これからも君と話をしよう

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この本がすごい!2019年上半期

 ふと気付いたんですが。私、読んだ本の記録をし始めたのは2001年12月からなので、生まれてから読書記録をつけるようになるまでよりも、読んだ本を記録するようになってから現在の年月の方が長いんですよね。月日が流れるのは早い……!

 

 さて、毎半期恒例の「今期読んで良かった本ランキング」。今回も行いたいと思います。

「2019年に発売された本」ではなく、この時期に「私が読んだ本」なので、古い本が入ることもあるかもしれません。

 では、いってみましょう!

 

※本のAmazonリンクは、単行本、文庫本、Kindle版などいろいろなメディア形態がありますが、原則として読んだ形態のものを貼っています。一部例外もあり。

10位 密着 最高裁のしごと

密着 最高裁のしごと――野暮で真摯な事件簿 (岩波新書)

密着 最高裁のしごと――野暮で真摯な事件簿 (岩波新書)

 

  佐世保小6女児同級生殺害事件のルポ『謝るなら、いつでもおいで: 佐世保小六女児同級生殺害事件 (新潮文庫)』が良かったので、著者の他の本も読んでみたいな……と思い購入。

 普段なかなか知ることのない、最高裁の判決が出る経緯などを知ることができて面白かったです。裁判員裁判の量刑の決め方や、裁判員が市民の声を代表することについての是非など、考えさせられました。

 法律上と血縁上の父親が違う子どもの、父子関係についての判決エピソードにも驚きました。また、夫婦別姓訴訟が最高裁に上がった件も興味深く、私自身の、夫婦別姓に対する考え方も少し変わりました(じつは私、もともと夫婦別姓に関してはあまり積極的に賛成する立場ではないです)。

 

9位 百年前の私たち

  文学者の石原千秋先生の書くものは大好きで、一時期よく読んでいました。

 内容的には平成最後の読書をこれで締めたかったのだけど間に合わず、令和初の読了本となりました。前書きからすごく面白くてグイグイ引き込まれたけど、著者のツッコミは主観が強くついていけない部分も多くありました。

 でも、明治〜大正期の日本のジェンダー論が垣間見れたのは面白かったです。現代の価値観からすると古いなぁと思うものもあれば、時代が変わっても人間は変わらないな、と思うところも。

 

8位 顔ニモマケズ

  2年前、トリーチャーコリンズ症候群の石田祐貴さんのインタビュー記事を読んだ直後にこの本の発売を知りました。当時、少し読んだまま放置していたので、今年に入ってから一気読み。

 

 この本は、障害や病気により、特徴的な顔で生きることになった人たちへのインタビュー集。

 全体的に、平易で読みやすい本でした。各章の結びがやや安直な気はしましたし、「感動ポルノ」と評していたレビューがあるのも、まぁ、わかります。

 ですが、平易でストレートな本だからこそ多くの人に読んでもらいやすい側面もあるので、それは必ずしも悪いことでもない気もします。(でも、参考文献は学術寄りな本も多く参考になりそう)

 

 この本でもっとも印象的だったのは、片目のない男性・泉川さんへのインタビュー。(この内容については、後日、別記事としてブログを書くつもりなので今回は割愛します)

 あと、私のかつての同級生と同じ障害の人のインタビューもあり、「あ、あの人の障害はこういうことだったのか」と知ることができたのも有益でした。

 

 見た目問題・ユニークフェイスの本としては、2003年発売の『ジロジロ見ないで―“普通の顔”を喪った9人の物語』を中学時代に立ち読みしたことがあります。セックスについて書いている女性もいてドキドキしたっけ。(この本も一昨年購入し、先日、『顔ニモマケズ』と併せて読みました)

 ちなみに今月は『この顔と生きるということ』という本も発売されるそう。

『ジロジロ見ないで』『顔ニモマケズ』に出ていた方々も何人か再登場しているようで、楽しみです。

 

7位 わたし、定時で帰ります

わたし、定時で帰ります。(新潮文庫)

わたし、定時で帰ります。(新潮文庫)

 

  2019年春ドラマの原作小説。以前も書きましたが、ロケに私の前職の職場が使われたこともあり、ドラマも毎週観ていました。

 その流れで原作の小説にも興味を持ち、読んでみることに。ドラマだと第6話くらいでようやく明かされるエピソードが、小説では最初のほうで出てきたので驚きました。個人的にはドラマのほうが好みでした。ドラマを観ていたからすんなり入り込めたエピソードでも、小説だけだと少し人間関係が理解しづらかったかも。

