これからも君と話をしよう

一度はここから離れたけれど、やっぱりいろんな話がしたい。

この本がすごい!2020年上半期 フィクション編

 2020年、上半期が終わりましたね。いかがでしたか? 私はとにかくいろんなことがありました。あまりにもいろんなことがありすぎました。それだけで1記事以上分のボリュームになってしまうので、この総括もまた改めて行えたらなと思います。

 コロナ禍のStay home期間があったこともあり、今年上半期の読書量は激増しました。こんなにいろいろ読んだの大学生以来かも。いろんなジャンルの本を読んだので、毎回恒例のこのランキングも、今回はジャンルを少し絞って行おうと思います。

 今回は「フィクション編」というくくりで行いたいと思います。

 では、いってみましょう!

 

10位 リケジョ探偵の謎解きラボ

 「化学探偵Mr.キュリー (中公文庫)」シリーズが有名な著者の本。

 同じ作者の本では、今期は「死香探偵」シリーズの2巻と3巻(死香探偵-連なる死たちは狂おしく香る (中公文庫)死香探偵 哀しき死たちは儚く香る (中公文庫))も読み、個人的にはそれらもすごく好みではあるんですが、そちらはすでに数年前にこのブログで紹介していたので、今回はこちらを紹介することにします。

 保険調査員の主人公が、研究者の女性とともに事件を解き明かす連作短編集。この作者の本はミステリや化学の部分もしっかり面白いだけでなく、クールビューティーなリケジョだったり、お金持ちでイケメンな研究者が出てきたりなど、漫画チックな萌え要素も多いので楽しいです。

 また、個人的にも今期は病院に通うことが多かったため、研究者や医療関係者、病院が出てくる物語は楽しく読めました。

 

 この「リケジョ探偵~」も、続編が出ているようなので読んでみようかな。

 

9位 アイのオト

アイのオト (塔21世紀叢書)

アイのオト (塔21世紀叢書)

  • 作者:永田愛
  • 発売日: 2018/12/23
  • メディア: 単行本
 

 緊急事態宣言が解除された初の週末、池袋のジュンク堂に行ったときに短歌集の棚で見つけました。 著者の名前が劇作家の永井愛と名前が似ているな、と思ったのがきっかけで手に取ったら、表紙がピンクにキラキラの箔押し、楽器に猫……と、とってもかわいいデザインで見事に私好み。

 パラッと本をめくったら、オーケストラにまつわる短歌も多いようで、そういうところもかなりツボでした。でも、音楽やオーケストラ以外の歌も多く、「え、そうだったの?」という意外な側面も見えてきて軽く驚きました。……まぁ、意外な側面も何もこの本でしか著者のことを知らないんですが、表紙や最初のほうの短歌からは予想していなかった面がいろいろ見えてきたのは、ひとりの人間を知っていく人間臭い交流にも思えて、その点にも面白さがありました。

 著者の居住地がどこなのか推測しながら読み、少し複雑そうな家庭事情にも思いを馳せました。作品は奇をてらわない親しみやすい言葉遣いで、家族や恋や仕事や音楽、日常を描いたものが多く親近感を持ちました。表紙で靴を脱いでいることの意味も、「そういうことか」と思えました。

 

8位 死んでしまう系のぼくらに

死んでしまう系のぼくらに

死んでしまう系のぼくらに

  • 作者:最果 タヒ
  • 発売日: 2014/08/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

  ずいぶん前に買っていた詩集。薄い本ではあるものの、じっくり読み進めていたので読了が今期になりました。

 短歌や小説はともかく、詩は割と厳しい目で見てしまうため、あまり私好みの詩人っていないんですが、最果タヒさんの作品は好みです。数少ない、私の好きな詩人のひとり。

「〇〇の詩」シリーズが特に好きです。途中から、詩を読みながら「これは何の詩だろう」と予想しながら読むようになってきましたが、私の予想を超えてくるものばかりで、いったいどう生きたらこのまなざしが手に入るんだろう……と思ったり。

 それにしても、短歌集を読むと短歌を書きたくなるし、詩集を読むと詩を書きたくなりますね。この本を読んだあとに1篇、noteに詩を上げました。

 

7位 推しが武道館いってくれたら死ぬ

  私、このブログではあまり漫画は取り上げてないんですが、この作品は今回絶対紹介したいと思っていました。

 今年1月にアニメ化もされ、コミックスも現在6巻まで出ている人気作品なので、ご存じの人も多いでしょう。

 私がこの作品を知ったのは秋葉原ビックカメラ。無料お試し版がネットにあったので読んでみたらいろいろ見事に私に刺さる要素が多く、漫画を一気には読まない私が最新刊まで購入してしまいました。

