これからも君と話をしよう

一度はここから離れたけれど、やっぱりいろんな話がしたい。

旅は終わっても、現実はまだ終わらない(福島旅行1日目夜〜2日目)

 基本的に私はあまり旅行する趣味はなく、するとしても1泊2日程度が多いです。特に、1日目と2日目では回る場所を変えてメリハリをつけることが多いです。

 

 9月末に1泊2日で訪れた福島旅行も例外ではなく、1日目は楢葉町、そして2日目はその北にある富岡町を巡りました。

 

 その前に、1日目の宿について書いておこう。

温泉宿は期待外れか、それとも期待以上か?

 今回泊まったのは、「展望の宿 天神」。「天神岬温泉 しおかぜ荘」という日帰り温泉が併設されています。

竜田駅から徒歩約30分かけて歩きましたが、宿に連絡を入れていたら、車で迎えに来てもらうこともできたかも)

f:id:wuzuki:20201126230532j:plain

竜田駅を出て、温泉宿に向かう途中の道

 

 この宿は、日帰り温泉になっているエリアと、宿泊のチェックインをする際の入口は異なるので注意。そしてチェックインを済ませたあとは、いよいよ楽しみにしていた温泉へ。

 

 宿からは「貴重品は持っていかないようお願いします」と言われますが、コインロッカーに使う100円玉と、温泉から出たあとに何か飲む際に使うお金くらいは持っていきましょう。(私は温泉から出たらコーヒー牛乳を飲むのが習慣ですが、コインロッカー用の100円しか持っていかなかったため、いったん部屋に戻って財布を取ってきてから再度コーヒー牛乳を買いに行く羽目になった)

 

 温泉は、設備も古く「まぁ、こんなものかな」というのが当初の感想。

 正直、期待していたほどではなかったかな……と思いつつ露天風呂エリアに行ってみたら、びっくり!

 夜風が柔らかで気持ちいい。

 木でできた浴槽の入り心地もいい。

 寝そべりながらお湯を楽しめるスペースもある。

 天気はあまり良くなかったので星は見れなかったけれど、夜の海を見渡すことができて、とても神秘的……!

 

 ここのお風呂は露天風呂がメインのようです。何度もお湯に浸かったり夜風を楽しんだり、ゆっくり過ごしました。

 

ひたすら幸せ、お酒と夕飯

 そして温泉から出たあとは友人と合流し、晩ごはんのため食堂へ。

 お刺身も小鍋もデザートも何もかも、ひとくちひとくち、じっくり味わいたい美味しさ。

f:id:wuzuki:20201126231657j:plain

f:id:wuzuki:20201126231708j:plain


 料理はもちろん、日本酒とも合います。飲みきれなかったぶんは部屋に持ち帰り、部屋でも楽しみました。

 

f:id:wuzuki:20201126231732j:plain

 

 翌日の朝食も、ボリューム満点。

f:id:wuzuki:20201126231832j:plain

 

 スポンサーリンク

 

富岡町は「廃炉資料館」へ行こう

 宿から竜田駅までは車で10分ほど。そして電車で揺られること5分、富岡駅に到着。

f:id:wuzuki:20201126233147j:plain

よく見るとプレートが古い

 この駅も広野駅と同じく、今年、運転再開したばかり。

 歩いて、この日の第一の目的地である「東京電力廃炉資料館」に向かいます。

f:id:wuzuki:20201128232200j:plain

曇り空の中を歩いていきます

 

f:id:wuzuki:20201128232218j:plain

なんだか可愛い屋根が見えてきた

f:id:wuzuki:20201128232457j:plain

廃炉資料館に到着!

 可愛い三角屋根の建物が廃炉資料館でした。どうしてこんな形をしているのかというと、アインシュタインキュリー夫人エジソンの生家がモデルになっているそうです。

 

f:id:wuzuki:20201130174323j:plain

廃炉資料館の廊下

 この資料館、表面上は綺麗なものの、トイレなどの設備や建物の作りにちょくちょく古さを感じたので不思議に思ったところ、ここはもともと「エネルギー館」といい、福島第二原発のPR館だったそうです。

(余談ですが、私の祖父は生前、九州電力のPR館の館長を務めたことがあったため、おじいちゃんも昔こういうところで働いていたのかな……と感慨深くなりました)

 

 ここでは、ガイドの方がつきっきりで、各展示の案内をして下さりました。

 

 入館して最初に観た映像では、原発事故について「ご迷惑をお掛けして、本当に申し訳ございません」という謝罪があり、まずそこが強く印象に残りました。

 前日に訪れた「伝承館」は、新しい建物でキレイで、展示されているものも(意図がよくわからないものも含め)バリエーションに富んでおり、良くも悪くも目立つものが多かった、という印象です。

 こちらの「廃炉資料館」は、建物も古く展示もやや地味な印象はあるものの、事故が起こった原因や原発の仕組みについてもたくさんの図表を含めて展示がされており、原発事故への反省」を(伝承館よりは)感じることができました。

 

 作業員が着る防護服の展示もありました。コロナ関係で医療従事者が使っているものと似ているものも多く、類似性を感じると共に「今はコロナのことで世間は手一杯だけど、原発事故のことも、まだ終わってはいないんだよなぁ……」ということを再確認。

 

 また、印象的だったのは原発の近くに桜並木がある映像。

 富岡町は桜まつりなどが有名だそうですね。

 でも、そもそも桜の木も原発も、観光資源がないところに植樹・誘致される性質があるものだという共通点をあとになって知りました。

f:id:wuzuki:20201130174409j:plain

休憩室にも展示があった

f:id:wuzuki:20201130174445j:plain

原発放射線関連だけでなく、福島県の各地の特徴の展示もあった

 

まだまだ学びは続く、次は「学びの森」へ

 そろそろお昼ごはんにしようか、ということで廃炉資料館を出ます。

f:id:wuzuki:20201130180326j:plain

 途中で見かけた川。川辺の左に見える黒い袋は除染廃棄物か

 

 そして、行く候補にしていたお店のいくつかは、ことごとく定休日ということが発覚!

f:id:wuzuki:20201130175534j:plain

「カフェY」は定休日だった。残念!

 周囲にはコンビニもありません。廃炉資料館近くのスーパーまで戻れば食べ物は買えるものの、とりあえずはもう一つの目的地のほうに先に行こう、ということで、次の目的地である「富岡町文化交流センター 学びの森」へ。

 

f:id:wuzuki:20201130180009j:plain

「学びの森」とあるけど、森の奥深くにあるわけではない

 

f:id:wuzuki:20201130180123j:plain

ここでも放射線量が測定されている

f:id:wuzuki:20201130180504j:plain

右側には地元の小学生が作った展示があり、地域の施設らしさが出ていた

f:id:wuzuki:20201130180852j:plain

 この「学びの森」の中には図書館があります。友人が郷土資料の調べ物をするあいだ、私も色々眺めていました。

 そもそも「図書館」に来るの、だいぶ久しぶりかも。

 

f:id:wuzuki:20201130181047j:plain

この本面白そうだった(ので、後日増補版を購入した)。

f:id:wuzuki:20201130181118j:plain

CDもたくさんある

f:id:wuzuki:20201130181149j:plain

さすが福島県、合唱のCDもたくさんある!

