これからも君と話をしよう

一度はここから離れたけれど、やっぱりいろんな話がしたい。

【後編】大地の芸術祭2018と、新潟県十日町市の旅の記録【2日目】

 前回の更新からだいぶ日が経ってしまいましたが、前回の記事の続きです。

www.wuzuki.com

 今回の目次はこんな感じ。

自然豊かな十日町

 1日目の夜。スイカを食べたあとは、シャワーを借りておやすみ。翌日には温泉に入るつもりだったので、髪は洗わず、軽く身体だけサッと流しました。

 ギルドハウスでの夜は、8月半ばだというのにとても寒かったです……! 薄手のパジャマを持ってきたのは失敗だったかもしれません。ブランケットを数枚かけて眠りました。

 

 朝起きると、とってもいい天気。

 

 台所と野菜を使わせてもらって、トースト、目玉焼き、野菜スープを作らせてもらいました。

 朝ごはんを食べていると、住人のひとが「昼から何人かで芸術祭を回るけど、よかったら同行しない?」と提案が!

 私は、「きょうは午前中に十日町のキナーレへ行って、温泉を楽しむつもり。それからタイミングが合えば合流したい」ということを伝えました。

 

 十日町に向かうほくほく線は、昼間も本数が多いわけではありません。だいたい1時間半に1本。そして、このギルドハウス十日町から最寄りの美佐島駅までは徒歩約20分。

 余裕を持った時間に、シェアハウスを離脱することにします。

 ここの宿泊費はカンパ制。オーナーに2000円お渡ししました。

 

 外に出てみると、昨夜は真っ暗でわからなかった風景が飛び込んできます。

 

 

 

 

 

 

 

 すごく開放感がある。

 私は、川が流れている景色が好きなので、なかなか見ていて飽きませんでした。

 

 20分ほど歩くと、美佐島駅が近づいてきました。

まるで地下要塞?美佐島駅

 「え、ここが美佐島駅……!?」

 たどり着いてみて驚きました。来たときは深夜に車で通りすぎただけなのでわからなかったけど、こんなにメタリックでカッコいい駅だったなんて……! 

 

 もっと「田舎の、古くてさびれた無人駅」みたいなのを想像しちゃってました。スミマセン。

 地下に降りると、こんな感じ。

 

 

  まるで、地下要塞です。

キナーレ「明石の湯」でのんびり

  電車に揺られ、十日町駅に着きます。

 

「越後妻有交流館 キナーレ」へ。

 この施設の中には、「里山現代美術館」や「明石の湯」があります。 

 この水は、レアンドロ・エルリッヒ「Palimpsest: 空の池」という作品。

 この作品、今回のトリエンナーレでは話題になっていた作品のようで、それを知らずパッと見ただけで済ませてしまったのを後悔……。今年、エルリッヒ展にも行ってきたばかりだったのに……!

 

 美術館も気になるけど、とりあえず温泉に入りたかったので「明石の湯」へ。

 ここ、最高でした……!!!

 とにかく綺麗。広くて開放感のある浴場。

 3つのお風呂がありました。この日は「ミント風呂」や、子ども向けのアヒルのおもちゃがいっぱい浮かべてあるお風呂もあり、飽きませんでした。

 温泉から屋外に出て、日光浴ができるところも。

 

 自然豊かな場所、という感じではなく、人工的な感じでした。

 広さと綺麗さを兼ね備えた温泉で、とってものびのびできました。

 

 お風呂を楽しんだあとは、食堂を兼ねた休憩室へ。

  

 ええっと、もう、なんというか。最高すぎました……!!!

 

 呑んだ日本酒「天神囃子」は、甘口のお酒。もう、美味しい。美味しい。

 どのおつまみにも合いました。はぁ、至福のひとときだ……。

 館内にあった雑誌をめくりながら、お酒と料理を堪能していました。

 

 そんなとき、ギルドハウスで出会った友人から連絡が。キナーレのそばに着いたとのこと。

 みんなと合流して芸術祭をまわることになりました。(お酒は飲みきれなかったので、持ち帰ることにしました)

みんなで野外作品を楽しもう

 ギルドハウスでお世話になっているという男性2人と、台湾からやってきている女の子1人、そして私の計4人でまわることに。

 台湾の子は日本語が話せないらしく、男性陣も英語はあまり得意でない模様。

 3人は、身振り手振りや簡単な英語のほか、スマホの翻訳アプリに言葉を吹き込み、そこで翻訳された言葉の画面を相手に見せる……というカタチでコミュニケーションをとっていたのが、ちょっと新しさを感じて面白かったです。 

 

 十日町で合流したあと、「農舞台」に行こう、ということになり、まつだい方面へ車で向かいました。

 私は前日に訪れたのと同じ場所に行くことになりましたが、見ていない作品もたくさんあるので、特に気にしませんでした。

 

 前日にも観た作品。「リバース・シティー」。

 

○△□の塔と赤とんぼ」という作品。

 

 

観測所」という作品。みんなで登ってみたり、パイプに耳を当てて音を聞いたりしました。

 

 

大地の恵み」という作品。この人形は「ポテトマン」というらしい。

 

この日も良い天気。

 

 

 

 

 みんなで山を登って辿り着いたのは「人生のアーチ」。雑誌でも紹介されていたので、これは見てみたいと思っていたところでした。

 この作品、気に入りました! アーチに載っているオブジェ、よく見てみると、ひとのいろんな姿をしています。

 

 

 この山からの眺めも良かった。 

  

 

 

 

 

 山から下りたあとは、田んぼのほうへ。

 これは「米の家」という作品。ベンチに座って田んぼを眺めたり写真を撮ったり。

 

 

 

 

まつだいスモールタワー」という作品。登ってみた。

 

「農舞台」エリアの作品を楽しんだあとは、別の場所にも行ってみようということで車で移動。ゆるいカーブの坂道を、どんどん車で登っていきました。

 

 

 

 

 「星峠の棚田」。いい眺め…… !

 自然が作る、さまざまな緑色にもひたすら見とれてしまいました。

 

  

 古民家が集まるエリアへ。

 

 

  

 

  

この家は「EDEN」という作品。

 

 

脱皮する家」、同行者のうちひとりが「見たい」と言っていたので訪れましたが、着いたのが夕方で、公開終了の時間だったという……残念!

