これからも君と話をしよう

一度はここから離れたけれど、やっぱりいろんな話がしたい。

この本がすごい!2016

 今年はじめて読み終えた本は、草野原々『最後にして最初のアイドル』です。(一部界隈で話題になっていたSF小説、ようやく読めました……!)

 

 すこし今さら感がありますが、私がほぼ毎年おこなっている、「昨年、読んで良かった本」のランキングを発表したいと思います!

(「昨年発売された本」ではなく「昨年読了した本」なので、古い本や絶版本が混ざることもあります。悪しからず)

 

10位 ルポ コールセンター

ルポ コールセンター 過剰サービス労働の現場から

ルポ コールセンター 過剰サービス労働の現場から

 

  困ったお客様についての体験談集のような軽い読みものかな、と思って読み始めたらぜんぜん違いました。労働組合や環境改善、地方の工場誘致、コールセンターはマーケティングなど広告代理店に近い部分があることについてなど、ビジネス書に近い部分が多かったです。沖縄の歴史や差別について垣間見れたことも印象的でした。

 

9位 ルポ ゴミ屋敷に棲む人々

  「ゴミ屋敷」「孤立死」のキーワードから、特殊清掃に関する軽い読み物かと思って読み始めたら、こちらもぜんぜん違いました。どちらかというと「セルフネグレクト」に関する本。「本人の権利をどこまで尊重するか」「愚行権」について考えさせられました。

 

8位 母さんごめん、もう無理だ

  知っているひとは知っていると思うのですが、 私は、防犯への興味が転じて、未解決事件や凶悪事件について調べることにじつはけっこう関心があったり。この本のことは朝日新聞のニュースサイトで知って読みました。タイトルは、介護していた母親に手を掛けた加害者のセリフです。

 私と境遇の近そうな人が起こした事件には、思わず涙。彼らと私を分けたものはなんだったのか考えさせられたり、自分や周りの人も一歩間違えれば凶悪犯罪に手を染めてしまう可能性があることに思いを馳せたり、人間について考えさせられた一冊でした。

 

7位 老人喰い

 『最貧困女子』が話題になったルポライターによる著書。この本では、「オレオレ詐欺」の現場についてのルポになっています。

 オレオレ詐欺がニュースになるたび、「騙されるひとはどうして引っかかるんだろう」なんて思っていましたが、巧妙な手口や演出が紹介されていて「これはたしかに無理ないな」と思ったり。オレオレ詐欺を行う組織の研修や人間関係も興味深く、ヤクザものの漫画を読んでいるような感じで読み進められました。また、背景にある若者の貧困問題についても考えさせられた一冊です。高齢者がオレオレ詐欺に騙されないようにするよう呼びかけることよりも、いわゆる世代間格差の解消こそが、オレオレ詐欺の撲滅にも繋がるのではないかと思いました。

 

6位 猫丸先輩の空論

猫丸先輩の空論 (講談社文庫)

猫丸先輩の空論 (講談社文庫)

 

  ミステリー小説「猫丸先輩シリーズ」の5冊目。hontoの電子書籍セールで、講談社のミステリー小説が安くなっていたので購入しました。クリスマスに一気読み。ページがなくなるのが惜しくなったくらいでした。

 猫丸先輩シリーズは久しぶりに読んだのですが、やっぱりこのシリーズ面白いなぁ、と再確認。(連作短編の日常ミステリって好きなんです。特に大学生が出てくるもの)2000年代初期に書かれた作品なので、少しノスタルジックを感じたりもしました。

 

5位 ウェブ社会のゆくえ

ウェブ社会のゆくえ 〈多孔化〉した現実のなかで (NHKブックス)

ウェブ社会のゆくえ 〈多孔化〉した現実のなかで (NHKブックス)

 

 「ポケモンGO」ブームをきっかけに、社会学界隈では話題になった一冊。ほんとうにいまの時期に読めて良かった本でした。スマートフォンSNSをめぐる交友関係や「空間」「共同体」、そして「記憶の継承」などについても触れられています。示唆に富む一冊です。

 作中でも触れられている、ポール・コナトン『社会はいかに記憶するか』は、一昨年、友人たちと読書会も行ったので、その点も個人的には印象的でした。

 また、この『ウェブ社会のゆくえ』の著者の鈴木謙介先生は、このコラムも今年は注目を集めましたね。

blog.szk.cc

 