 

「学びの森」での調べ物を終えたあとは、富岡駅に戻る前に、岡内東児童公園に向かうことに。

 ここには、東日本大震災の慰霊碑があります。

f:id:wuzuki:20201130181710j:plain

こちらに手を合わせました

 電車の時間が迫っていたので、早足になりながら富岡駅へ。

 

 少しだけ時間があったので、富岡町の日本酒「萌(きざし)」を駅の売店で探しましたが、今年は売り切れてしまったとのこと。残念。

tomioka-plus.or.jp

 

 富岡町では昼食が食べれず、当初の想定より1本早い電車に乗れたということもあり、「湯本に寄り、温泉に入ってから、いわきに戻ろう」ということになりました。

 

旅の醍醐味、温泉で癒されよう

 ただ、さすがにお腹は空いたので、湯本の前に一度いわきで降り、駅に併設されている商業施設のスーパーでお弁当を買うことに。電車の中で食べます。

f:id:wuzuki:20201130182330j:plain

空腹だったし、とっても美味しい!

 そして揺られること数分、湯本駅に着きました!

f:id:wuzuki:20201130182524j:plain

木のぬくもりを感じる、風情のある駅

古滝屋」という温泉に向かうことに。

 

f:id:wuzuki:20201130182736j:plain

 ここは、いかにも温泉宿という感じの、風情ある建物でした。

 お湯自体も気持ちよかったものの……今回入ったお風呂はあまり広くはなく、お湯の種類も一種類だけ。水風呂もない。

 旅行客なのか地元民なのか、親子連れっぽい人たちが続々入ってきて、なんとなく居心地悪く感じてしまったので、私は早々と出てしまいました。

f:id:wuzuki:20201130183621j:plain

お風呂のあとはコーヒー牛乳

 ただ、ここは売店に本や雑貨がたくさん置いてあるため、眺めていて退屈しませんでした。

 

f:id:wuzuki:20201130183750j:plain

サブカル系の書店みたい

 そして友人と合流したあとは、いわきまで戻ることに。

f:id:wuzuki:20201130183939j:plain

 

再びいわきへ、迫り来る夜と旅の終わりへ

f:id:wuzuki:20201130184038j:plain

 いわきに戻ったときには、空はもう夕暮れを通り越し、夜に近づいていました。

 

 友人は、駅近くにある書店で買いたい本があるということだったので、私も同行することに。

 地元の書店でしか買えない、文学の同人誌があるのだそうです。

 

f:id:wuzuki:20201130184940j:plain

ローカルな書店っていいよね

 この「ヤマニ書房」は、いわきにいくつか店舗のある本屋さんとのこと。

(そしてこのブログを書くために初めてヤマニ書房のホームページを見てみたけど、なかなか懐かしい感じがしますね……)

 

 友人が本を買い終えたので、今度は私がどこかでお土産を買いたいな、と思ったものの……このあたり、お土産を売ってるお店があまりない!

 駅に併設されている商業施設「LATOV(ラトブ)」の食品売り場では、私好みなお土産はありませんでした。

 あとはどこだろう、近くのビジホやコンビニを見てみようかな……と思っていたところ、友人が「10分くらい歩いたところに、イトーヨーカドーがあるよ」と教えてくれました。まだ帰りの高速バスには時間があったので、イトーヨーカドーに向かうことに。

f:id:wuzuki:20201130185955j:plain

到着!

 最初は食品売り場でお土産を探してしまったものの、そこではなく、サービスカウンターがある場所でお土産を買うことができました。やったー!

f:id:wuzuki:20201130190651j:plain

 コロナもあり、友人と会えるかどうかも分からなかったため、配る用のお土産は最小限に留めました。

 ままどおる好きなんですけど、賞味期限が短いので自分で楽しむ分を少しだけ。

 

 さて、お土産も無事に買えたので、バス乗り場に向かいます。

 

 バスの中では、友人が買った同人誌も見せてもらいました。

 読ませてもらったのは、「風舎」という同人誌。

 こちらの号を読みました。

blog.goo.ne.jp

 掲載されていた詩をいくつか読みました。小林光一作品は割と好きな作風かも。天野行雄作品も好きなほうかもしれない。

 また、館山智子作品には福島のイベントや地名が出てきたのところにも目を惹かれました。私、著者の出身地や地元が感じられる作品って、その巧拙に関係なく好きなんですよね。地理学的に興味深いというかなんというか……。

 

 

 そんなことを考えながら、バスに揺られること3時間半。東京駅で私たちは解散となりました。

 1泊2日ながらも、とても濃い旅となりました。

 

 ちなみにこの旅、高速バスは往復6,660円、宿は夕食、朝食付きで8,800円。Go toトラベルなど一切使わずこの価格でした。

 

 スポンサーリンク

 

図説・17都県放射能測定マップ+読み解き集 増補版

図説・17都県放射能測定マップ+読み解き集 増補版

  • 発売日: 2020/04/06
  • メディア: 大型本
 

 

 

被害と加害と、原発と(福島旅行1日目の後半)

 突然ですが、私、合唱曲が大好きなんです。

 今年はコロナで中止になってしまいましたが、小中高の全国規模の合唱コンクールNHK全国学校音楽コンクール」(通称「Nコン」)も大好きで、地方の県大会なども都合がついたら遠征して聴きに行くこともあるくらい。

 

 じつは、今回訪れた福島県「合唱王国」と言われるくらい合唱が盛んなところ。

 特に郡山エリアが強いようです。

 そんな福島では、震災後にこんな合唱曲が作られたりもしていました。

www.youtube.com

 これは、南相馬市の中学校の生徒さんたちが作詞し、先生が作曲したという曲。

 原発事故で避難を余儀なくされ、離ればなれになった友人たちへの想いや、故郷での再会の決意が歌われています。

 もともと大好きな曲だけど、福島旅行で聴くとよりいっそう沁みます……!