 

 そんなことをしているうちに、そろそろいい時間になってきました。

 私が東京に帰る時間です。

  帰りもまた、大地の芸術祭号に乗りました。

 2日目、ちょっと慌ただしくなってしまったけど楽しかった……!

 

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もっと楽しみたかったものたち

 もともと1泊2日の滞在、そして車もない予定だったので、大半の作品は見れないものとして考えていました。なので今回の旅は、思ったよりあちこち行けて満足です。

 ただ、しいて言うなら、このあたりの作品も見てみたかったかも……!

www.echigo-tsumari.jp

 かつて診療所だった家を使った、ノスタルジー溢れる作品。

 

www.echigo-tsumari.jp

 閉校した小学校を使って「人間の不在」を表現したという作品。

 

www.echigo-tsumari.jp

 17歳でチリから亡命した作者が、地球儀を模して作った作品。

 

 どれも、雑誌のアート特集号で見て気になったもの。こういう、廃墟を使って人間の営みに目を向けたものや、地理学、民俗学的ちっくなものって大好きです。

 

 あと、美術館に見立てた黒い新幹線「現美新幹線」に乗ったり、大地の芸術祭と同時期に新潟市で開催していた「水と土の芸術祭」も行ってみたかったですね。予算や予定の都合上、諦めましたが……。

 

 前回も書きましたが、私、もともと旅行する趣味はないんです。

(なので、宿や交通手段に月収の10分の1ものお金をかけるのが馬鹿らしいと思ってしまう……。ほかの人がお金を出してくれるとか、だれかと交流を深める目的がある、などの場合はまた話は違ってきますが)

 あくまでも私が好きなのは、フィールドワークや、イベントや友人目的での遠出。観光にはあまり興味がありません。(じつは大学は観光地理学のゼミだったのですが)

 しかしそんな私も、今回は思いがけず旅行っぽい楽しみ方もできて、旅行好きなひとの気持ちが少しわかった気がします。

 

 この十日町旅行の翌週は、塩尻にも行けて楽しかったな。いつかその話もまた書きたいです。

 

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ひらく美術: 地域と人間のつながりを取り戻す (ちくま新書)

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美術は地域をひらく: 大地の芸術祭10の思想 Echigo-Tsumari Art Triennale Concept Book

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【前編】大地の芸術祭2018と、新潟県十日町市の旅の記録【1日目】

 旅行らしい旅行をめったにしないはずの私が、この夏は二度も遠出していました。

大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2018」目当てで、新潟県十日町市へ(8/18土~8/19日)。

「第85回NHK全国学校音楽コンクール 長野県大会」目当てで、長野県塩尻市へ(8/25土~8/26日)。

 いずれも、青春18きっぷを利用したひとり旅で、宿泊先は友人たちに紹介してもらったシェアハウス。

 

 今回は、十日町と芸術祭について書こうと思います。

www.echigo-tsumari.jp

 もう会期は修了してしまいましたが、通年で鑑賞できる作品もたくさんあります。

 また、「トリエンナーレ」とつく芸術祭は3年に一度開催されているので、この記事も2021年以降にお楽しみいただける部分もあるかと思われます。
 芸術祭とは関係なく、見どころやおすすめスポットもたくさんありましたので、立ち寄った際にはぜひどうぞ。

▼目次はこちら。

※今回、とても写真が多いのでパソコンかWi-fiでの閲覧推奨。

十日町までの電車旅

 早朝に起床し、午前5時半に新橋駅へ。旅行そのものは興味はなくても鉄道は好きな私は今回、久しぶりに18きっぷ旅ができることはとても楽しみでした。

 電車の中では、電子書籍で読書しつつ、電車が駅に停車するたびにポケモンGOを開きつつ、たまに写真を撮って過ごしました。

 車窓の外はしばらくは郊外の景色が続きましたが、水上駅あたりから一気に自然豊かな風景が広がり、ぐんと面白くなってきます……!

 ピンクの駅舎が可愛い水上駅で乗り換えた束の間、トンネルに入り、モグラ駅・秘境駅として有名な湯檜曽駅土合駅を通っていきます。(いつかここもじっくり行ってみたい)

 そして、六日町駅でJRから「ほくほく線」に乗り換え。

 電車を見つけたとき、思わず「わぁっ」と声を漏らしそうになりました。

 会期中の土日のみ走っている大地の芸術祭号」です。

 

(※会期は終了したため、現在は走っていません)

 そして「まつだい」駅へ。

 電車を降りると、もう、そこは芸術祭。日差しが眩しくて、とってもいい天気!

 

駅を降りてすぐの風景。通路に札がずらっと並んでいるのは「まつだい住民博物館」という作品。

まつだいの住民の屋号が書かれています。地理学・民俗学好きなのでこういうの好み。

 

 新潟は涼しいかな、と思っていましたがそんなことはなかったです。下車したあと、すぐに日焼け止めを塗りなおしました。

まつだい「農舞台」

 まず目立つのは、現代的な建物の、まつだい雪国農耕村文化センター「農舞台」。この建物の下のスペースには、「大地の芸術祭の里・総合案内所」があるので、トリエンナーレのパスポートはここで入手しましょう。

 

 

「農舞台」の中では、イダキ:ディジュリドゥ、オーストラリア大地の音」展(※現在は終了)関係 - 黒板の教室を鑑賞。

 「~黒板の教室」は、学校的なコンテンツも地理的なコンテンツも好きな私にとって、見事に私好みなものばかり置いてあって、とても面白かったです。

 

 

 

地球儀、地図、学級文庫、時間割、剥製。どれも心をざわめかせるコンテンツ。

 

「イダキ」も、じっくり観る時間があったら楽しめたかも。民俗学的なものにも興味はあるので。

 

 

 

越後まつだい里山食堂」にも立ち寄ろうか迷いましたが、そこまでお腹が減っていないこと、混雑していたことから行くのはやめました。

ブルーグリーンを基調としていて、とても幻想的。

 この建物はトイレの内装も面白かったです。トイレのそばに添えてある絵からも、なんらかの思想を読み取れそうだなと思いました。

   

 

 屋上にも行きました。眺めは普通。

 