 この小説には続編『わたし、定時で帰ります。 ハイパー』があるみたいなので、いずれそちらも読んでみようと思っています。

 

6位 連続殺人犯

連続殺人犯 (文春文庫)

連続殺人犯 (文春文庫)

 

  21世紀に起こった、さまざまな「連続殺人」を描いたノンフィクション。北九州連続監禁殺人事件、尼崎連続変死事件、大阪2児虐待死事件など、10件の連続殺人事件について書かれています。ひとつひとつの事件の記述は短く、一気に読んでしまいました。

 大牟田連続4人殺人事件の章を読んだときは、加害者の九州弁から、私が長崎に住んでいた頃に受けたいじめを思い出して少し辛くなったりも。というかこの本、九州の事件が多いなぁ……と思ったらそれもそのはず。著者は西日本を中心に活動するジャーナリストでした。

 尼崎連続変死事件についてはさらに興味がわいたので、同じ著者のルポ『新版 家族喰い 尼崎連続変死事件の真相 (文春文庫)』も読みました。この事件は、北九州連続監禁殺人と比べられることも多いですが、ルポを読む限りだと主犯の動機は大きく異なる印象です。

 尼崎事件の主犯・角田美代子元被告の動機については「血縁にとらわれない家族を作りたかった」という印象も強く、「新しい家族のあり方」について関心のある私にとっては、少なからずショッキングな部分もありました。

 北九州連続監禁殺害事件の犯人たちの、息子さんのインタビュー本『人殺しの息子と呼ばれて (角川書店単行本)』も今年、読みました。こちらも、短いながらも衝撃的な本でした。

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5位 静かに、ねぇ、静かに

静かに、ねぇ、静かに

静かに、ねぇ、静かに

 

  本谷有希子作品は小説はそれほど読んだことはないのだけど、脚本家としては大好き。この本は、「本当の旅」「奥さん、犬は大丈夫だよね?」「でぶのハッピーバースデー」の3作品が収録された短編集。

 帯には「本谷有希子が描くSNS狂騒曲」と書かれていたようですが、私は電子書籍で買い、内容紹介もよく読まないまま読み始めたので、「SNSがテーマの作品群」という印象はあまり受けませんでした。

 私がいちばん好きな作品は「本当の旅」。主人公の痛々しさのある独白が好きで、いくつも付箋をつけました。

こうやって動画をあげてネガティブなことを積極的に共有することで、(中略)居たたまれなさ、恥ずかしさ、屈辱のようなものを、僕らはまるでテレビの中の出来事のように笑うことができる。そして動画にタイトルを付けてしまえば、そこには奇妙な余裕みたいなものが生まれることを僕らはみんな知っているのだ。

 それがこの時代に生まれた僕らの能力なのかな、と思う。(中略)こうやって友人と楽しいことをシェアしたり、嫌なことにウケたりすることで、現実を僕らなりのいい感じに編集していけるのかなぁ。と思う。

 

確かにあと五千円出せば、すんなり飛行機に乗せてもらうことはできる。けれどもそれでは結局、金があるほうが幸せ、という話になってしまう。所有しているものが勝つことになってしまう。僕らは日頃から、どうやってそんな金のサイクルの外側に脱出するかについて、死ぬ程議論し合っているのだ。だからそもそも五千円の価値を信じて疑わない時点で、僕はこの心ない野次を飛ばした人間と理解しあえる気がしない。っていうか、そういう人はたぶん一生お金がないお金がない、とか言って金銭に翻弄されるみじめな人生を送るのだろう。金のサイクルから抜けられないのだろう。可哀想。

 

 ネットのレビューを見てみても、やはりこの作品がいちばん評判がいいみたい。わかります。こういう、若さを捨てきれない大人っているなぁ。「主人公たちが若者じゃなくて中年なのに引いた」という感想もあったけど、むしろ若者だったら凡庸で、中年だからこそいい作品になっていると言えそうです。旅の合間合間で、取り繕っていた希望が剥がれ落ちていく感じもいい。ラストは、ここで終わるのかー、という感じだけど、その無情感がかれらの人生らしいとも言えるのだろうな。

「奥さん、犬は~」も、このあとの展開は阿鼻叫喚しか見えない。「でぶのハッピーバースデー」は、ねちねちした不快感と読みづらさはあるけれど、じつはいちばん希望のある作品にも思える。全体的に後味の悪い短編集だけど、この生々しい、嫌らしい人間くささはさすが本谷有希子作品。

 

4位 夢を見続けておわる人、妥協を余儀なくされる人、「最高の相手」を手に入れる人。

  加古川の結婚相談所による人気ブログ「結婚物語。ブログ」が書籍化されたもの。

 結婚相談所の企業ブログなんですが、あなどることなかれ。アラフォーオタク既婚女性の「仲人T」さんが書く記事は、関西弁で小気味よくグイグイ読ませられます。私も婚活中の友人たちにこのブログを勧めました……!