 スポンサーリンク

 

 

 

伝承館に入ろう

 さて、双葉駅からレンタル自転車に乗り、今年できたばかりの施設「東日本大震災・原子力災害伝承館」に到着した私たち。

 整理券をもらい、YouTubeで音楽を聴きつつ待っていたら入館の順番が回ってきました。

 

 伝承館のスタッフさんのユニフォームは、緑と白を基調としたアロハシャツのようなもの。

 シャツの裾には「Honeys」のロゴが。

「ハニーズってあの、若い女性御用達のプチプラファッションブランド? なぜ?」と思っていましたが、のちに調べたところ、ハニーズの本社はいわき市なので地元企業によるものだったのですね。勉強になりました。

news.yahoo.co.jp

 

 チケットを買って入館すると、まず、短いビデオの上映を観ることになります。

 そしてビデオを終わったあとに、展示がある部屋に移動。螺旋状になったスロープを上っていきます。

「こういう構造になっているのは、原発のメタファーかも」と友人は言います。

 壁には、原発をめぐる年表が掲示されています。

「営業(えいぎょう)」「経済(けいざい)」など、随分簡単な漢字にまでふりがなが振ってあるのが気になりました。子どもや外国人が来ることも想定しているんでしょうね。

 

  館内は撮影禁止なので写真は撮れませんでしたが、映像コンテンツが多く、これらをじっくり観るとなると数時間かかりそうなボリュームでした。

「コンクリートごと流されたポスト」の展示のような、震災や原発事故に直接関連しそうなものもありましたが、そういうものだけではなく「2010年の時刻表」だとか「震災前後のツイートの増加数」なんてものが貼ってあったりも。

 ちなみに震災前は、ツイートは1日あたり1,800万件だったのが、震災当日は3,300万件、そして震災後の1週間は平均2,500万件のツイートがなされていたようです。

www.biglobe.co.jp

 また、原子力緊急事態宣言とか「防塵マスク」の展示を見るとついコロナ禍の現在と重ね合わせてしまうところもあります。(恥ずかしながら、コロナ以外での「緊急事態宣言」があったことを知らなかったよ)

 また、この伝承館はタッチパネルも多く、タッチパネルに触る際に使うビニール手袋が用意されていたり、あちこちを消毒して回るスタッフの姿も印象的ではありました。

 ただその一方で、放射能の除染という課題を前にしてタッチパネルのビニール手袋やアルコール消毒を気にしているスタッフの様子には、どうにもちぐはぐなものを感じてしまう部分も。うむむ。

 

 個人的にいちばん目を惹かれた展示は、地域の小学校(楢葉北小学校)で合唱の練習に使っていたというCDが展示されていたこと。Nコンの2009年の課題曲でもある「夢の太陽」をダビングしたと思われるCD-Rや、Nコン課題曲のCDが展示してありました。

 皮肉にも、2009年は私にとっても災害のような大きな事件が起こった年で、ふさぎ込んでいるときはNコンの全国大会の演奏を録画したものを部屋で流し続けたりもしていたので「夢の太陽」は私にとっても「回復、励まし」のイメージが強い曲です。

www.youtube.com

 

 また、伝承館の最後のほうの展示パネルには、「子どもに外遊びをさせること」についての意識調査のパネルや、肥満・体力のない子が増えたことについての問題提起のパネルもありました。

 震災から3年目と9年目の調査結果が掲示されていました(なぜこの2種類なんだろう)。詳しいデータまでメモしていなかったのでうろ覚えですが、震災から3年目では外遊びをさせないという親は多かったものの、9年目ではだいぶ減っていました。除染作業が進んだことと放射能汚染への危機感が薄まったこと、きっとどちらもあるんでしょうね。

 ただ違和感があったのは、「子どもを外で遊ばせなくなったことにより、肥満の子・体力のない子が増えた」と言いたげなデータの出し方だったこと。

 そこから「子どもにもっと外遊びをさせよう」という結論を導くことは簡単かもしれませんが、そもそも誰の、何のせいで外遊びを躊躇う人が出てきていると思っているのか……ということを考えると、モヤっとするものがありました。

 

 また、この伝承館では、語り部による講話も直接聴くことができます。

www.asahi.com

 ただ、語り部に対し、「国や東電の批判はしないで欲しい」という旨の通達もあったようで、「表現の自由の侵害だ」と批判もされていました。

 実際はどのような感じなんだろう……と思っていたものの、講話については時間が合わず、聴くことはできませんでした。講話を聴きたい場合は時間に気をつけたほうが良いかも。

 

 また、私はあまり意識していませんでしたが、この館内で流されているインタビューの動画については、「話が途中でカットされて繋ぎ合わされているように思えたものも、いくつもあった」という感想も聴きました。

 震災や原発事故の「伝承」を謳っていながらも、都合の悪いことには触れずにいる。そのような印象が拭えない施設ではありました。

 

 伝承館、売店スペースでおみやげも買いました。

f:id:wuzuki:20201031145100j:plain

f:id:wuzuki:20201031145115j:plain

 防災手ぬぐい、クリアファイル、そして双葉郡ゆるキャラのキーホルダーのガチャポンをしました。こういうの好き。

 そんな、伝承館訪問記でした。続きはまた次回。

 スポンサーリンク

 

 

文学と政治の旅、私たちは福島へと向かう(1日目の前半)

 新型コロナウイルスが話題のここ半年だけど、その影に隠れて忘れられがちなものもたくさんあるなぁ……。

 そんなことを考えた、1泊2日でした。

 

 9月26日(土)〜9月27日(日)にかけて、福島県浜通りエリアに行ってきました!

 一緒に行ったのは文学研究者の友人。というか彼が本業の調査も兼ねて福島県に行くことになり、そのタイミングで私にも声を掛けてくれたので一緒に行く運びとなりました。

旅は序章から面白い、東京駅〜いわき駅

 26日朝8時、東京駅から高速バスに乗ります。

f:id:wuzuki:20200930210225j:plain

高速バス乗り場にも消毒スプレーがあって驚く

 そしてバスに揺られること3時間、いわき駅に到着!

「わぁ、地方都市だー! 東横インがある!」とかはしゃいでいたら、そこにテンション上がるのかと友人から突っ込みが。

 電車に乗り換えるまで1時間ほどあるので、そのあいだにお昼を食べることにしました。

 駅に併設されているお土産屋&食事処は、なんとビルごと閉店していた!ので、隣の駅ビルへ。

f:id:wuzuki:20200930210459j:plain

f:id:wuzuki:20200930210339j:plain

f:id:wuzuki:20200930210542j:plain
 友人はかんぱち刺身定食、私はかつおズケ丼を食べます。
 
 とろけるくらい美味しい……!

f:id:wuzuki:20200930210622j:plain
 なぜか「初夏限定メニュー」なのに頼めましたけどね。もう9月末なのに!(笑)

 

 スポンサーリンク

 

 

懐かしくて異次元、いわき駅〜双葉駅

 それから駅ビルの中のスーパーに寄り、JR常磐線に1時間ほど乗ります。

f:id:wuzuki:20200930213530j:plain

 車窓を眺めたり、友人とおしゃべりしたり、ポケモンGOをしながら過ごします。

 電車の中から田んぼの見える風景、好きなんですよね。地元の佐賀県を思い出します。「地方都市もいいけど、田んぼが見える景色もふるさとっぽくていい……!」と、ここでも私は大はしゃぎ。

 

 でも、ときどきこういうものが出てきて、3.11の重みを目の当たりにさせられたりもしました。

f:id:wuzuki:20200930214638j:plain

 この黒い袋は、除染廃棄物

 

 そのほか、痩せ細った木がポツンと一本だけ残っているような風景も印象的でした。

f:id:wuzuki:20200930215357j:plain

 木は、塩水を浴びてしまうと細ってしまうんだとか。津波の痕跡を感じました。

 