 

 

トンボが飛んできました。もうそんな季節か。

野外作品を楽しもう

 館内をぐるっと回ったので、外に出てみることに。

 日陰で休んだり、オブジェを鑑賞したり。

 

 

ジャングルジムとカエルはそれぞれ「転がるジャングルジム」「ゲロンパ大合唱」という作品。

草間彌生花咲ける妻有」は、さすが華やか。

 

 ひと息ついたあとは、川を渡って、山のほうに行ってみることにしました。

  

 よく「田舎は何もない」と言われますが、見方を変えればぜんぜんそんなことはありません。この松代エリアだってもちろん例外ではないです。

 種類の異なる、いろんなセミの声。歩いている最中、暇だったのでセミの鳴き声をスマホに書き起こしたりしていました。(なんか最近、このブログではセミの話ばっかりしてるような……)

 大きく響く川のせせらぎ。いろんな緑色が混在する森、田んぼ。

 ひとつひとつ細かく観察していくと、とても情報量は多いです。

 そして、陽射しは都内と変わらないくらい暑かったものの、たまに軽く吹く風は意外に冷たい。

 こんなに暑いというのに、いったいどうして、木陰に入ると信じられないくらいひんやりしました。この温度差はどういうトリックなんだ。

 

 

 

 

 

 

 

謎の果実? 野菜?を発見。(これが何なのかは後ほど明らかになります)

 

リバース・シティー」という作品。吊るされている鉛筆には国名が書かれている。これ好き。

 

 

水のプール」という作品。これめっちゃ好き。ゲームの中の世界に入ったみたい。

 

 

この作品、なんだったか覚えてない……。

 

何かの作業用の鉄板にしか見えなかったけど、「関係—大地・北斗七星」という作品らしい。

 

これは「夏の三日月」という作品。

 

  

 かかしプロジェクト」という作品。

 

  

 栗が落ちていた。

 

     

  

西洋料理店 山猫軒」という作品。宮沢賢治の「注文の多い料理店」の一節が書かれている。扉を開けていくことで物語の世界に入ることができる。こういう二次元作品とのコラボ、好き。

 

  

 

 「棚田」という作品。遠くから見ても近くから見ても面白い。

 

 ちなみにこれらの作品の中には、ポケモンGOポケストップポケモンジムにもなっているものもありました。確かにゲームの世界っぽい。

カフェでひとやすみ

 14時をまわった頃。もうずいぶん歩いたので、そろそろ別のエリアにも行ってみよう……と思い、まつだい駅方面にいったん戻ります。信号を渡り、松代商店街へ。

 

「商店街」といっても、アーケードがあるような場所ではありません。文字通り、商店が連なる一角でした。

 

 雪国にはほとんど住んだことのない私は、歩いている途中に見える家のつくりにも感動して、町中の写真を何枚も撮っていました。

  

 

 そう、芸術祭の作品もいいけど、こういう日常に現れるその地域の特徴を知ることのほうが本当は好きなんですよ。大学は地理学専攻でしたし。そういう意味でも、ここは見応えがあるエリアでした。

 屋根や建物、信号の形が雪が積もりにくいカタチになっているのを見て、「あぁ、雪国だ……」と思ったり、その地域に本社のあるチェーン店を見つけて感動したり。そんなことをしながら、ひたすらシャッターを切っていました。

 

 歩き回ったので、どこかですこし休みたい。さてどうしよう。 

山ノ家カフェ&ドミトリー」というカフェか、「澁い」というレストランに立ち寄ろうかと思いましたが、時刻はもう15時近く。山ノ家カフェはこの日は昼間は15時までの営業、澁いは16時までの営業で、どちらもあまり長居はできなさそうだったので諦めました。

 どうしたものか……と思ったところ、山ノ家カフェの隣にあるお店?休憩所?を発見。「かき氷あります」の文字に惹かれて中へ。

 

 ここは、「泡屋」というお店のようでした。なんというか、こぢんまりして、田舎の親戚の家のような雰囲気。雑貨が所狭しと並べてありました。雑貨の販売と飲食の提供をしているのかな。

 ちなみに、この商店街の建物なども、「松代商店街周辺における土壁による修景プロジェクト」という作品のひとつのようです。

 かき氷を食べつつ、お店のひとと少し話もしました。

 

 そんなときに、あるものを見つけます。

 

「アイラップだ!」

 先日SNSで、北陸を中心に販売している調理用の袋「アイラップ」の話題で盛り上がっているのを読んだばかり。

togetter.com

 便利らしいと聞いたけど東京には売ってない、という話をすると、お店の方が「何枚か持ってく? 旅行中の着替えを入れたりするのに使いなよ」と、アイラップを数枚くださいました……!

 また、こんなチラシも見つけました。

 

 夜は夜で、お祭りが行われるようです。その時間まではここにいようかな。

 お店の方が作ったという自家製の飴を購入し、店を後にしました。茶色い塊に粉砂糖がかかった飴は、キャラメルのような味がしました。

 街中作品を楽しもう

 再び、散策を開始。
 芸術祭の公式ページでは、車を使わず徒歩で巡回できるコースとして、「黄金の遊戯場」「カサバラタ」「ゴースト ダンス」「SF(Summer Fiction)」が紹介されていました。(※現在はどれも観ることはできないようです)

黄金の遊戯場

 派手。きらびやか。SNS映えするからか、写真を撮ってるひとがたくさん。

 翌日知り合うことになる友人も、ここで撮った写真をFacebookに載せていました。私もインスタのストーリーに載せました。

   

 

 

カサバラタ

 煙突から煙がモクモク。

  

 

ゴースト ダンス

 芸術祭の受付でこの場所を尋ねたところ、「昼よりも夜に観たほうがいいよ」と言われたけど確かにそうかも。小屋に差し込む白い明かりが、ぼんやりと夕闇に光っています。この家の前を通ると音も流れました。

   

SF(Summer Fiction)

 今回の芸術祭の中でも、トップレベルに好みだった作品。夏場は使われていない除雪車の保管庫を芸術作品に見立てたもので、まるで映画やSFアニメの中に入ったみたい。効果音や照明も効果的でした。

  

  

  

  

   

  

