2020年上半期はたくさんたくさん本を読みました。小説・漫画・詩集など「フィクション寄り」の本で面白かったものについては先日ブログを書いたので、今回はそれ以外の「ノンフィクション寄り」の書籍について紹介したいと思います。
いつもはだいたい10冊紹介することが多いんですが、今回は20冊紹介しようと思います。順位はあまり厳密ではなく、けっこう適当につけました。ずいぶん前に買って積読していたり、読み途中だったものを読了したものも多数あります。
20位 行動経済学まんが ヘンテコノミクス
この本を知ったのは、2018年のこのツイート。
IKEAの激混みフードコートで、こんな紙をもらった。30分以内に席を空けたらソフトクリームと交換します、という混雑回避策。
— 松岡厚志 / HI MOJIMOJI (@513MHz) 2018年1月7日
あやふやなモラルに訴えるわけでなく、時間超過にペナルティーを与えるわけでもなく。ポジティブな問題解決につなげている。 pic.twitter.com/73FTvwaxR8
IKEAのソフトクリーム券を「ナイスアイデア!」と共鳴された皆さん。行動経済学を分かりやすい漫画で解説しているこの本がオススメです。(回し者じゃないよ)
— 松岡厚志 / HI MOJIMOJI (@513MHz) 2018年1月8日
行動経済学まんが ヘンテコノミクス https://t.co/86yqowhwc5 pic.twitter.com/9YVxQCgw1t
児童書の単行本のような装丁で、絵柄も「ドラえもん」を彷彿とさせる懐かしい感じになっており、面白く読めました。大人から子どもまで楽しめる1冊。
19位 サイゼリヤ おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ
この本を知ったのは、2018年のこのまとめ。
hontoでもAmazonでも品切れしており、横浜みなとみらいの丸善に行って購入した覚えがあります。この本、冗長なエピソードはなく、スッキリしていて読みやすかったです。この本を読んでより一層サイゼリヤが好きになりましたし、店に行ったときも「なるほど、この工夫は面白いな」と思えることが増えました。
18位 「逃げ恥」にみる結婚の経済学
この本もずいぶん前に買ったもの。2017年、本書の発売記念のトークイベントがあったので購入してみました。経済学の観点からも、結婚や性愛、ジェンダーの観点からもなかなか興味深い1冊。事実婚の歴史や、ライフスタイルに応じた税金や年金額の違いなど書かれており、パートナーシップや就業スタイルについて一考させられます。
17位 「おしどり夫婦」ではない鳥たち
この本を知ったのもネットの記事か何かだった気がします。このレーベルの本を読むのは初めて。平易な書き口で面白かったです。
日本人の研究を多く引用しているという点も、個人的には好感度が高いです。学術的なポイントもしっかり押さえられています。鳥の生き方はシンプルなようで、意外といろんな戦略を行って子孫を残していることがわかって面白かったです。鳥は雄雌どちらの寿命が長いかの話は意外でした。
人間の世界の論理の話はあまり持ち込まれず、あくまでも、鳥の特性の話として振り切っているのも良かったです。都会の鳥と田舎の鳥の違いはもっと知ってみたいなと思いました。今後の研究に期待。
16位 「グズ病」が完全に治る本
この本を知ったのは8年くらい前だったような気がします。古本で見つけて購入し長年積読していたものの、ふと思い立って読みました。先延ばし癖を改めるための考え方や、行動のヒントになる内容がたくさん載っています。テクニックやライフハックというより、「考え方」についての本です。
15位 改訂版 著作権とは何か 文化と創造のゆくえ
hontoのセールで安くなっていたので購入。偶然にも、この本の読了後にちょうど、NHK「みんなのうた」で流れている曲がスピッツ「愛のことば」に酷似しているというニュースが話題になっていてタイムリーでした。著作権がどのような経緯を経て成立していったかというエピソードや、シェイクスピアの作品の成立のくだりが印象的でした。
