勢いだ。こんな距離近かったの……。

 しかも、私が××くんの肩に手を乗せてる!?

 ……と一瞬思ったけど、これは××くんの隣で肩を組んでる男子の手だ。でもなんか私が肩に手を置いてるようにも見える。あー。

 しかも、私、女子の中で一番前に出てるし……。

 別に、出しゃばるつもりはなかった。

 小柄だから前のほうに行かなきゃ、って思っただけだったのに。集合写真だから詰めなきゃ、って思っただけだったのに。前にいる男子との距離感もうまく掴めてないんだな。本当にまわり見えてないんだな、私……だからいじめられるんだよ。

 っていうか、男女でこんなに距離が近いの、私と××くんのところくらいじゃないか。もしかしてこの時、私の身体が触れてしまったとかで引き金を引いてしまった可能性もあるな。あー……。

 無駄に自己嫌悪に陥ってしまった。

 

 同窓会の公式LINEを改めて見返していると、同窓会会場行きのバス乗車名簿でも、私の名前の次に××くんの名前があった。なんだか変なところで縁があるんだな……。

 そう考えると、今回の件がより残念に思えた。

 小5から引っ越してきて、3年10ヶ月、長崎で過ごした。クラスは一度も一緒になることはなかったけど、もし神様の裁量が違っていたら、普通にクラスメイトとして話したり、友達になったりしたかもしれない相手だったんだよなぁ。ヤンチャ系な男子たちのような顔整いではないけど、私は、頭のいい人のことは多分それなりに好きなので(?)、発育タイミングによっては、合意の上で身体に触れるのを許した可能性だってあったかもしれない。

 

 ただ、現段階ではもう、残念、悔しい、という気持ちしかない。

 バス停で、ほかの男子が「すごかね。一番出世したんじゃなか!?」とチヤホヤしていたけど、何が「一番出世した」だ。一番転落させてやる!!

 ……なんて強気なことも思ったけど、しばらくは何もできなかった。

 ××くんが現在勤める病院は長崎ではない。地元に悪評を撒いてもただ私の惨めさが広まるだけで、当人にはさほどダメージがない可能性がある。名誉毀損だとトラブりたくもない。彼の勤める病院にこっそりチクるのが一番効果的かもしれない。こういう時の告発のテンプレートってないかな? 探してみたけど、見つからなかったのでなんだかもうめんどくさくなり、しばらくは放っておいた。

 

 ────そんな、しばらくした8月下旬のこと。NHKで、スタートアップ界隈のセクハラの問題が取り上げられていた。各種SNSでも盛り上がっている。

 まぁ、これらについても思い出してしまう酷い出来事はあるのだけど…………それはまた別の機会だ。それよりも直近に体験したセクハラをまずどうにかしなくちゃ、という気持ちが働いた。

 告発のテンプレートなんてないけど、とりあえず自分なりに文章を作ってみよう。

 

 病院のお問合せフォームに、下記のメッセージを送った。

 

初めまして。現在は東京都内で暮らしている、古川と申します。

貴院に勤めている××××さんのことで、お伝えしておきたいことがあり、今回ご連絡いたしました。

私は子どもの頃に長崎に住んでいたことがあり、クラスは一度も一緒になったことはないのですが、××くんと小、中学校の同級生でした。

今年の8月13日、中学の同窓会があったのですが、
その二次会にて、××くんから酔ったフリをして胸を触られることが2回、背後からブラジャーのホックを触られることが2回ありました。

驚いてしまい、その場では声を上げることもできなかったのですが、彼からこのようなことをされてしまい、とてもショックでした。
接点はあまりなかったものの、××くんは昔から成績優秀な印象があり、医師になったのもすごいなと思っていた矢先だったので、こんなことをされたのはとても残念な気持ちになりました。

プライベートでの出来事ですので、貴院にお伝えすることには躊躇いもあったのですが、
親しい仲でもないのに、飲み会での隙を見ては何度も胸や下着を触ってくるというのはさすがに悪質で、「酔っていたから」では済まされないことだと思いました。
このままでは彼はいつか業務の中でも何らかの事件を起こしかねないのでは……という思いから、今回、お伝えさせていただきました。


私としては、悔しい気持ちも強い反面、彼に対して懲戒解雇等の処罰までは積極的には望まない気持ちもあります。
コンプライアンス研修等があったら受けさせてほしい……くらいの気持ちはありますが、この報告を受けてどのように対応するかは、貴院にお任せしたいと思います。

ここまで目を通していただき、ありがとうございました。

 

 いくつか気をつけた点がある。まず、病院は今回は全く関係ないのだから「そちらの病院の医師が酷いことをした」という書き方にはならないようにした

 また、話を大きくしすぎないためにも「懲戒解雇して欲しい」「警察に通報」というようなことは言わないようにしよう、と思った。

 後者に関しては「そんな、遠慮しなくてもいいのに」と思うひともいるかもしれないが、少なくとも私としては、ここで彼を失職させることは本意ではなかった。彼が失業したところで私にメリットはなく恨みを買うだけだし、警察だの懲戒解雇だのとなると、服の繊維の採取だの目撃者だの、大ごとになってしまうのも避けたかった。なんなら××くんから「そんなことはしてない。証拠はあるのか」と言い張られてしまう可能性だってある。触られた服は洗濯してしまったし、触ってた様子を見ていたひとがいたかどうかも分からない。そうなると不利だろうから、要望は最小限にすることにした。

 

 そして────5日ほど経ったあと、病院からメールが来ていた。

「××医師の件、教えていただきありがとうございます。ハラスメントについて厳しく注意指導を行いました。今後とも行動を注意しておきます。本人も反省しています」といったような内容だ。

 どんな返信が来るか怖かったが、本人もやったことは否定していなさそうなのはよかった。とりあえず、私はやるべきことはやったし、病院もやるべきことはやった、と思う。

 

「厳しく注意指導」で認知や行動が変わるものなのかは分からないが、これで××くんも、おかしなことをしたら職場に通報される、ということを身を以て知ることができただろう。

 

 ××くん、運が悪かったし、よりにもよって私にちょっかい出すとか、詰めが甘かったね?

 

 私が、同窓会会場行きのバスを「中央橋」ではなく「長崎駅前」にしていたから、駅前での男子たちの会話から「医者である」ことを把握してしまったわけで。これは本当に偶然だった。「長崎駅前」にしててよかった。(まぁ、もしかしたらバス停の段階で目をつけられたのかもしれないけど)

 そして────クラスが違ったから知らないのも無理ないけど、私がいじめられたり嫌われていたのは、いわゆる「チクり魔」だったり、変に正義感が強くて真っ直ぐだったからというのもあったんだよね。

 これらの匿名ダイアリーの人たちが近いかな。

anond.hatelabo.jp

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 こんな私にとっては、たぶん他のひとよりも、勤務先にチクったりするハードルは低かったのかもしれない。(まぁ、そんな私でも被害から2週間経ってからの報告になってはいるのだけど)

 よりにもよって私を触ってしまったから、通報されてしまいました。

 なんだろう。私としても、こういう通報は通報は後味の良いものではない。それでも黙っているよりは、ずっとスッキリしている。

 こういうところも含めて、この同窓会はなんだか良くも悪くも「私らしい」出来事になったな、と思ってしまった。

 そして────これだけ感情を掻き回されながらも、もう私と××くんが関わる機会なんて人生でほとんどないだろうと考えると、この再会も、同窓会そのものも、なんだかとても皮肉なものに思えてしまった。