 こんなふうに展示されると、除雪車も、アニメの中に出てくる戦闘ロボット的な乗り物に思えてきます。

 松代夜市を楽しもう

 18時が近づいてきたので、商店街のほうに戻ります。

 先ほど行けなかった「澁い」は、夜の営業時間に向けて準備が行なわれていました。

  

 

 さっき行った「泡屋」も、昼とは違う雰囲気。

 

 おなかはすいていなかったので、飲食店ではないところに行ってみよう、と思ったら、地元の人のミニライブが行なわれているところがあったのでそこへ。

 

 本当はもっとじっくり夜市を楽しみたい気持ちもあるけれど、電車の時間もあるので19時前に離脱することに。町中の雰囲気を味わいながら帰りました。

 

 

 

 

 

 商店街からまつだい駅まで歩いて戻りましたが、駅周辺まで戻ってみて、あまりにも周囲が真っ暗なことに驚きました。

 

 昼間はあんなに鮮やかな風景を楽しめて、植物も木漏れ日も虫の声も楽しめたのに、今はまったく楽しめるものはありません。夕闇に対して畏怖する気持ちが湧いてきました。

いこて/IKOTEにて日本酒を

 十日町駅で降ります。すこしおなかがすいてきたので、どこかで何か食べようと思い適当に歩いていると、何やら丸っこいカタチの、あったかみを感じる建物が……。

   

  お酒が充実したカフェレストランのようです。2階はコワーキングスペースになっている模様。

 新潟では日本酒はぜったい飲みたい! と思っていたので、ここに入ってみることに。

 

 内装も、木を基調としていておしゃれ。

 

 おばんざいの盛り合わせと、日本酒「松乃井」を注文しました。

 お通しは、柏崎でとれた卵を使った茶碗蒸し。

  

 お、美味しい……!!

 お酒も料理も、ひとくちひとくち、胸をズきゅんと打ち抜くような味わい。

 そこまで食欲はなかったのですが、そのぶん、ひとくちをゆっくりじっくり堪能できました。

 私は普段、日本酒は甘口のものを飲むことが多いのですが、この「松乃井」は辛口だけど、とっても飲みやすい……! 舌で転がすように味わいました。

ikote.net

 ここで食べました!

ギルドハウス十日町

 食事を終え、十日町駅に向かいます。ここからほくほく線に乗り、ふたつ隣の「美佐島」駅に向かう予定です。

 宿泊予定のシェアハウス・ギルドハウス十日町は駅から徒歩20分。

 しかし……まさかの、乗るつもりだった電車を乗り逃してしまいます。

 次の電車は、1時間半後……(地方にありがちなパターン)。

 グーグルマップで調べると、歩いたら1時間のようです。

 しかし、もうたくさん歩いたのでこれ以上歩きたくはないし、何より、知らない地方の街を夜中に1時間かけて歩くのはちょっと。

 8月上旬には十日町で殺人事件も起こり、犯人も捕まっていないみたいだし……(この犯人と思しき人は自殺しているようでしたが)。

 結局、シェアハウス関係者の方に車で迎えにきていただきました。ありがとうございました。

 車で走っていて気付きましたが、周囲はかなり真っ暗。ここは想像していた以上に自然豊かな地域のようです。

 こんな真っ暗闇の中を歩いてこなくて本当によかった……と思いました。

 

住み開きの古民家「ギルドハウス十日町」 | Doorkeeper

 住人・滞在中の方々は、みなさんとても楽しい方。

「スイカ食べる?」と言ってくださったので、いただこうとしてみて気づきました。

 ……あ!

 

 昼に、まつだい農舞台のところで見かけたあの謎の瓜だ!!

 メロンか瓜かなと思っていたのですが、スイカだったとは。このスイカも美味しかったです。 

 

 さて、長くなってしまいましたが1日目の記録はこのへんで。

 次回は、2日目について書こうと思います。今回ほどは長くなくて、人ももっと登場する予定です。

 

▼ 行きの電車の中で読んでいた本はこれ。「ええやん!朝活」読書会で知った本です。短いエッセイ集で、書き口がとってもコミカルで面白い。旅行ブログを読む感覚で読めます。

わたしの旅に何をする。

わたしの旅に何をする。

 
アイラップ 60枚入

アイラップ 60枚入

 

君の脚をたべたい

 2014年頃、平田さん(id:tomo31415926563)と京都で話したときのこと。

「変わった肉、珍しい肉を食べたことはありますか?」と私が尋ねたら、「おっぱい募金は行ったよ」との返答がありました。

 まぁ、たしかに「珍しい肉」の話ではありますね……。

 

 

 いきなり話は変わりますが、私がこの夏から部屋に飾っているのは、友人の手作りのドリームキャッチャー

ドリームキャッチャー」とは、アメリカインディアンのあいだで幸福のお守りとされている装飾品で、「良い夢を捕まえる」とされているもの。

 クラウドファンディングのリターンです。病気のために足を切断した友人の義足代として、私は50ドル寄付しました。

 自室の窓辺に飾っています。 

 

 先日、このひととシェアハウスでの食事会で会いました。

 義足や脚の話になったとき、

「切断した脚、平田さんが食べたいって言ってたんだよね」

という、衝撃的な話を聞きました……!

 

 切断した友人の脚を食べる……!?

 その発想はなかった……。

 でも確かに、ただ切除して焼却してしまうよりはいいアイデアかもしれません。

 私も、もしじぶんの身体の一部が使えなくなったり、死んでしまったりした場合は、ただ焼却するよりはなるべく有効活用して欲しいなと思います。臓器移植とか、植物の肥料にしたりとか……(現在あるいは将来的な法律問題、そしてじっさいの損傷状態として、そういうことができるのかは不明ですが)。あ、でもヒグマの餌はイヤだな。人肉の味を覚えさせたくないから。

 

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 しかし今回、結論から言うと、脚を食べることはできなかったとのこと。

 切断した脚を食べることは、器物損壊になるそうです。

「器物損壊!? 脚の持ち主の許可があってもダメなの?」

「切断した脚に手を加えることが問題なら、髪や爪を切ったりするのはどうなるの?」

と思ったのですが、

「髪や爪は、死んだ細胞をぶら下げていることになるので、それを切るのは違法ではない」とのこと。

 