私は日本での現行の著作権制度については少々懐疑的な部分もあるのですが、「著作権」の概念は社会実験のひとつと考えることによって、著作権のあれこれも少し腑に落ちたような気もしました。
14位 加害者家族
これも長い間積読していた本。さまざまな事件の「加害者家族」についてのエピソードが紹介されています。知らない事件もあれば、有名な凶悪事件もありなかなか衝撃的な1冊でした。加害者の家族はそうやって身を潜めていたのか……。
重大事件の際、母親は子どもを最後まで見捨てないケースが多いというのは驚きました。少年犯罪の、子どもが加害者になる特徴やサインについても参考になります。
他校の生徒などお互いをあまり知らない集団のほうが暴行がエスカレートしやすく重大事件になりやすい……という研究には驚きましたが、言われてみれば納得感のある結果だな、とも思いました。
13位 人脈なんてクソだ。 変化の時代の生存戦略
オンライン読書会が行われることをきっかけに読みました。GOの三浦さん、Twitterでよく投稿を見ていて前から気になっていた方でもあったので。
博報堂近くの書店にて購入(三浦さんは博報堂出身ということもあってか、本が目立つ位置に平積みで置いてありました)。
まず5章を読み、それから1章から読み直しました。三浦さんの持つ熱量やアツさが随所から伝わってきます。ポリコレにも配慮しているような記述も多く、それを「面倒なこと」のようには扱わず、肯定的に捉えているのも好感が持てます。働き方についての考え方も共感。
炎上についての考え方は、私とは異なる部分もありつつ、「ある種の思想や一貫性のある主張は議論のきっかけになるけれど、空っぽだとただの炎上になる」という部分は共感しました。私が尊敬する友人とも近い部分を感じ、読みながらとても強く頷きました。
12位 友達の数は何人? ダンバー数とつながりの進化倫理学
これも知ったのは2016〜17年頃のネットの記事だったと思います。Amazonのほしい物リストに入れていたら、友人が買って送ってくれました。コミュニティやパートナーシップ、動物の生存戦略など、「コミュニケーション」にまつわる、20章から成るエッセイ集です。
「生き物の不思議」的な観点からも、人類史や「ヒトの脳の仕組み」や、社会学的なものとしても興味深い1冊。
11位 いちばんやさしい新しいSEOの教本
今年1月に転職した際、SEOについて勉強しようと思い、参考になりそうな本を大型書店に探しに行って購入した1冊。SEOの専門家もおすすめしているだけあり、具体的なシチュエーションや段階ごとに丁寧な説明が書いてあり、勉強になります。
どちらかというと、個人より法人向けの内容になるかなと思います。「ブログで稼ぎたいから、SEOを意識した記事を書けるようになりたい」という方よりも「企業のWebマーケティングの部署配属になったので、SEOについて勉強したい」という方が読むといいのかなと思いました。
スポンサーリンク
10位 図解 ワイン一年生
数年前、書店で見かけて絵柄の可愛さと分かりやすさに惹かれて手に取った1冊。ワインの特徴を擬人化して、ゆるいタッチで漫画チックに描いて解説しています。
ネットスラングなども使われていて、オタク向けっぽい要素もありますが、そうでない人でも楽しめるかと思います。
国や土地ごとのワインの特徴の違いなどは、読んでいてとてもワクワクします。
続編も出ているみたいです。こちらも読んでみようかな。
9位 なんで僕に聞くんだろう。
末期ガンを患っている写真家・幡野広志さんのcakesでの人生相談をまとめた書籍。人生相談本って好きでよく読むんです。倫理的にどうだとか内容の正しさ如何より「その人だからこそ」の要素が強く滲み出ているものが好きで、この本は割と好きなタイプの人生相談本でした。
人生相談は、ちょっと淡々としていたり、突き放しているくらいの距離感の回答が好きです。本人に同化したり寄り添うのではなく、徹底して「他人の立場」から別の目線を提供してくれるスタイルのものが好きです。
幡野さんのこの連載は、文章の運びが結構アクロバティックなところがあるのも面白いなと思いますし、一方で、回答文はひらがな多めで、やや距離がありつつもどこかやわらかな雰囲気を醸し出しているようなところも好きです。随所に挟まれている写真からも、プロの仕事を感じさせられます。
