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地味な仮装のハロウィンのススメ

 今年のハロウィンはあまり盛り上がらなかった、という声がありましたが確かにそんな印象があります。台風や雨の影響かしら。

 そんな先月末の日曜日。行ってきました。ネットでも話題になった、デイリーポータルZ主催の「地味な仮装限定ハロウィン2017」!

 

 この「地味ハロウィン」は、普通のハロウィンでよくあるようなゾンビや魔女などの仮装を楽しむのではなく、「ファミマの店員」「結婚式の二次会帰りの人」「美容院の客」などの「地味な仮装」をして集まって楽しむイベント!

 以前、「面識ない人限定誕生日会」を開いて話題になったイベンター・堀元見くんのツイートがきっかけでこのハロウィンを知りました。

 

 今回で4回目くらいの開催のようです。去年は、こんな感じだった模様。

 

 今年も、地味な仮装をした人たちがたくさん集まりました。

(私はあまりいい写真が撮れなかったので、ほかの方々のツイートから引用します)

 

 

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 イベント会場の様子は、堀元くんのブログが詳しいのでそちらに譲ります。

ken-horimoto.com

 

 私は、このハロウィンを通じて考えたコトをつらつらと書きたいと思います!

「仮装」というより「コスチュームプレイ」

 誰かも言っていましたが、仮装というよりも、すごく王道な「コスチュームプレイ」っぽさを感じました。その姿で振る舞い、演じることをみんな楽しんでいるというか。

 ステージに上がり、それぞれ「何の仮装なのか」を披露する場もあったのですが、そこで小芝居をする人もいて、演劇やお笑いの舞台を見ているような気分になりました。

 どこか「落語」っぽさも感じました。「普段の日常に出てくる人」に焦点を当てているひとが多いところとか、振る舞いがどこか滑稽なところとか、小道具が簡素なひとが多いところとか……。あと、新作落語の「動物園」のことを思い出しました。

ワークショップにも使えそう

 こういう、手持ちの私服や私物で普段とは別人として振舞ってみるような企画って、対人関係、コミュニケーションに関するワークショップにありそうだなと思いました。

 

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演出、人間観察、プロファイリングの参考になりそう

 どういう小物やこだわりが「そのキャラクターらしさ」の演出に繋がるのか、その属性を属性たらしめている要素は何なのか。そんなことについても考えさせられました。
 たとえば、「SNSで知り合った男に初めて会いに来た女」の人は、花柄のお洋服、濃いめのピンクのカーディガン、ハートのベルトを使っていたりして、女性らしさを過剰演出しようとしている、ちょっとイタさのある姿がうまく表れていたと思います。
 ちなみに、「キレイめホームレス」を演じた堀元くんは、足元の汚れにこだわりを出していた模様。「サボりがちな大学3年生」を演じていた人は、「この帽子が、身なりにこだわりを持つ余裕がある21歳っぽさを感じる」と言われていたりもしました。自分でこだわったところと、人から指摘された面白いポイントの違いも楽しめるかもしれませんね。 

 ※ところで最近、SNSで知り合った男性に会いに行った女性たちが巻き込まれた座間の事件が話題になっていますが、この地味ハロウィンはその事件発覚よりも前に開催されたものであり、それを意識したものではないということをここにお断りしておきます。

ネットとリアルでウケるものが違う

 会場のステージ発表での盛り上がりと、TwitterのRT・いいね数は必ずしも比例しないことがわかったのも興味深かったです。

 たとえば、「東証で上場した人」の仮装は、大きな実物があったこともあり、会場での盛り上がりのほうがネットより大きかったような気がします。

 逆に「ジェットタオル弱いトイレから戻ってきた人」は、そのあまりの地味さがTwitterでは意外とウケていた印象がありました。

 

 

 

下手に色気を出しているものは逆に萎える

 #地味ハロウィン このタグの盛り上がりは会場にいないひとにまで広がり、エア参加と称して「地味な仮装」の写真を上げているひともたくさんいました。

 しかし、コンセプトをよく理解していないであろう(あるいはわかった上で敢えて無視しているような)、地味に見せる気はなさそうな、キメ顔、自撮り、加工のコンボの若い女性の写真もちらほら……。

 可愛い女の子の自撮り写真も別に嫌いではないですが、そういうものがこの「地味ハロウィン」タグの中に出てくるとすごく萎えるんですよね。

 とぼけた表情や、変な色気のない、あの地味さが人間味溢れて面白いのに……!