 でも、ひとの髪を勝手に切ったら傷害罪になると聞いたこともあるし……。

 ひとの身体の権利って不思議。

 じぶんの身体であっても、意外と自由には取り扱えない部分は多いのかもしれません。

 

 ……というか、思い返してみればけっこういろいろありますね。身体についての自由と制限。

 売春や安楽死、嘱託殺人や自殺ほう助、臓器売買など法的な重い話から、タトゥーによる入場制限、学校や職場での染髪・ピアス・ネイルの制限など卑近なローカルルールの話まで、「身体とルール」にまつわるエピソードはあれこれ思いつきます。

 

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 ちなみにこの友人のケースでは、脚は焼却することになったとのこと。

 このとき、私と一緒に話を聞いていたひとたちが、口々に「遺骨はどうなったの?」と訊いていたのがちょっと印象的でした。

「死んでないんだから、遺骨じゃないよ」と苦笑まじりに友人は訂正していました。「焼骨」が正しそうですね。

(この夏、世間では元死刑囚の遺骨の扱いについて問題になっていたこともあり、「遺骨」のほうが馴染みのある表現なので、口をついて出てきたんでしょう)

 

 焼骨がどうなったのかというと。持ち帰るのにも3万円かかるということで、「それならいいです」と、友人は持ち帰りを断ったそうです。

 身体の持ち帰りにお金がかかる……!?

 これも衝撃的でした。

 お金を取ることは、きっとそれなりの合理性があってのことなんでしょうけど、もとは自身の身体だったものについて「返してほしいならお金を」って、まるで人質(?)みたいで妙な感じがしました……。

 

 身体の扱いについてのルールって、思っている以上に奥が深そうです。

 病院や地域自治体によっても違いはありそうですし、時代や国、宗教規範等の違いによっても大きく異なりそうですよね。他の文化圏の事例についても気になりました。

 

※ここでは聞きかじった話を書いているだけですので、じっさいに法律がどうなっているのかの正確性は担保できません。あしからず。脚だけに

 正確な情報が必要な方は、専門的なところで調べてみてくださいね。私も気になる。

 

君の膵臓をたべたい (双葉文庫)

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身体をめぐるレッスン〈1〉夢みる身体

身体をめぐるレッスン〈1〉夢みる身体

虫食文化と公園と

※写真は載せていない記事です。虫が苦手な方も、よかったらぜひお読みくださいませ。

 

 これまでに何回食べたかなぁ、と数えてみたら。2016年は3回、2017年は4回、そして2018年は1回だけ食べていたようです。

 え、何をかって?

 

 虫です。

 ミルワームやコオロギ、食用ゴキブリなども食べましたが、意外とおいしいのはセミ

 

 さて、そんなセミですが、先月、こんな記事が話題になりました。

www.asahi.com

www.j-cast.com

 虫食界隈をはじめ、この看板には抵抗を示す意見も多かったように思います。

 この件について、けっこういろんなことを考えさせられたので思ったコトをまとめていきます。

“虫食は気持ち悪いから”禁止?

 まず気になったのは、

「虫食は気持ち悪いから、という理由で禁止しているようにしか思えない」「異文化の否定だ」という意見がいくつも見受けられたこと。

 少なくとも、「気持ち悪い」や、それに類する文言の記載は記事にも看板にも見受けられなかったので、私はそのようには全く思いませんでした。なので、そういう読みをする人がいることに、むしろ驚きました。虫だけに

 

 たとえば、みかんやりんごの木の近くに「食べないでください」という看板があった場合、「果実を食べる文化を否定している!」と憤る人にはお目にかかったことはありませんし……。

 また、果物とは違い、セミはその場で生で食べるひともまずいないと思うので、「虫食文化が気持ち悪いから」というのは、あまり大きな要因ではないと思っています。

 なので私は「異文化の否定だ。そうとしか思えない」という主張は少々極端では。(そんなこと書かれていないし……)というのがまず思った感想です。

 

「書かれていないことを読み取る」ことについては、芸術批評のほか、フェミニズムジェンダー絡みの話でもたびたび論争になっていますね。

「そんなことどこにも書かれていないのに、これは性的にまなざしている/差別/搾取だと勝手に読み取って騒いでいる輩がうるさい」「こんなの今どき普通なのに、性的だと怒るほうこそが性的に見ている証なのでは」という意見、よく見かけます。

 

 芸術作品はともかく、社会制度や公共のあり方に関しては、私は原則として「明文化されているものベースで考えるべき」だと思ってはいますが、だからといって「書かれていないことを勝手に読み取って騒いでいるみなさんww 想像力が豊かなことでww」と煽る気にはなりません。

 これまでその文化や属性がどのような扱いを受けた背景があったのかを鑑みて、明文化されていない部分を想像することもまた必要な作業だとは思います。なので、被害妄想だと一蹴する姿勢もまた好きではなかったり。

(ただ、それを踏まえても、虫食は「気持ち悪い」と個人ベースで思うひとはいても、それゆえに文化圏単位で差別・迫害されたという話は聞いたことがないので、差別ではないと判断しました)

外国語で書いてあるのは差別?

「わざわざ三ヶ国語で書くなんて、外国人差別のように思える」という意見も見受けられました。

 うーん。そもそもここ3、4年で東京近郊では外国語表記がすごく増えた印象ありますし、この看板がある川口市蕨市は外国人も多い地域看板に外国語も表記されているのは、おかしなことではないと思いました。 

(しかし、これはちょっと面白い現象ですね。日本語onlyの看板に対して「外国人への配慮が足りない」と言うのはわかるのですが、外国語の記載があっても怒る人がいるとは)

 日本語の記載はなく外国語だけだったり、「こういう違反行為をするのは外国人」のような書き方をしていたら「差別的」と言われるのも理解できますが、「食用目的でのセミ採集を禁じる内容を、三ヶ国語で書くこと」自体は、外国人差別には当たらない気がします。

“差別”って、なんだろう

 誰かの権利が侵害されていたら、「差別」にあたる可能性は高いと思います。

 今回、虫を食べるひとの権利が侵害されている、という主張もあるかも知れませんが、公園は公共の財産でもありますよね。個人が自分の私有地で飼育して食べている場合はともかく、公共の場所での採集に関しては制限はあるのは当然かと。

 セミに限らず、そもそも魚釣りを禁止している池や、果実を捕るのを禁止している庭園はいくらでもあるでしょうし、食用目的での採集が禁じられるのはおかしなことではないと思います。

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食用だけが禁止?