 この作品、タイトルからはついキモオタとアイドルのご都合主義っぽい恋愛ものを想像しがちですが(笑)、実際は百合作品です。百合になっていることで、ファン心理の生々しさがいい感じに中和されている気がします。

 この作品に出てくるアイドルグループ「Cham Jam」は、岡山のご当地アイドルという設定。私は岡山に住んでいたこともあるので親近感もありますし、岡山時代の友人でアイドル好きな男友達に連れられてアイドルのライブに行ったこともあるので、その点からも親しみを感じた作品です。

 また、私は長崎のご当地アイドル「ミルクセーキ」の音楽プロデューサーの方との交流をきっかけに、そのライブにも行くようになったので、ご当地アイドルの一ファンとしても面白く読めた作品でした。

 そしてこの漫画の作者の平尾アウリ氏は、私の好きな小説家・飯田雪子氏の作品『夏空に、きみと見た夢』の漫画版も手掛けた方だそうで。その点もテンション上がりました。私は漫画版は読んでなかったけれど、これを機に読んでみてもいいかも。 

 ちなみに、Cham Jamの中では、私は眞妃が好きです。アニメや漫画読んだみなさんは、誰が好きですか?

 

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6位 ラストノート きみといた季節

ラストノート―きみといた季節 (ハルキ文庫)

ラストノート―きみといた季節 (ハルキ文庫)

  • 作者:飯田 雪子
  • 発売日: 2009/01/15
  • メディア: 文庫
 

  中学時代からずっと好きな作家さんの本。(先述した夏空に、きみと見た夢 (ヴィレッジブックス)の作者でもありますが、そちらの作品は個人的にそこまで好みではない)

 この本は未読だったので読んでみました。男女2人の両方の視点から物語が進んでいきますが、ベタな恋愛という感じではなく、最後の最後までそれぞれの恋愛展開がどうなるか読めず、楽しめました。

 ご都合主義な感じもなく、すごく自然な展開でやっぱりこの作者は心の機微の描き方が秀逸ですね。さらりと読める作品ではありますが、やや重いエピソードも出てきてそこは少し辛くなったりも。そして、作中に出てくる「文香(ふみこう)」は、私もこの初夏にいただく機会があり、風流だなあと改めて感じました。この作者は「名前」絡みのロマンチックなエピソードが多いことも好きなところのひとつです。

 読書メーターのコメントでは「ドラマのノベライズみたい」という感想もあったけれど、確かにそんな感じもします。

 

5位 フーガはユーガ

フーガはユーガ

フーガはユーガ

 

  一気読みしてしまいました。

 昨年2月に眼科の待合室の雑誌でこの本の書評を読んで気になり、昨年6月に横浜のBUKATSUDOで行われていた古本市で購入。しばらく積読していましたが、今年の春に読みました。

「誕生日に双子が入れ替わる」という漫画的な日常ファンタジー設定と、凄惨な境遇のギャップが切ない。作者はよくこんなに心情がリアルに書けるな。回想で語るスタイルも新鮮です。

 いじめられっ子・ワタボコリのエピソードや、双子を陰ながら支えてくれた「岩窟おばさん」がいい味を出しています。

 伊坂幸太郎作品は割と読んでいますが、この作品は、アヒルと鴨のコインロッカー (創元推理文庫)死神の浮力 (文春文庫)っぽいと思いました。帯に「切ない」とあったので辛い展開も覚悟していたら、そうきたか……という感じ。変にスッキリ終わらせすぎないところも、ほどよく現実味があって良い、という解釈もできるかな。

 伊坂作品らしさが詰まってて爽快感もある作品ではあるものの、虐待やいじめ、性暴力など鬱展開も多いために、人によってはフラッシュバック注意かもしれません。

 

4位 そんなとき隣に詩がいます

そんなとき隣に詩がいます ~鴻上尚史が選ぶ谷川俊太郎の詩~

そんなとき隣に詩がいます ~鴻上尚史が選ぶ谷川俊太郎の詩~

  • 作者:谷川 俊太郎
  • 発売日: 2018/08/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 大好きな詩人の谷川俊太郎氏と、大好きな劇作家の鴻上尚史氏の共著。私にとってはとっても贅沢な一冊でした。

 あぁ、最高に良かった……! 大大大好きなこの二人の共著ということで、じっくり味わうように時間をかけて読みました。

 コロナ禍の、今の時期に読めてよかった本でもあります。家族とかいのちとか国家とか、そういう大仰な抽象的な話も今の時代になら違和感なく溶け込みます。谷川さんはほんとうにいろんな姿を詩の合間から見せてくれるなぁ。

 そして、人生相談じゃない、私の大好きな鴻上節が読めてとてもテンションが上がりました。そうだよ、こういうのがいいんだよ。そして「恋愛王 (角川文庫)」も、大学時代に読んで大好きな本だったから、その本のエピソードが終盤に出てきたときはびっくり……! そうだったのか……!