  婚活をしていない人や既婚者にもファンが多いこのブログ。企業のオウンドメディアとして大成功した例でもあるので、いくつかの記事を読んでおくと、ビジネスに役立つこともあるかもしれません。

 毒親の影響についての記事がバズったことでこのブログが広まったようですが、私は以下の記事も好きです。

ameblo.jp

ameblo.jp

 

3位 世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?

  この本の読書会が2月にあり、それをきっかけに読みました。紙の本と電子書籍を併用して読了。付箋もマーカーもブックマークも、1ページめくるごとに使っていたくらい面白かった……!

 私の最近のやり方は間違ってなかったんだ、と自信を持つことができたし、歴史の話や新興ベンチャーの事例から、ビジネスにおけるアートや美的感覚の重要性を読み解くのは興味深かったです。それにしても著者は、ソクラテスにも千利休にもコンサルティング業界にも詳しいのはすごいな……。

 日本はアート感覚や美学を強みにできる、というのは納得できた一方、美学に振り切りすぎるとポリコレに反するものも出てくるかもな……と思ったりも。日本は容姿差別に鈍感だということと紙一重かもしれないしなぁ、と考えたり。

 私が一時期大好きだった、内田樹先生の考え方とも近いものを感じる部分もありました。

 

 何年か前に買っていて途中まで読んでいた、『アート鑑賞、超入門! 7つの視点 (集英社新書)』という本も併せて読むと理解が深まった気がします。あと、『いちばんやさしい美術鑑賞 (ちくま新書)』という本も、今後読んでみたい本のひとつです。

 

2位 必要な情報を手に入れるプロのコツ

必要な情報を手に入れるプロのコツ (祥伝社黄金文庫)

必要な情報を手に入れるプロのコツ (祥伝社黄金文庫)

 

  2019年初の読了本。前職の仕事(マーケティング系)関連でこの本を知りました。

「あ、この本、今年の1位になるかも」と思ったくらい面白くて参考になった一冊。

 フェイクニュース等が話題になったり、ブログ等で誰でも発信が身近になった昨今、いろんな立場の人におすすめ。ノウハウ本としても使いやすいし、文章も平易で読みやすい。マーケティングやリサーチの仕事の人向けのようですが、学生のレポートや卒論にも役立ちそう。コミュニケーションの本としても秀逸。

 脚注のつけ方が独特で不思議に思っていましたが、最後まで読んでその意図を知り、納得。私も筆者のような仕事をしてみたいな。

 

1位 また、身の下相談にお答えします

また 身の下相談にお答えします (朝日文庫)
 

 とっても面白かった……!

 朝日新聞の人生相談の、上野千鶴子先生の解答をまとめた『身の下相談にお答えします (朝日文庫)』の続編。私は前の本は未読ですが、特に続きものというわけでもないので、どちらから読んでもいいと思います。

 この新聞の連載、一時期よく読んでいました。(私は7年前にツイートがバズったことがありますが、それは、上野千鶴子先生の人生相談の解答についての投稿でした)

 

 仲の良い、文学研究者の友人もこの本を絶賛していたので気になっていました。

 6月、上野千鶴子先生のサイン会を機に購入。

 人生相談本は、(同じく朝日新聞で連載されていた)岡田斗司夫オタクの息子に悩んでます 朝日新聞「悩みのるつぼ」より (幻冬舎新書)』がこれまでダントツで好きだったけど、この、上野先生の本も良著。

「おばちゃん」などのあだ名についての相談には思わず笑っちゃったし、人生や終活の話にはホロリと泣けるものも。レズビアン女性の生き方についても、今までになかった視点を知ることができて新鮮でした。

 また、「この相談はあなたが書いたものだろう。そんなに私が嫌なのか」と誤解されてしまった……など、まったく別の人間関係に影響を与えた回もあったようで、そういった誤読によるコミュニケーションが生まれるところなども含めて、人生というものが凝縮された1冊だと思いました。

 

 上半期は、いい本にいっぱいめぐり逢えて幸せでした!

 下半期も時間を見つけて、いろんな本を読んでいきたいな。

 

 はてなブログ今週のお題「2019年上半期」に乗りそびれてしまった……悔しい><

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