 わざわざ「食用」と書いていることが気になった人もいるようですね。
魚や果実を採る人は食用がメインのケースが大半だと思われますが、セミは飼育・観察目的の人が多いので、それらと区別をするために書いたのだと思います。

「食用」のみ禁じているのは、その用途そのものというより、採集する量の多寡が問題なんだと思います。
 SNSを見てみても、子どもが飼育・観察目的で捕まえる場合はせいぜい数匹ですが、虫食をする人たちは一度に数十匹捕まえているケースが散見されます。

 はてなブックマークコメントでも指摘がありましたが、公共財と近代法の相性の悪さも、この問題をややこしくしているのではないかと思いました。
 本当は採集の目的ではなく、採集の総量が問題であったとしても、「昨日Aさんが100匹獲ったので、きょう来たBさんは採集禁止」となっては不公平ですし。それなら一律禁止も致し方ないと思います。

 

 セミは成長に5〜6年かかることを考えると、大量に獲られてしまうと生態系が崩れることへの懸念が出るのも当然でしょう。

「もともとクマゼミは埼玉にいなかったのに、今さら生態系と言われても」という意見もあるかもしれませんが、ここでの「生態系」は、そんなに厳密な意味では使われていないと思います。

クマゼミはいいけどほかのセミは禁止」などと線引きを始めるとキリがありませんし、問い合わせに対応する職員のことを考えても、「セミなどの食用目的の採集は禁止」は妥当な判断なのではないかと思いました。

 

 また、食用ということはある種の「資源」であり、「資源」を巡ってトラブルや争いが起きかねないことへの懸念も考えられそうです。

 セミの羽化は夜なので、夜に「資源」を目的に公園を徘徊するひとがいると、騒音問題の発生も考えられますね。

別の表現にすれば良かった?

 食文化の否定に繋がりかねない書き方ではなく、「草木を傷つけないで」とか「大量に獲らないで」などの表現でいいのでは……という意見もありましたが、「傷つける」「大量に」などの曖昧な表現を使わないのは、むしろ適切なのではと思いました。外国人など、異なる文化圏から来たひとが多い地域なら尚更。

 

 ここまで、この看板について擁護する意見を書きましたが、ただ確かに、セミを大量に捕まえている人がいる」という理由で通報されるのは、ちょっとよくわからないですね……。
 その通報を受けての看板設置、ということだと、たしかに、虫食をするひとへの偏見を強化してしまいかねない気はします。

「通報を受け、どのような点が問題だと判断して、看板設置に至ったのか」の記述があったらなお良かったのでは、と思いました。

 外国の食文化を否定しない・尊重することと、公共の公園での食用目的の生物採集を禁じることは背反ではないと思うので、そのあたりもうまく折り合いがつけられたらいいですよね。せっかくここは外国人が多く、異文化にも触れやすい環境なわけですし。

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 今回の件は、虫食界隈の友人が強く反応していましたが、私のまわりには空間デザイン、公共政策などについて考えている友人もいます。

 友人が以前、まったく別件での投稿で「公共空間としての公園は、単なる行政の持ち物としての施設ではない」と言っていましたが、この言葉のことも今回、ずっと考えていました。

 

 今回、看板設置からこの記事を書くまで時間があったにも関わらず、当該の公園には行けていないので、時間を見つけて足を運んでみたいとも思いました。

 

虫といえば、最近読んだこの漫画すごく面白かったです!

百合要素も虫要素も多め。絵も綺麗!(虫の絵もリアルなので苦手な人は注意) 

麻衣の虫ぐらし 1 (バンブーコミックス)

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書評バトルの観覧に行ってきた

 ビブリオバトル火付け役の先生がいる大学の出身。ブームになっていくさまもSNSで見ていましたが、きちんとしたビブリオバトルはじつは観覧したことがありません。そんな私です。

 

 ある日のこと。小学館からのメールマガジンで「大学対抗 書評バトル」の観覧者の募集を知り、申し込んでみたら当選。

 8月12日(日)、書評バトルの観覧に行ってきました!

 

 会場は小学館ドラえもんが目立ちます。

 

hon.booklog.jp

 この書評バトルは、小学館の「P+D BOOKS」というレーベルから出ている昭和文学を対象に、各大学の文芸サークルの代表が登壇してプレゼンを行い、「最も読まれたくなった本」の投票を行い優勝者を決める……という企画。

※いわゆる「ビブリオバトル」と近いですが、ビブリオバトル公式ルールに則ったものではないので、その名称は使っていないものと思われます。

 

 今回紹介された本は、

1.立教大学 加藤能(ちから)さんによる紹介

  倉橋由美子『アマノン国往還記』

2.慶応義塾大学 末永光さんによる紹介 

  福永武彦『草の花』

3.明治学院大学 小野朝葉さんによる紹介 

  福永武彦『夢見る少年の昼と夜』

4.早稲田大学 伊藤詩緒さんによる紹介 

  三遊亭圓生『噺のまくら』

5.東京大学 山川一平さんによる紹介 

  河野多恵子『蟹』

の、5作品。

 

 どの本も(というか、どの作家も)私は読んだことのないものばかりでした。

 それぞれのプレゼンの概要と感想を簡単に紹介します。

 

1.立教大 加藤さん『アマノン国往還記』

P+D BOOKS アマノン国往還記

P+D BOOKS アマノン国往還記

 

「えー、私は今回の登壇者の中では一番、応援に駆けつけてくれた人が少ないと思います」などと、自虐風の自己紹介で会場を湧かせていました。「性欲の強い宣教師が出てくる」「途中から宗教論の話になるけど、これがかなりガチ。大学のレポートでパクってやろうかと思ったくらい」などのくだりが印象的。また、「この本が出たのは、男女雇用機会均等法が施行された直後の1989年。そんな中でこの作品を出した著者は保守的なのかも」「今だったらポリコレ棒で叩かれるような内容だけど、これを復刊させようと思ったP+D BOOKSはすごいと思った」など、主催側に対する言葉を向けていたのも面白かったです。