 また私自身は、歌や詩はよく褒められるものの小説は下手なので、「歌や詩は天性のものだけど、小説や演技は後天的にも磨くことが可能」というニュアンスの文章が出てきたときも、ちょっと嬉しかったです。

 

3位 終末のフール

終末のフール (集英社文庫)

終末のフール (集英社文庫)

 

 私のこのブログでは、同じ著者の本をいくつもランクインさせることはなるべく避けているのですが、この本は紛れもなく「今の時期に読むこと」に意義がある本だったので紹介します。

 世界の滅亡まで残り3年となった時代の、仙台を舞台にした連作短編集。コロナ禍の今読むと、より一層身に染みると思い読み進めました。

 ずいぶん前に最初の2篇だけ読んでいましたが、割と重めの家族の話だったのでそこでちょっとギブアップしていました。でも、中盤以降の作品からどんどん私好みの雰囲気になってきました。

「最初の二週間を生き残れば助かる」などのデマが流れるところや、買いだめに群がる人、テレビ番組によって亡くなった人など出てきて、まさに今の時期に読めて正解でした。中盤からの、立てこもり犯や読書好きな女性やプロボクサーや劇団員や天体オタクなど、個性の強い人が出てきてからは一気に面白い。特に、劇団員の話の終盤がとてもとても私好みでした。

 伏線の回収されない物足りなさと、想像の余地のバランスも良いのではないかと思います。

 

 あ、この作品には本筋と関係のない注意点がひとつあります。これ、2020年現在、スマホKindleアプリでは読めない設定になっているようなのでご注意を。私はKindle端末で読みました。(普段はKindleではなくhonto派なのに、なぜこれに限ってKindleで買っていたんだろうな私……)

 

2位 育休刑事

育休刑事 (幻冬舎単行本)

育休刑事 (幻冬舎単行本)

 

  前から気になっていた作家さん。電子書籍東京創元社セールを機に購入。

 タイトルと表紙の通り、育休中の男性刑事が事件を解決していく連作短編集。赤ちゃんの成長に関わるエピソードも多く、ミステリとしてだけでなく、育児にまつわる話としても面白かったです。

 主人公の息子の蓮くんも、記号としての「赤ちゃん」としてではなく、0歳の一人の人間として描かれているのを感じてその点も新鮮でした。

 あまり書くとネタバレになるけど、この主人公夫婦の設定がなかなかリベラルで、そういうところも私好みではありました。3篇の作品が収録されていますが、最初の2篇が面白かったかな。

 この本は、私がまさに赤ちゃんの頃を過ごした長野に向かう旅行の途中で読みました。良いタイミングで読めたと思います。

 

1位 しびれる短歌

しびれる短歌 (ちくまプリマー新書)

しびれる短歌 (ちくまプリマー新書)

 

 この本、このブログの「フィクション編」で取り上げるか、今後更新予定の「ノンフィクション編」で取り上げるか、どちらで取り上げようか迷いましたがこちらで紹介することに。

 

 短歌の本をあれこれネットで探していたとき、Amazonレビューの評価も高かったので購入。短歌に限らない、広く通用する「文芸批評」の本でした。

 短歌や文学に限らず、表現や芸術全般について興味のある人におすすめです。

 作品をどう読めば良いのか、どのような要素が短歌を短歌たらしめているのか書かれており、この本に書いてある内容を踏まえるだけで自分の作品にも奥行きが増した気がします。

(この春、noteにいくつか自作の「コロナ短歌」を上げていますが、この本を読了した4月以降のほうが個人的にも好みの作品が多いです)

 歌人になるにはどうすればいいかにも具体的に書かれており、なかなか独特な世界なんだなぁ……と思うなど。ともするとやや「古臭さ」を感じさせてしまうものの、そこの良し悪しにはあまり踏み込んでいないのもバランスが良いと思いました。また、電子書籍をめぐる議論については「未来形の読書術 (ちくまプリマー新書)」を思い出します。やっぱりちくまプリマー新書は良書が多い……!

 

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どの本も面白かった!

 

 次回は、読んで良かった実用書やビジネス書などを紹介したいと思います! お楽しみに。

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