 地味ハロウィンに関しては、当人のキメ顔自撮り写真よりも、会場で撮影された、加工などされていない自然体のものが面白いなと再確認しました。

”誰でもできる仮装”は少ない

 今回地味ハロウィンに参加して気づいたのは、「誰でもできそう」な仮装って、意外と多くないんですよね。

 ゾンビや魔女、アニメキャラの仮装だったら、どぎついメイクや服装、小道具である程度誰でもそれっぽくなれますが、地味ハロウィンで演じられるものはそういったごまかしはきかないものが多いため、一般的な仮装以上に、なれるものは限られているなと思いました。

 もちろん、小道具や衣装でなれるようなものもありますが、「その年齢・体型・性別・雰囲気だからこそぴったりハマっているもの」「その分野・職業に携わっていた経験があるからこそしっくりくるもの」があると、見ていて楽しいです。

 

その人の個性を感じる

 地味ハロウィンは普段着っぽい格好の人も多く、その人の「ありのまま」に近い姿が見えるのが楽しいです。

 自身の個性をうまく引き出しているな、と思えるものも多いんですよね。いわゆるナルシストとは違いますが、「そのままの自分の個性をきちんと気に入っている」という感じのひとが多く、とてもポジティブな雰囲気を感じます。

 みんながそれぞれ、自身のことをちょっと引いた目で見て、それをメタ的に面白がっている……というシチュエーションは、フィクションの世界に入ったみたいなシュールさもあって面白いです。

(余談ですが、これってやっぱり、落語の面白さとも通じるところがある気がします。落語は演劇と違い、冒頭に「まくら」と呼ばれる小噺があるので、そこで演者のプライベートが垣間見れるところとか)

 

コミュニケーションの取り方が新しい

 地味ハロウィンのユニークな点のひとつに、「見た目がそのまま呼び名になる」というところがあると思います。

 会場では、名札には名前ではなく「何の格好をしてきたのか」を書きます。なので交流する際も「あ、”教室移動中の女子高生”の方ですよね。さっきステージで見ました!」とか「友達も来てるんです。”JINS店員”と、”キレイめホームレス”が友達です」なんて会話になったりして。

 以前も参加したひとたちの中には、「去年、○○の格好していたひとですよね?」と交流していたひともいたようです。常連さんも多い模様。

 

 

全国どこでも企画しやすそう

  この「地味ハロウィン」は、東京の企業が主催しているため、東京での開催でしたが、似たようなものは全国どこでも・誰でも開催ができそうな気がします。

 どこかのバーを貸し切っても良さそうですし、イベントスペースや広めのコワーキングスペース、シェアハウス、公民館、アーケードのイベントステージや広場、学校の体育館や講堂、オフィスビルの一室や個人宅でも可能かも……?

 もし、ほかの地域でもこのようなイベントがあるのなら、機会があればぜひ行ってみたいところです。

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「祭り」についても考えさせられる

 本来のハロウィンは、収穫祭だったり、生者と死者が交錯する日だったりするそうですね(だから、悪霊や魔物に連れ去られないためにあらかじめ仲間の格好をしておくことが仮装をする由来だとか)。

 よくある「お祭り」のような、華やかで賑やかな、わりと“中心的”な祭りではなく、ブラックでダークな“周縁的”な祭りということで、中心的なコミュニティからは外れがちな私は、昔から好きなイベントではありました。

 

 祭りといえば、日本の民俗学には「ハレとケ」(儀礼や祭りと、日常との対比)の概念がありますが、この地味ハロウィンは、「ハレ」の場に「ケ」を持ち込む(あるいは、「ケ」を「ハレ」に接続させる)取り組みとして、興味深い現象だなと思いました。

 ハロウィンって、クリスマスやお正月などの「ハレ」のイベントと違い、「ケ」の文化との融合がしやすいのかも知れませんね。

 地味ハロウィンは、そんな、祭りや祝祭の概念についても考えさせられたイベントでした。

 私の感想は以上になります。まぁ、こんな小難しいことは考えずに、その場の雰囲気を楽しむのが楽しみ方としては正しい気がしますが(笑)。

 私も、来年はどんな仮装をしようか、一年後に備えて今から考えています。

 

 

 ……あ、ちなみに私は今回どんな仮装をしたかって?

 ポケモンGOの格好をしました。しかし地味ハロウィンにしてはちょっと派手だったのと、あまり長時間滞在できなかったので、写真は撮ったり撮られたりはしていません。ひたすら観客サイドとして楽しみました。

 とても面白いイベントでしたので、また来年、地味な仮装でお会いしましょう。