 少し明るめな話に戻すと、こういうものも見つけました。

f:id:wuzuki:20200930215450j:plain

 広野は法人税ゼロ特区になっている関係で、こういう新興企業が入っているんだとか……。

 

 あと、ポケモンGOも、けっこう発見がありました。

 たとえば富岡駅は、富岡駅の跡地も現在の富岡駅も、両方ともそれぞれ別のポケストップになっていること。

f:id:wuzuki:20201004221002j:plain

 

 一見なんの変哲も無いセブンイレブンポケストップがあったけれど、もうその店舗は存在していないということ。

f:id:wuzuki:20200930213845j:plain

 

 そして、今年になってから営業再開した双葉駅には、まだポケストップができていなかったこと、などなど……。

f:id:wuzuki:20200930214018p:plain

 

駅の名は双葉、自転車飛ばしてあの場所へ

 双葉駅は、今年の3月に営業再開したばかり。リニューアルしたての新しい駅です。

f:id:wuzuki:20200930211532j:plain

f:id:wuzuki:20200930211558j:plain

f:id:wuzuki:20200930211740j:plain

f:id:wuzuki:20200930213127j:plain
 双葉駅にはシェアサイクルがあり、100円玉で自転車が借りられます(使い終わったら100円は返却されます)。

 

 この自転車に乗って、私たちは、オープンしたばかりの施設「東日本大震災・原子力災害伝承館」を目指します。

 自転車に乗るの、どのくらいぶりだろう。実家にあったママチャリに似ていて、まるで高校時代に戻ったような、ちょっぴり懐かしい気分にもなりました。

 自転車気持ちいい……と思ったのも束の間、周りの景色に衝撃を受けました。

f:id:wuzuki:20200930222517j:plain

f:id:wuzuki:20200930222549j:plain

f:id:wuzuki:20200930222640j:plain

f:id:wuzuki:20200930222710j:plain

 この時計は現在時刻を指している訳ではないです。地震が起こった時間でもないし、原発事故の時間とも違う。なぜこの時間で止まっているのだろう。


f:id:wuzuki:20200930222847j:plain

 こういう、放射線量を計測している機械も、まちのあちこちにあります。

 

f:id:wuzuki:20200930223049j:plain

f:id:wuzuki:20200930223119j:plain

f:id:wuzuki:20200930223150j:plain

f:id:wuzuki:20200930223223j:plain

 

 まだ再生していない、壊れたままの街並み。車はときどき通るけれど、歩いてる人はだれ一人いないまち。なんだか現実感がありませんでした。

 そういえばこの日は、菅義偉総理が福島県を訪問されていた日でもあります。私たちと割と近いタイミングで伝承館を訪れている模様。

www.kantei.go.jp

 

「総理大臣が訪問した施設を目指し、大災害で壊れたまちの中を震災文学の研究者と政治家の娘が自転車で駆け抜ける」ってまるでアニメーション映画のワンシーンみたいだなぁ……少年少女なら画になりそうだけど私たちは29と31だ、なんてことを考えたりしているうちに伝承館に着きました。だいたい10分ちょっとで着きます。

 

f:id:wuzuki:20200930224321j:plain

 菅総理はもう去った後のようでしたが、並んでいる人の多さに驚きました!

 

f:id:wuzuki:20200930224522j:plain

 整理券ももらいましたよ。

 入館時間まで時間があったので、少し周辺を散策しました。

f:id:wuzuki:20200930224638j:plain

 木の右に見える、小型犬みたいなもの。何だろう、犬かな? と思いましたが、どうやら芝の手入れをするロボットのようでした。

 

f:id:wuzuki:20200930224838j:plain

 あと、小さなカエルがいました。かわいい🐸

 

 そんなことをしているうちに入館時間が近づいてきたので、館内へ。

 

 

 さて、伝承館の中にはどのようなものがあったのか。どういう感想を抱いたのか。それらについては、また次回。

 

 スポンサーリンク

 

 

君の名は。

君の名は。

  • 発売日: 2017/07/26
  • メディア: Prime Video
 

 

iPhone6sのバッテリーを自分で交換してみたら、一度失敗した

 数ヶ月前だったと思います。Facebookで友人のどなたかが、iPhoneの電池パック交換を自分で行ったことについて書いていました。

「自分でできるものなんだ、私もやってみたいな……!」と思い、私も挑戦してみることに。

 

 私が今持ってるiPhone6s、中古で買ったのでバッテリーの持ちがとても悪く、屋外ではモバイルバッテリーなしでは使い物にならないレベルで、すぐに電池が減っていました。

 まぁ、このiPhone電子書籍や音楽を楽しむためのサブ端末として使っており、普段使い用のスマホは別に持っていますし、コロナの影響で外出が減ってからは電池の減りが早くてもあまり困らないんですが、こういうときでないとなかなか挑戦しないよなぁ……と思ってやってみることにしました。

 

 自分での交換方法をざっと調べてみたところ、「市販のキットをAmazonで購入し、YouTubeに上がってる解説動画を観ながら行う」というやり方で行っている方が多いようです。私もAmazonで買ってみました。

 

 Amazonで交換用キットを買ったら不足している部品があったため、返品交換を申し出たり新しいものを送ってもらったりしたところ、思ったよりもやってみるのが遅くなってしまいました。

 スポンサーリンク

 

 

 私が買ってみたのは、この商品。

 

 この方の動画を参考にしました。

www.youtube.com

 

 文字での説明が読みたいときは、こちらのブログも参考にしました。

sim-chao.com

 

 この動画やブログ記事で言われていることがだいたい全てで、私が改めて解説を書く必要はないのですが、せっかく初めて自力で交換を試したので、私ならではの視点としていくつかの注意点と感想でも書いておこうと思います。

f:id:wuzuki:20200831204443j:plain

ネジを無くさないようにしよう

 iPhoneに使われているネジ、かなり小さい!

 そして、部分ごとに使われているネジの形が微妙に異なります。

 私は横着して、ハンカチを敷いた上に並べながら分解していましたがあまりおすすめしません。上記で紹介した動画やブログの方は、トレイに入れたり両面テープの上に載せたりしていましたが、そのように、どの部分のネジか分かるようにしたほうがいいです。

 小さいお子様やペットがいる方は、かれらとは別の部屋で作業をしたほうが良いと思います。

f:id:wuzuki:20200831204419j:plain

f:id:wuzuki:20200831205824j:plain

両面テープを抜き取る際は慎重に

 両面テープといえば。iPhoneのバッテリーって、粘着力の強い両面テープで貼り付けられているんですよね。これをピンセットでくるくる巻き取って剥いでいく工程がありますが、ここも気をつけたほうが良いです。

 ドライヤーであっためてから剥がしていきますが、ここは結構じっくり行ったほうが良い工程です。ちょっと温めたくらいでは剥がれにくいので、温風をこまめに繰り返して、ゆっくりじっくり、テープを巻き取っていきましょう。途中でテープがちぎれると結構めんどくさいです。バッテリーを折り曲げながらテープを剥いでいくことになるので……。

 ただ、テープを慎重に剥いでいく工程も、コツを掴んでいくとなかなか面白い作業でした。

f:id:wuzuki:20200831204557j:plain

これは、新たなバッテリーに両面テープを貼り付けたときの写真

電源がつかなくなっても、慌てずに

 バッテリーを交換して、ネジも締め直してさあ再起動!