8位 THE MODEL
1月に転職した際、「最近のカスタマーサクセスやインサイドセールスの人はみんなこれを読んでる」と言われてお借りした本。自分でも電子書籍で購入し直しました。
私がこれまで読んできた営業に関する本は、どちらかというと営業の手法やトーク、メンタリティなどについての本が多めでした。
このような、法人営業を論理的に分析した本は初めて読みました。転職するまでは知らなかったような、横文字や英語もたくさん。
私はステージごとのグルーピングがなかなか上手くできず、この本の内容について、自社サービスではどのような位置づけになるかを適切に落とし込むことができていませんでした。このあたり、もうちょっと自分ごととして理解できるようになっておきたかったです。
「戦略を決めて実行スピードを上げること」「スナップショットではなくトレンドを見る」「件数と金額を見る」「仕事はリズムを作ることが大事」などのくだりも参考になりました。
7位 人口と日本経済 長寿、イノベーション、経済成長
数年前に買って積読していた本。タイトル通り、人口と経済成長の関連について、豊富な資料も混じえて丁寧に分析した本です。
人口減少について悲観論も多く見受けられる中、「経済成長の鍵は人口ではない」という主張もあり、やや難しさもあったものの、希望を感じられる1冊でした。一方で、人口減少は楽観視できない旨のことも書かれてはいました。「最適な人口とは、それ以上に人口が増えると平均的な福祉の水準が逆に下がってしまうような人口の水準」という定義づけも印象的でした。
後半、文学作品の引用もいくつもあり、人間の営みの奥行きを感じさせられる部分もありました。
コロナ禍で人が病気になったり、亡くなるニュースを多く目にして落ち込みがちな中、こうした人類史をめぐる本を読むことはなかなか面白い読書体験になった気がします。
6位 超すぐやる! 「仕事の処理速度」を上げる"科学的な"方法
前作の『すぐやる! 「行動力」を高める“科学的な”方法』を2016年頃に読んでおり、それがとても良かったので、その続編であるこちらの本も購入しました。
予定の立て方や意識の巡らせ方、さまざまなライフハックについて、科学的・医学的な見地からわかりやすく書いてあり、安心しながら読むことができます。
忙しい中での効果的な勉強方法についてのくだりや、予定が入ったらそれを遂行するところまでイメージを持っておくこと、ワーキングメモリを鍛えることなどのくだりが特に印象的でした。イラストもシンプルで良い(あえて言うなら、できない人の表象に男性、できる人の表象に女性が多く使われていることが少し気にはなりましたが)。
実際に、普段の生活で取り入れやすい実践事例も多々載っているのも、取り入れるハードルが下がりそうで良かったです。睡眠も改善したいと思えました。
5位 うしろめたさの人類学
2017年に、友人が「今年読んだ中で最も良かった本」と紹介していたので気になっていました。読みかけでしたが、この春に一気に読みました。
コロナ禍の今の時期に読んだのは正解。特に、後半部の「国家」との繋がりについては今だからこそ染みるものもあります。
しっかりとフィールドワークの内容でもあるのに、平易な書き方で卑近な事例も豊富で読みやすい。戸籍や名前のエピソードが特に好きです。
贈与や教育については、思想家の内田樹先生と言ってることが全く同じだ……! と思いましたが、もしかしたら、人類学=レヴィナス、ということで通じる部分があるのかもしれません。
4位 発達障害の僕が「食える人」に変わった すごい仕事術
Twitterで知った借金玉さん。彼の、鋭くも弱者に寄り添う視点を持ったツイートは大好きでよく読んでいました。
随所に出てくる「やっていきましょう」という呼びかけの心強さ。発達障害だけでなく、うつ病や、コミュニケーションが苦手な人にも有用そうなライフハックがたくさん書いてあります。
薬を服用した感想も、個人差はあるとはいえ分かりやすくて良い。「できない人」に対しても強い理解を感じるし、上から目線で寄り添うのではなく、あくまでも「仲間」として隣にいてくれるような感覚があり励まされた一冊でした。