 また個人的には、加藤さんご本人の雰囲気や話し方が、私の大学時代の文芸サークルの後輩にいそうな感じがあったので、そのあたりにも懐かしさを覚えました。

 

2.慶応大 末永さん『草の花』

草の花 (新潮文庫)

草の花 (新潮文庫)

 

 先ほどの加藤さんとは違い、落ち着いたプレゼン。結核療養のためにサナトリウムに入院している主人公が出会う人物の、愛の物語……という内容のようですね。作者の福永武彦も病弱だったようで、そのような背景もある上での作品のようです。今回紹介された本の中では、もっとも「昭和文学」っぽそうな作品だなと思いました。

 末永さんは、この作品について「60年以上も前の本なのに、同性愛も異性愛も出てくるところが印象的だった」「この時代にそのような話を書いた福永武彦はすごい」という旨の話をしていました。

 

3. 明学 小野さん『夢見る少年の昼と夜』

P+D BOOKS 夢見る少年の昼と夜

P+D BOOKS 夢見る少年の昼と夜

 

  書評バトル開始前、プレゼンター紹介のときに全員の名前が呼ばれましたが、小野さんは名前を呼ばれたときに「よろしくお願いします!」と、はきはきと挨拶していて印象が良かったです。

 そんな小野さんが紹介していたのは、先ほどの末永さんに続いて福永武彦作品。14作の連作短編集ということで、短編集好きな私は興味を持ちました。少年の、空想と現実の揺れ動きを描いた作品、のようですね。このプレゼンまでの段階では、私が最も読みたくなったのはこの本でした。

 

4.早大 伊藤さん『噺のまくら』

P+D BOOKS 噺のまくら

P+D BOOKS 噺のまくら

 

  耳元で揺れているイヤリングと、素敵なワンピース姿が印象的な伊藤さん。落語好きな私はこのプレゼン、ちょっと楽しみでした。

「まくら」と呼ばれる、落語の冒頭の小噺を収録したエッセイ集。このテの本は、私は柳家小三治『ま・く・ら』しか知らなかったので、ほかにもまくらの本を出している噺家さんがいることを知れたのも良かったです。まくらについて、イチから創作する人もいるというのは初めて知りました。(私は落語の噺そのものへの興味はありますが、あまり落語家については詳しくないので……)

 また、プレゼンターの伊藤さんは、「大学の授業の中で落語に触れる機会があり、それで落語を好きになった」とのこと。私も落語に興味を持ったのは大学時代で、4回生の頃は落語研究会の寄席に行ったりもしていたので、その点も親近感を覚えました。というかこの書評バトルもそもそも「落語」っぽい存在かもしれない……!

 

5.東大 山川さん『蟹』

P+D BOOKS 幼児狩り・蟹

P+D BOOKS 幼児狩り・蟹

 

  なんと、ご自身が大学院で研究している、物理の古典力学の話を始めた山川さん。東大の地震研究所というところにいらっしゃるそうです。

 どこで、河野多恵子「蟹」の話になるのかと思いきや、「自然は人間のように計算はしていない」という話から、小芝居混じりで本の内容に入っていきました。

 この本は、1963年の芥川賞受賞作で、海岸で蟹を探し求める子どもと過ごす主人公の心情を描いた作品とのこと。

 全体的に、上手なプレゼンでした。余談ですが山川さん、私が以前よく交流していた、文学研究をしている年下の友人と雰囲気が似ていたので、その点も印象に残りました。

 

 

 さて、プレゼンが終わり、投票の時間です。

  私はかなり迷った末、『噺のまくら』を紹介していた伊藤さんに入れました。

 

  プレゼンのあとは、若手新人作家の鳥海嶺さんによる書評プレゼンと、中学生作家・鈴木るりかさんのトークショー

 鳥海さんは、遠藤周作『決戦の時』の紹介をされていました。『深い河』など、遠藤氏のほかの本もそうだけど、読み終えたときに問いかけが残る」とおっしゃっていたのが印象的。

 

 中学生作家の鈴木るりかさんは、図書館の近くに住んでいたためもともと読書が大好きで、小4で小説を書き始めた模様。昭和文学も好きなようで、色川武大さんの私小説に感銘を受けた。頑張りすぎなくていいんだと思えた」ということを話していました。三浦哲雄「みのむし」なども好きな作品で、短編集が好きだということもおっしゃっていました。短編集なら、私も読んでみようかな。

 鈴木さんは、今回のプレゼンで出てきた本についても、「まだ読んだことのないものもあったので、読んでみたい」とおっしゃっていました。(きっと、大半は知ってる作品だったんだろうな……!)

「もう亡くなっている文豪の新作は出ないから、ひとつひとつを大切に読んでいきたい」という言葉も印象的でした。

 

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 会場には、鳥海さん、鈴木さんの著書や、今回の書評バトルで紹介された本が置いてありました。この場での販売はしていないようでした。

 

 さて、ここでお待ちかねの、「書評バトル」結果発表!

 結果は、

 特別賞 伊藤さん(『噺のまくら』)

 優勝 山川さん(「蟹」)

でした!

  割と納得の結果です。 

 

 このような書評バトルの観覧は初めてでしたが、なかなか面白かった!

 ただ、プレゼンの「5分」って、けっこう長いなぁと思ってしまいました。本が手元にあるわけでもなく、言葉だけでのプレゼンなので、集中力が途切れそうになったところもしばしば(眠いということではないし、プレゼンがつまらないというわけでもないのですが)。

 私はここ数年、「ええやん!朝活」などの、おすすめ本紹介型の読書会に時々参加していますが、そこでのプレゼン時間はだいたい3分。席に着いたまま、手元にある本を見せながらの紹介なので、プレゼンターとの距離も近く内容も入りやすいです。こうして登壇してのプレゼンとは、だいぶ違うなぁということを感じました。

 

 また今回、登壇者の学生さんたちのプレゼンの中でも、作家さんたちのトークの中でも「今だったら炎上しそうな」「ポリコレ棒が」などの言い回しが出てきたことにも、2010年代後半っぽさを感じたりも。

 この書評バトル、コンテンツとしてなかなか面白かったので、機会があったらまた観覧したいかも、と思いました。良い休日になりました。

 