 

……あれっ、電源がつかない。それどころか端末がなんだか熱い……!

 

 もしかして壊してしまったかも、修理代いくらするのかな……と一瞬焦り落ち込んだものの、とりあえずもう一度やり直してみよう、と思い、もう一度慎重にネジを外しました。

 すると、ネジを間違えてきっちり噛み合っていないまま締めていた部分があったことに気づきました。

 もう一度そこを外し直し、丁寧に締め直した結果、iPhoneは無事に再起動!

 この件に限らず、私は何かの作業の終わりが見えてくると、つい気を抜いてさっさと仕上げたくなる癖があるのですが、今回のケースはその癖が悪く作用してしまったようです……。

 バッテリー交換後、さっさとネジを締め直して生まれ変わったiPhoneを使いたくなってくるけれど、そこはグッと堪えて、じっくり丁寧にネジを締めていくべきでした。

f:id:wuzuki:20200831205430j:plain

写真を撮ると面白いかも

 iPhoneの中を分解して見てみる機会って、なかなかないと思います。ブログに載せるつもりだったというのもありましたが、写真を撮ってみたのは正解でした。

 私は普段の生活の中で、こういうメカニックなものを撮る機会はあまりないので、写真の勉強にもなったような気もします(?)。

 これらの写真を撮るにあたっては、久々に単焦点レンズを使いました。

f:id:wuzuki:20200831205702j:plain

f:id:wuzuki:20200831205728j:plain


 なかなか終わりが見えないコロナ禍ではありますが、「普段できないこと」をやってみるいい機会にもなるのかなと思います。

 iPhoneのバッテリー交換、家で手軽にできる、なかなか面白い体験でした。

 

 あ、交換したあとの古いバッテリーは、自治体の指定に従って処分してくださいね。

 私は、ビックカメラの中にある、バッテリー回収ボックスに持って行きました。

 

 スポンサーリンク

 

 

この本がすごい!2020年上半期 ノンフィクション編

 2020年上半期はたくさんたくさん本を読みました。小説・漫画・詩集など「フィクション寄り」の本で面白かったものについては先日ブログを書いたので、今回はそれ以外の「ノンフィクション寄り」の書籍について紹介したいと思います。

 いつもはだいたい10冊紹介することが多いんですが、今回は20冊紹介しようと思います。順位はあまり厳密ではなく、けっこう適当につけました。ずいぶん前に買って積読していたり、読み途中だったものを読了したものも多数あります。

20位 行動経済学まんが ヘンテコノミクス 

行動経済学まんが ヘンテコノミクス

行動経済学まんが ヘンテコノミクス

 

  この本を知ったのは、2018年のこのツイート。

  児童書の単行本のような装丁で、絵柄も「ドラえもん」を彷彿とさせる懐かしい感じになっており、面白く読めました。大人から子どもまで楽しめる1冊。

 

19位 サイゼリヤ おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ 

  この本を知ったのは、2018年のこのまとめ。

togetter.com

 hontoでもAmazonでも品切れしており、横浜みなとみらいの丸善に行って購入した覚えがあります。この本、冗長なエピソードはなく、スッキリしていて読みやすかったです。この本を読んでより一層サイゼリヤが好きになりましたし、店に行ったときも「なるほど、この工夫は面白いな」と思えることが増えました。

 

18位 「逃げ恥」にみる結婚の経済学

  この本もずいぶん前に買ったもの。2017年、本書の発売記念のトークイベントがあったので購入してみました。経済学の観点からも、結婚や性愛、ジェンダーの観点からもなかなか興味深い1冊。事実婚の歴史や、ライフスタイルに応じた税金や年金額の違いなど書かれており、パートナーシップや就業スタイルについて一考させられます。

 

17位 「おしどり夫婦」ではない鳥たち 

「おしどり夫婦」ではない鳥たち (岩波科学ライブラリー)

「おしどり夫婦」ではない鳥たち (岩波科学ライブラリー)

  • 作者:濱尾 章二
  • 発売日: 2018/08/25
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

  この本を知ったのもネットの記事か何かだった気がします。このレーベルの本を読むのは初めて。平易な書き口で面白かったです。

 日本人の研究を多く引用しているという点も、個人的には好感度が高いです。学術的なポイントもしっかり押さえられています。鳥の生き方はシンプルなようで、意外といろんな戦略を行って子孫を残していることがわかって面白かったです。鳥は雄雌どちらの寿命が長いかの話は意外でした。

 人間の世界の論理の話はあまり持ち込まれず、あくまでも、鳥の特性の話として振り切っているのも良かったです。都会の鳥と田舎の鳥の違いはもっと知ってみたいなと思いました。今後の研究に期待。

 

16位 「グズ病」が完全に治る本 

  この本を知ったのは8年くらい前だったような気がします。古本で見つけて購入し長年積読していたものの、ふと思い立って読みました。先延ばし癖を改めるための考え方や、行動のヒントになる内容がたくさん載っています。テクニックやライフハックというより、「考え方」についての本です。

 

15位 改訂版 著作権とは何か 文化と創造のゆくえ 

  hontoのセールで安くなっていたので購入。偶然にも、この本の読了後にちょうど、NHK「みんなのうた」で流れている曲がスピッツ「愛のことば」に酷似しているというニュースが話題になっていてタイムリーでした。著作権がどのような経緯を経て成立していったかというエピソードや、シェイクスピアの作品の成立のくだりが印象的でした。

 私は日本での現行の著作権制度については少々懐疑的な部分もあるのですが、「著作権」の概念は社会実験のひとつと考えることによって、著作権のあれこれも少し腑に落ちたような気もしました。

 

14位 加害者家族

加害者家族 (幻冬舎新書 す 4-2)

加害者家族 (幻冬舎新書 す 4-2)

  • 作者:鈴木 伸元
  • 発売日: 2010/11/27
  • メディア: 新書
 

  これも長い間積読していた本。さまざまな事件の「加害者家族」についてのエピソードが紹介されています。知らない事件もあれば、有名な凶悪事件もありなかなか衝撃的な1冊でした。加害者の家族はそうやって身を潜めていたのか……。

 重大事件の際、母親は子どもを最後まで見捨てないケースが多いというのは驚きました。少年犯罪の、子どもが加害者になる特徴やサインについても参考になります。

 他校の生徒などお互いをあまり知らない集団のほうが暴行がエスカレートしやすく重大事件になりやすい……という研究には驚きましたが、言われてみれば納得感のある結果だな、とも思いました。

 