 4位 可愛いままで年収1000万円

可愛いままで年収1000万円

可愛いままで年収1000万円

 

  Twitterで流れてきて知った本。著者と年齢が近く、私も同じく名古屋に住んでいたことがあるので、すこし親近感を抱きながら読むことができました。

「ガツガツせず、自分らしいままで稼ぐ」という著者のスタイルはまさに私の憧れでもあるところ。それぞれの章の見出しにもハートマークがたくさんあるところが個人的にはお気に入りです。

 

 3位 コンビニ人間

コンビニ人間 (文春e-book)

コンビニ人間 (文春e-book)

 

  これ、もっと話題になっていいのでは。個人的には、この作品が世に出て芥川賞を取ったことと、ドラマにもなった漫画「逃げるは恥だが役に立つ」のブームが同じ2016年に起こったということ、とっても興味深いなと思っています。

    著者の「村田沙耶香」さん。憧れの社会起業家さんと同じ名前(漢字違い)ということで、8年くらい前から気になっていた作家さんでしたが、短編をひとつ読んだだけで本として読了したものはこれまでありませんでした。

  この作品を読む前に、著者のインタビュー記事を読んでいたのですが、そこでもポリアモリー(という表現は使っていなかったけれども)的な関係性のあり方にも肯定的な姿勢を見せていたので、その作者がこの作品を書いたということは「なるほど」という感じがしたりも。

(読書好きな友人のブログで、このインタビューについて触れられていました)

blog.livedoor.jp

 この作品の主人公の恵子はおそらく発達障害なんだろうな、と推測しました。そんな彼女のフィルターを通した世界をこの作品で垣間見ることができたことに、読書のおもしろさを再確認した気もします。

 

 2位 ザ・プラットフォーム

ザ・プラットフォーム:IT企業はなぜ世界を変えるのか?

ザ・プラットフォーム:IT企業はなぜ世界を変えるのか?

 

  この本をどこで知ったのかが珍しく思い出せないのですが、これも私の中では、この年に読めて良かった本のひとつ。AppleGoogleの価値観の違いのくだりや、MySpaceFacebookの明暗を分けたものについても面白かったですが、なかでもGoogleの事例を「ポケモンGO」ブームの年に読めたことはいいタイミングだったと思います。リクルートの仕組みの事例も興味深かったです。

 著者の尾原さんのことも、本の読了後にFacebookをフォローしました。電通デジタルの不祥事や、DeNAのキュレーションメディアでの問題についても、尾原さんの投稿から考えさせられるものは多かったです。

 

1位  日本で働くのは本当に損なのか

  電通過労自殺が話題になっていたときのこと。社会運動や労働問題に関心の強い友人たちとシェアハウスで話し、なにか打開策はないのか、本当に日本の労働環境は良くないのか……と悶々としながら帰路についた夜。そんな日に、家族の本棚を何気なく見ていたら見つけたのがこの本でした。

 著者は、転職マンガ「エンゼルバンク」の主人公のモデルにもなった転職コンサルタント

 この本では、日本の企業と欧米の企業の違いやそれぞれの特色について、Q&A形式で書かれています。

「若者の疲労感やうつ、引きこもりはブラック企業ではなくても増えているのはなぜ?」「なぜ日本では、上司が部下の面倒を見るの?」といった質問と答えから、雇用や働き方をめぐる現状が見えてきます。

 また「ギャップイヤー」という概念の本来の意味を知ることができたのも有益でした。

 

 この本では、「だから日本はダメなんだ。欧米を見習うべき」という欧米礼賛でも「日本は素晴らしい」という日本礼賛でもなく、どちらにも過度に肩入れせず、比較的フラットに両者の特徴を説明しています。

「大学院に入り直さなくても異業種への転職が容易な点は日本型がいいな。でも、日本型みたいに全員が幹部候補である必要はないと思うな」という具合に、自分はどの点は日本型がいいと思うか、どの点は欧米型がいいと思うかを考えてみることも、思考の整理に役に立ちました。

 

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 ……いかがでしたか?

 電子書籍で読んだものはKindle版を、紙の本で読んだものはそちらのほうのリンクを貼らせていただきました。

 気になった本がありましたら、よかったらぜひ、読んでみてくださいね。