 

  余談ですが。この書評バトルについての、小学館の公式ページはこちらです。

www.shogakukan.co.jp

 記事の内容すべてに打消し線が引かれて「このイベントは終了しました」と書いてあります。うーん……。

 登壇した学生の大学名や、人の名前や作品名にまで(自社の作家さんとはいえ)打消し線を入れるのはあまり好ましい表現ではないのでは。小学館は好きな出版社なだけに、そこが今回残念。

 記事内に大きく「このイベントは終了しました」と書いておくだけでも良かった気がします。もっとスマートにアップデートできなかったのかな……。

 

さよなら、田中さん

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埼玉県八潮市の「ヤシオスタン」に行ってきた

 自由が丘でカフェやショッピングを楽しんだり、上野で美術館に行ったりお酒を楽しんだり……。

 7月半ばの三連休は、あまり遠出はしなかった私。連休中に訪れたいちばん遠いところは、埼玉県八潮市の「ヤシオスタン」と呼ばれるパキスタン人が多いエリアです。

 八潮市出身の友人を含んだ5人で行ってきました!

 

 19時に八潮駅北口に集合したあと、バス乗り場へ。八潮市役所方面に向かうバスで5分ほどで「八潮市役所南」停留所に着きます。

 

  バスから降りたときにまず思ったのは「郊外の風情がある……!」ということ。

 生活道路に点在する、カローラやホンダなどの車の販売店。見慣れないロゴのドラッグストア。交通量も人通りもそう多くない道路。都心に比べて控えめな街灯。道路の色が目立つ、全体的にグレーがかった景色。住宅街。

 地方都市を思わせる風景が広がっていました。東京23区からほんのちょっと出ただけで、こんな風景が広がっているなんて!

 

 転勤族だった私は、はじめて訪れる土地に来ると、脳内で画像検索をして似た地域を探す癖があります。八潮市役所近くのこのエリアは、名古屋市の北のほうや滋賀近辺のエリアとちょっと近いかも? と思ったり。

 

  バスの停留所からは、徒歩約2分で「カラチの空」に到着。

www.yashio-karachinosora.com

※ちなみにあとで知りましたが、「カラチの空」では八潮駅までの送迎を行っている日もあるようです。必要な方は、お店に問い合わせてみてください。

 

 インドカレービリヤニをいただきました。

 とっても美味! ビリヤニも実は今回はじめて食べたけど、とても食べやすくっていくらでも食べれちゃいそうでした……!

 どの料理も違和感なく美味しかったので、「日本人向けにアレンジしているのかな」と最初は思いました。

 ですが、こちらの記事を見る限り、そういうわけではないようです。

www.huffingtonpost.jp

 

 この量を5人で食べました。最後のほうはちょっと苦しいくらい、おなかいっぱいに。

 ちなみに、宗教上の都合でこの店にお酒は置いていませんが、持ち込みはOKとのこと。徒歩4分の場所にローソンがあるので、そこで友人たち買い出しに行ってもらいました。

 

「カラチの空」の店内、なぜか「防犯カメラ設置」「防犯装置作動中」などのステッカーがやたらと貼ってあったのが少し気になりました。

 店内では調理済みの料理の提供だけでなくパキスタン料理の食材の販売もしているため、その盗難を防ぐために貼ってあるのかな、と推測。

 

 5人で料理をつつきながら、いろんな話をしました。

「どうしてパキスタン人が多いの?」

 このエリアでは、自動車の輸出業を行っているパキスタン人が多いとのこと。

 八潮市は、中古車販売にとっては都合がいい立地のようです。

www.gnavi.co.jp

「自動車の様な大きいものを海外輸出するんだったら、船を使うんだろうし、海沿いのほうがいいんじゃないの? なんで、海のない埼玉県に住むんだろう」と思っていました。調べてみたら、車検場やオークション会場が八潮近辺にあるんですね、なるほど。

 

 中古車輸出に関する統計データも調べてみました。2017年、日本からの中古車輸出先は、パキスタンが第5位!

planetcars.jp

 ちなみに、「日本の自動車輸出相手国上位10カ国の推移」のデータも見つけましたが、こちらにはパキスタンは入っていない模様。あくまでもパキスタン人は「中古車」を輸出しているのですね。

http://www.customs.go.jp/toukei/suii/html/data/y8_1.pdf

財務省貿易統計より)

 

 2014年の記事ですが、こんなものも見つけました。1970年代にパキスタン人の研修生が日本車を本国に送ったことが、パキスタン人の中古自動車ビジネスのきっかけだったようですね。

wedge.ismedia.jp

 今回このブログ記事を書くにあたり、中古車輸出ビジネスについても検索しましたが、個人のサイドビジネスとして自動車輸出を行っている人のブログがいくつか引っかかったことも印象的でした。そうか、そういう人もいるのか。

 

八潮市って、ほかにどんなものがあるの?」

 友人が尋ねたら、アレフの施設があるよ」という返答が……!

 この日はオウム真理教死刑執行から間もない時期だったので、そんな話も少ししました。

「私の誕生日は3月2日、麻原彰晃と同じで、一昨年に誕生日会を開催した某シェアハウスは、オウム真理教病院跡地だった」という話もしました。

 

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おまけ:「公園に寄って帰ろう」

 今回一緒に食事をしたメンバーに、昆虫食が好きな人がいました。

「カラチの空」のそばに公園がある情報を調べてきていた彼は、セミを捕るための袋まで用意していました。

 食後、なぜかみんなで、八潮中央公園でセミ捕りをすることに。

※以下、セミの写真が苦手な方は閲覧注意。

 

 

 

 

 

 セミを捕まえていたら、その様子を見ていた知らないおじさんも「ほら、ここにいるよ」と手伝ってくれました。

 セミ、意外とかわいいですね。脱皮したばかりの白いセミはどこか神秘的。

 

 そんな、郊外の地を楽しんだ半日になりました。

 

 帰宅後しばらくしてFacebookを開いてみたら、友人のシェアハウスの住人による

「お腹を空かせて家に帰ったら、セミの素揚げがあったのでいただいた」

という投稿が……!

 捕ったセミは、さっそく調理されたようでした。

 

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