13位 人脈なんてクソだ。 変化の時代の生存戦略

  オンライン読書会が行われることをきっかけに読みました。GOの三浦さん、Twitterでよく投稿を見ていて前から気になっていた方でもあったので。

 博報堂近くの書店にて購入(三浦さんは博報堂出身ということもあってか、本が目立つ位置に平積みで置いてありました)。

 まず5章を読み、それから1章から読み直しました。三浦さんの持つ熱量やアツさが随所から伝わってきます。ポリコレにも配慮しているような記述も多く、それを「面倒なこと」のようには扱わず、肯定的に捉えているのも好感が持てます。働き方についての考え方も共感。

 炎上についての考え方は、私とは異なる部分もありつつ、「ある種の思想や一貫性のある主張は議論のきっかけになるけれど、空っぽだとただの炎上になる」という部分は共感しました。私が尊敬する友人とも近い部分を感じ、読みながらとても強く頷きました。

 

12位 友達の数は何人? ダンバー数とつながりの進化倫理学 

  これも知ったのは2016〜17年頃のネットの記事だったと思います。Amazonほしい物リストに入れていたら、友人が買って送ってくれました。コミュニティやパートナーシップ、動物の生存戦略など、「コミュニケーション」にまつわる、20章から成るエッセイ集です。

「生き物の不思議」的な観点からも、人類史や「ヒトの脳の仕組み」や、社会学的なものとしても興味深い1冊。

 

11位 いちばんやさしい新しいSEOの教本

  今年1月に転職した際、SEOについて勉強しようと思い、参考になりそうな本を大型書店に探しに行って購入した1冊。SEOの専門家もおすすめしているだけあり、具体的なシチュエーションや段階ごとに丁寧な説明が書いてあり、勉強になります。

 どちらかというと、個人より法人向けの内容になるかなと思います。「ブログで稼ぎたいから、SEOを意識した記事を書けるようになりたい」という方よりも「企業のWebマーケティングの部署配属になったので、SEOについて勉強したい」という方が読むといいのかなと思いました。

 

 スポンサーリンク

 

10位 図解 ワイン一年生

図解 ワイン一年生

図解 ワイン一年生

 

 数年前、書店で見かけて絵柄の可愛さと分かりやすさに惹かれて手に取った1冊。ワインの特徴を擬人化して、ゆるいタッチで漫画チックに描いて解説しています。

 ネットスラングなども使われていて、オタク向けっぽい要素もありますが、そうでない人でも楽しめるかと思います。

 国や土地ごとのワインの特徴の違いなどは、読んでいてとてもワクワクします。

 続編も出ているみたいです。こちらも読んでみようかな。 

図解 ワイン一年生 2時間目 チーズの授業

図解 ワイン一年生 2時間目 チーズの授業

 

 

9位 なんで僕に聞くんだろう。

なんで僕に聞くんだろう。 (幻冬舎単行本)

なんで僕に聞くんだろう。 (幻冬舎単行本)

 

  末期ガンを患っている写真家・幡野広志さんのcakesでの人生相談をまとめた書籍。人生相談本って好きでよく読むんです。倫理的にどうだとか内容の正しさ如何より「その人だからこそ」の要素が強く滲み出ているものが好きで、この本は割と好きなタイプの人生相談本でした。

 人生相談は、ちょっと淡々としていたり、突き放しているくらいの距離感の回答が好きです。本人に同化したり寄り添うのではなく、徹底して「他人の立場」から別の目線を提供してくれるスタイルのものが好きです。

 幡野さんのこの連載は、文章の運びが結構アクロバティックなところがあるのも面白いなと思いますし、一方で、回答文はひらがな多めで、やや距離がありつつもどこかやわらかな雰囲気を醸し出しているようなところも好きです。随所に挟まれている写真からも、プロの仕事を感じさせられます。

 

 8位 THE MODEL

  1月に転職した際、「最近のカスタマーサクセスやインサイドセールスの人はみんなこれを読んでる」と言われてお借りした本。自分でも電子書籍で購入し直しました。

 私がこれまで読んできた営業に関する本は、どちらかというと営業の手法やトーク、メンタリティなどについての本が多めでした。

 このような、法人営業を論理的に分析した本は初めて読みました。転職するまでは知らなかったような、横文字や英語もたくさん。

 私はステージごとのグルーピングがなかなか上手くできず、この本の内容について、自社サービスではどのような位置づけになるかを適切に落とし込むことができていませんでした。このあたり、もうちょっと自分ごととして理解できるようになっておきたかったです。

「戦略を決めて実行スピードを上げること」「スナップショットではなくトレンドを見る」「件数と金額を見る」「仕事はリズムを作ることが大事」などのくだりも参考になりました。

 

7位 人口と日本経済 長寿、イノベーション、経済成長

  数年前に買って積読していた本。タイトル通り、人口と経済成長の関連について、豊富な資料も混じえて丁寧に分析した本です。

 人口減少について悲観論も多く見受けられる中、「経済成長の鍵は人口ではない」という主張もあり、やや難しさもあったものの、希望を感じられる1冊でした。一方で、人口減少は楽観視できない旨のことも書かれてはいました。「最適な人口とは、それ以上に人口が増えると平均的な福祉の水準が逆に下がってしまうような人口の水準」という定義づけも印象的でした。

 後半、文学作品の引用もいくつもあり、人間の営みの奥行きを感じさせられる部分もありました。

 コロナ禍で人が病気になったり、亡くなるニュースを多く目にして落ち込みがちな中、こうした人類史をめぐる本を読むことはなかなか面白い読書体験になった気がします。

 

6位 超すぐやる! 「仕事の処理速度」を上げる"科学的な"方法

 前作の『すぐやる! 「行動力」を高める“科学的な”方法』を2016年頃に読んでおり、それがとても良かったので、その続編であるこちらの本も購入しました。

 予定の立て方や意識の巡らせ方、さまざまなライフハックについて、科学的・医学的な見地からわかりやすく書いてあり、安心しながら読むことができます。

 忙しい中での効果的な勉強方法についてのくだりや、予定が入ったらそれを遂行するところまでイメージを持っておくこと、ワーキングメモリを鍛えることなどのくだりが特に印象的でした。イラストもシンプルで良い(あえて言うなら、できない人の表象に男性、できる人の表象に女性が多く使われていることが少し気にはなりましたが)。

 実際に、普段の生活で取り入れやすい実践事例も多々載っているのも、取り入れるハードルが下がりそうで良かったです。睡眠も改善したいと思えました。

 

5位 うしろめたさの人類学 

うしろめたさの人類学

うしろめたさの人類学

  • 作者:松村圭一郎
  • 発売日: 2017/09/16
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

  2017年に、友人が「今年読んだ中で最も良かった本」と紹介していたので気になっていました。読みかけでしたが、この春に一気に読みました。

 コロナ禍の今の時期に読んだのは正解。特に、後半部の「国家」との繋がりについては今だからこそ染みるものもあります。

 しっかりとフィールドワークの内容でもあるのに、平易な書き方で卑近な事例も豊富で読みやすい。戸籍や名前のエピソードが特に好きです。

 贈与や教育については、思想家の内田樹先生と言ってることが全く同じだ……! と思いましたが、もしかしたら、人類学=レヴィナス、ということで通じる部分があるのかもしれません。