医師である、熊代先生(id:p-shirokuma)の解説も丁寧。このように、プロによるお墨付きがある本は安心できます。
3位 「小児性愛」という病 それは、愛ではない
『男が痴漢になる理由』『万引き依存症』などの著書も有名な、依存症治療に携わっている斉藤さんの著書。今年の春にhontoで電子版が発売されたので早速読んでみました。
この本の電子版が出た時期は、ちょうどネットで、小児型ラブドール規制の是非が取り沙汰されるようになっていたということもあり、興味深く読みました。
胸糞悪く、フラッシュバック注意な内容も多いものの、小児性犯罪について初めて知るデータや事例も多く勉強になります。
小児性愛や児童ポルノに関する研究はまだ十分なデータがないということもあり、量的データに関してはまだ研究は途上なのかなと思いました(研究できるサンプルが少ないくらい、今後事件が起こらなければそれはそれで良いとはいえ)。ただ、質的データの資料として、依存症治療の専門家である著者が書いたこの本は一読の価値はあると思います。やや著者本人の主張が強い部分はありますが、そこを差し引いても本書の資料としての価値は高いかと思われます。
実子への性虐待とは性質が異なり、再犯率も他の性犯罪よりはるかに高く、1人が1,000件以上加害するケースも多数あり、「小児型ラブドールは抑止よりも再発トリガーになりうる」と加害者側が満場一致で言っていた……というくだりも衝撃的でした。また、男児の被害の多さにも驚きました(加害者は必ずしも同性愛者というわけではなく、女児の代替として加害するケースも多いようです)。
どちらかというと私はこれまで、ペドフィリアであったとしてもその性的嗜好・志向そのものまで悪とされるべきではない(あくまでも犯罪行為そのもののみ咎められるべき)という立場ではありましたが、本書を読んでからは、これらの嗜好・志向に肯定的なメッセージを発信することも危ういのかもしれない……と考えるようになりました。
2位 めちゃカワMAX!! 防犯・防災イラストBOOK
近所の書店の児童書コーナーで手に取りました。
こういうレーベルの、占いやおまじない、心理テスト、コミュニケーションの本は私も小学生の頃に読みましたが、近年は幅広い内容の本が出てるんですね。
主人公は、魔法の国から日本にやってきた5年生の女の子。日本は安全な国だと言われているけど、悪い人による事件や災害もあるということを知り、それらにはどう対応すればいいのかを学んでいきます。
イラストも可愛く、クイズやチェックシートもあったりしてとても分かりやすい。小学生女児向けの本ではありますが、それ以外の年齢の方が読んでも役に立つと思います(私も自分用に買いました)。特に、災害での対処法については私も知らなかったことがたくさん。これ、女児向けだけにしておくのは勿体無い。男児向けに書かれたものがあっても良いのではないかと思いました。英語など外国語版があっても良いかもしれません。
おうち時間のあいだに、防犯や防災について学んでみるのも良いのではないでしょうか。
1位 こども六法
ようやくこういう本が出たか。こういうの、小学生の時に読みたかった……!
この本を書店で見かけて知ったときはとても興奮しました。
小学生の頃、友達関係のトラブルを親に相談したとき、法的にはどのような扱いになるのかという話が出てきて感動したのを今でも覚えています。その頃からテレビの法律相談番組も観るようになり、将来は法律を使って人の悩みを解決していく仕事をするのもいいかも……と当時は思いました(結局、法学部に進学するようなことはありませんでしたが。笑)。
この本はまさに、子ども向けに書かれた法律の本。とっても読みやすいし、イラストもちょっぴりシュールで可愛い。法律は全国民に関わってくることなのに、アクセシビリティが良くないことは私もずっと問題視していたので、私も法律の勉強をしていたらこういう仕事がしてみたかったです。
それにしても、著者の経歴がすごい。研究者で写真家で俳優で社長。どれも私も興味のあるお仕事だ……!
……そんなわけで、たくさんの本を読んだ2020年上半期。
これから連休も始まりますが、この夏もたくさんの本が読めたらいいなと思います。
スポンサーリンク
今週のお題「2020年上半期」