 

4位 発達障害の僕が「食える人」に変わった すごい仕事術 

  Twitterで知った借金玉さん。彼の、鋭くも弱者に寄り添う視点を持ったツイートは大好きでよく読んでいました。

 随所に出てくる「やっていきましょう」という呼びかけの心強さ。発達障害だけでなく、うつ病や、コミュニケーションが苦手な人にも有用そうライフハックがたくさん書いてあります。

 薬を服用した感想も、個人差はあるとはいえ分かりやすくて良い。「できない人」に対しても強い理解を感じるし、上から目線で寄り添うのではなく、あくまでも「仲間」として隣にいてくれるような感覚があり励まされた一冊でした。

 医師である、熊代先生(id:p-shirokuma)の解説も丁寧。このように、プロによるお墨付きがある本は安心できます。

 

3位 「小児性愛」という病 それは、愛ではない 

「小児性愛」という病  ―それは愛ではない

「小児性愛」という病 ―それは愛ではない

  • 作者:斉藤 章佳
  • 発売日: 2019/11/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 『男が痴漢になる理由』『万引き依存症』などの著書も有名な、依存症治療に携わっている斉藤さんの著書。今年の春にhontoで電子版が発売されたので早速読んでみました。

 この本の電子版が出た時期は、ちょうどネットで、小児型ラブドール規制の是非が取り沙汰されるようになっていたということもあり、興味深く読みました。

 胸糞悪く、フラッシュバック注意な内容も多いものの、小児性犯罪について初めて知るデータや事例も多く勉強になります。

 小児性愛児童ポルノに関する研究はまだ十分なデータがないということもあり、量的データに関してはまだ研究は途上なのかなと思いました(研究できるサンプルが少ないくらい、今後事件が起こらなければそれはそれで良いとはいえ)。ただ、質的データの資料として、依存症治療の専門家である著者が書いたこの本は一読の価値はあると思います。やや著者本人の主張が強い部分はありますが、そこを差し引いても本書の資料としての価値は高いかと思われます。

 実子への性虐待とは性質が異なり、再犯率も他の性犯罪よりはるかに高く、1人が1,000件以上加害するケースも多数あり、「小児型ラブドールは抑止よりも再発トリガーになりうる」と加害者側が満場一致で言っていた……というくだりも衝撃的でした。また、男児の被害の多さにも驚きました(加害者は必ずしも同性愛者というわけではなく、女児の代替として加害するケースも多いようです)。

 どちらかというと私はこれまで、ペドフィリアであったとしてもその性的嗜好・志向そのものまで悪とされるべきではない(あくまでも犯罪行為そのもののみ咎められるべき)という立場ではありましたが、本書を読んでからは、これらの嗜好・志向に肯定的なメッセージを発信することも危ういのかもしれない……と考えるようになりました。

 

2位 めちゃカワMAX!! 防犯・防災イラストBOOK

めちゃカワMAX!!防犯・防災イラストBOOK

めちゃカワMAX!!防犯・防災イラストBOOK

  • 発売日: 2019/07/22
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

  近所の書店の児童書コーナーで手に取りました。

 こういうレーベルの、占いやおまじない、心理テスト、コミュニケーションの本は私も小学生の頃に読みましたが、近年は幅広い内容の本が出てるんですね。

 主人公は、魔法の国から日本にやってきた5年生の女の子。日本は安全な国だと言われているけど、悪い人による事件や災害もあるということを知り、それらにはどう対応すればいいのかを学んでいきます。

 イラストも可愛く、クイズやチェックシートもあったりしてとても分かりやすい。小学生女児向けの本ではありますが、それ以外の年齢の方が読んでも役に立つと思います(私も自分用に買いました)。特に、災害での対処法については私も知らなかったことがたくさん。これ、女児向けだけにしておくのは勿体無い。男児向けに書かれたものがあっても良いのではないかと思いました。英語など外国語版があっても良いかもしれません。

 おうち時間のあいだに、防犯や防災について学んでみるのも良いのではないでしょうか。

 

1位 こども六法 

こども六法

こども六法

 

 ようやくこういう本が出たか。こういうの、小学生の時に読みたかった……!

 この本を書店で見かけて知ったときはとても興奮しました。

 小学生の頃、友達関係のトラブルを親に相談したとき、法的にはどのような扱いになるのかという話が出てきて感動したのを今でも覚えています。その頃からテレビの法律相談番組も観るようになり、将来は法律を使って人の悩みを解決していく仕事をするのもいいかも……と当時は思いました(結局、法学部に進学するようなことはありませんでしたが。笑)。

 この本はまさに、子ども向けに書かれた法律の本。とっても読みやすいし、イラストもちょっぴりシュールで可愛い。法律は全国民に関わってくることなのに、アクセシビリティが良くないことは私もずっと問題視していたので、私も法律の勉強をしていたらこういう仕事がしてみたかったです。

 それにしても、著者の経歴がすごい。研究者で写真家で俳優で社長。どれも私も興味のあるお仕事だ……!

 

 ……そんなわけで、たくさんの本を読んだ2020年上半期。

 これから連休も始まりますが、この夏もたくさんの本が読めたらいいなと思います。

 

f:id:wuzuki:20200723145504j:plain

 スポンサーリンク

 

今週のお題「2020年上半期」

「空想都市」に行ってきた

 小学生の頃から地図を眺めることが大好きだった私。幼少期に引っ越しを繰り返していたこともあり、地理は自分にとって身近な学問でした。大学も地理学専攻に進学。卒論は「アニメ聖地の観光地化」について書きました。

 卒業してからも、地理や地図に関するいろんな出会いもありました。(というか卒業以降の方が多いかも?)
 2013年には、美大卒の友人をきっかけに、空想地図作家の「地理人」さんを紹介してもらいました。2014年からは「名古屋スリバチ学会」に参加。それ以降も、空想空港の地図を描く人やまち歩きのライターさんなど、さまざまな人たちとの出会いや交流がありました。

 

 そして先週末の7月11日(土)、「空想調査員が見た、空想都市」イベントに行ってきました!

artforthought.jp

 これはどういうものかというと、「空想地図作家」の地理人こと今和泉隆行さんが作成している「中村市(なごむるし)」の地図や、それに関連した製作物の展覧会です(説明が難しい……!)。

 7月1日から開催されていて、7月11日が最終日でした。この日はトークイベントも行われるとのことだったので、道路や都市計画に詳しい友人と一緒に行ってきました!

f:id:wuzuki:20200713222626j:plain

 一見すると、どこにでもありそうな地図と路線図。でもこれ、どっちも現実には存在しないものなんです!

 

f:id:wuzuki:20200714104245j:plain
f:id:wuzuki:20200714104254j:plain
架空の地図

f:id:wuzuki:20200713223039j:plain

架空の路線図

f:id:wuzuki:20200713223330j:plain

架空のトレインチャンネル。アナウンスも流れていました

f:id:wuzuki:20200713224030j:plain

架空の鉄道

f:id:wuzuki:20200713222811j:plain

架空のコンビニやチェーン店
f:id:wuzuki:20200713230036j:plain
f:id:wuzuki:20200713230009j:plain
架空の包装紙

f:id:wuzuki:20200713230026j:plain

架空のゴミ袋、レジ袋
f:id:wuzuki:20200713224257j:plain
f:id:wuzuki:20200713225908j:plain
f:id:wuzuki:20200713225941j:plain
架空の落し物

f:id:wuzuki:20200713225951j:plain

架空の賃貸物件

f:id:wuzuki:20200713230716j:plain

f:id:wuzuki:20200713225931j:plain

架空のチラシ類

  ほかにも、架空の「店内BGM」や、架空のSNS投稿などの展示もありました。どれも作り込みがすごくって、一見、架空のものだとは信じられないくらいリアリティがありました。

 これらのコンテンツは地理人さんのほか、いろいろなデザイナーやクリエイターさんたちが「空想調査員」として制作した作品だそうです。

 子どもの頃から空想地図を作っている地理人さん。地図や街づくりを進めていくにあたり、過去に描いたものと整合性が取れなくなってきた部分は「調査が間違っていたようです。こちらが正しい、最新の情報です」という具合に空想地図を描き換え、アップデートしているとのこと。

 

 この展示はもう終了してしまいましたが、動画もあるようなので、興味がある方・行けなかった方は見てみてください。

 

 

 スポンサーリンク

 

空想都市展の感想

演劇や小説みたい!

 今回、「地図」への関心として観に来た展示でしたが、観ている最中、まるでなにかの小説を読んだり、演劇を観たような没入感がありました。

 架空のチラシや賃貸情報を眺めたり、電車内アナウンスなどを聴いていると、なんだか泣けてくる。誰かの生活の気配を感じる。そこには誰もいないはずなのに。

 

 いないはずの人や場所をこんなにも想起させる芸術作品って、なかなかないのではないでしょうか。こんなにも「行ってみたくなった二次元作品」は初めてかもしれません。
 私もここで中村市の世界の住人になりきって、地図を指差し「私、昔このあたりに住んでたよ」とか思わず言ってしまいそうになりました。言わなかったけど……w
 でも、もし今後同じような展示が行われるなら、「架空の住人」が出てくるような寸劇やショートムービーなどがあっても面白いんじゃないか、とは思いました。

 

ほかに、こんなものも見てみたい

 今回展示してあった架空のSNS投稿は、Facebookを模した画面に3人の大人の生活の記録が書いてありました。
(架空の)公園に行ってきた写真や、(架空の)飲食店に行ってきた写真が載っていて、これはこれで面白かったんですけど、もっと若い世代のSNSや、「爆サイ」のような少し下品なものがあっても面白そうだなと思いました。

 ……そんな感想をお伝えしたところ、架空の風俗店情報サイトを作ろうとしている人はいるとのこと。なかなか面白そうな目のつけどころですね。

 あとは、架空の鉄道のデザインだけでなく、鉄道模型もあったら面白そうですし、ジオラマも見てみたいなと思いました。(ジオラマはリクエストが多いそうです)

 

 まるで世界が反転している

 ほかに面白かったこととしては、今回、「架空のチラシ」類について、みんなが手に取りすぎてヨレヨレになっているのが不思議な感じがしました。

f:id:wuzuki:20200714014423j:plain

 不在票やダイレクトメールやチラシって、普段の生活の中では単なるゴミ、生活のノイズになることが多いものですが、「架空のチラシ」となると「すごいね」と言われながら回覧される……というのが、ちょっと面白い光景だなと思いました。
中村市」の住人の日常ならゴミになっているであろうものが、こちらの世界では「珍しいもの」になる。この「反転」が奇妙な感覚を生み出していて、もしかして異世界転生ってこんな感じ……? なんてことを思ったり。

 

デザインの力は偉大、地名だけだと弱いのかも

 以前もブログに書いたことがありますが、今回特に感じたのは「架空の路線図」は、単体だとやや楽しみにくいな、ということ。

 架空の店のロゴやチラシのデザインは「このお店は、きっとこんな人が利用しているんだろうな」「こういうお店、首都圏よりも郊外に多そうだな」などと想像して楽しめますが、「架空の駅名」だけ並んでいると「楽しむもの」としてはちょっと厳しいな……と思ってしまいました。地図と組み合わせると楽しめるんですが。

 この中村市、あんまり難読地名もないんですよね。

「どうしてこんな地名になったんだろう」と想像を働かせる余地も少ない上、現実と違い、他のメディアによって作られる地名ブランドのイメージなどもないため、駅名単体だと想像を膨らませる手がかりに欠けるというか。

 逆説的に、普段の私たちは、地名にいかにメディアからのイメージを抱いているのかということを痛感させられました。

 

都市地図は人でできている

 ところで、大学の地理学科って、文系扱いか理系扱いかは学校によって異なります。
 私の出身の、立命館大学の地理学専攻は文学部の中にあり、文系扱いとなっています。

 今回のこの展示を観ていると、地理学が文系に分類される理由も体感として掴めた気がします。

「都市地図って、突き詰めていくとこんなにもひとの営みを感じさせる要素が詰まったものなんだ」ということを身を以て感じた……とでも言いましょうか。

 引っ越しが多かった私にとっては、この「中村市」は、「これから住むことになる、まだ知らない街」を彷彿とさせ、転勤族のワクワク感を再燃させられる部分もありました。

 その一方で、「ここに住むことは一生あり得ない。物理的に不可能」という現実に切なさも感じて、なんとも言えない、まるで叶わない恋をしているかのように胸がキュっとなる部分も……。

 なんだろう。ガラスの膜があるみたいな感じ。

 これもどこか「演劇っぽい」感情だなと自分で思いました。

 

 それにしても地図って奥が深い。人々の営みや歴史のような「文学部的」な側面からもいろいろ見えてくるし、気候や地形を意識すると、理系科目の要素も入ってくる。道路や街ができていく際には政策・政治学的な要素も関わっていたりする。地名のブランドイメージなどは社会学の要素も強そう。どの情報をピックアップしどのように地図上で表現するか、という点はデザインや美術が関わってくる。

 どの面から見ても、地図や地理は楽しめるし面白い。多趣味な私が地理を好きになるのは必然かも……ということを感じた夜でした。

 

 スポンサーリンク

 

おまけ

 この展示を観てしばらくしたあと、友人と新橋の日本酒の店に入ると、なんと、隣の席の二人組も地理の話をしていたので驚きました!

 小耳に挟んだ会話によると、隣の席の二人は関西の大学の「地理研」の先輩と後輩。先輩のほうは社会人のようです。(石山の花火大会の話をしていて、関西弁で話していたことなどから推測)
 飛行機のプラモデルの箱も席に置いてありました。

 私も関西の大学の地理学出身なのでなんだか嬉しくなり、私も友人に地理の本の話などをしてみたものの、隣の席の人たちが反応して交流が生まれるような展開は特になかったです(笑)。

 

 

 スポンサーリンク